ヒューゴ・バシェーガ、BBCニュース、キーウ
ウクライナでの戦闘は現在、ウクライナとロシアのどちらも大きく前進できずにいる膠着(こうちゃく)状態にあると、ウクライナ国防省のキリロ・ブダノフ情報総局長はBBCの取材で話した。この間、ウクライナ政府は西側各国からの先端兵器の提供を待っているところだという。
「にっちもさっちもいかない状態だ。まるで動かない」と、ブダノフ少将は話した。
ウクライナ軍が11月に南部の州都へルソンを奪還して以降、最も激しい戦闘は東部ドネツク州のバフムート周辺で行われてきた。それ以外の場所では、ロシア軍はもっぱら防戦態勢をとっている様子だ。その一方、全長1000キロにわたる前線においてウクライナ軍の地上部隊の動きは、冬の寒さの影響でペースを落としている。
ブダノフ局長は、かなりの被害を受けたロシア軍は「今では完全に行き止まり状態」にあると指摘。ロシア政府は今後さらに徴集兵の動員を発表すると決めたようだと話した。しかしそれでもウクライナ軍は今も、複数の場所で進軍するための物資が不足していると、局長は付け足した。
「全方位で徹底的に相手を倒すことができない。それは向こうも同じだ」とブダノフ氏は言い、「新しい兵器の供給に大いに期待している。これまでより進んだ先端兵器の到着も期待している」と強調した。
しかしブダノフ局長は、ベラルーシでのロシア軍の活動は陽動作戦に過ぎないと一蹴した。数千の兵をベラルーシへ向かわせているのも、ウクライナが南や東に配備している部隊を、北に移動させようとしてのことだいう。
最近では、ロシア兵を大勢乗せた列車がベラルーシ-ウクライナ国境の近くまで来て停車し、数時間後に全員を乗せたまま、戻っていったのだという。
「しかも(ロシアは)それを白昼堂々やってみせた。見たくなくても誰もが目にするように」と、ブダノフ氏は述べ、ベラルーシにいる部隊が実際の切迫した脅威だとは思っていないと話した。
「ベラルーシ方面からキーウや国の北部を侵略しようと準備している様子は、現時点では見えない」
ロシア軍はこれまでベラルーシ領を攻撃の起点にしてきた。しかし、ベラルーシ社会はこれ以上の戦争への関与を支持しないだろうと、ブダノフ氏は考えている。加えて、4万8000人強のベラルーシ軍の戦闘能力についても、専門家は疑問視している。
「だからこそルカシェンコ大統領は、自国にとっての大惨事を避けるため、あらゆる手を尽くしている」のだと、ブダノフ氏は述べた。
ヘルソンを奪還して以来、ウクライナ軍は東部バフムートでロシア軍と熾烈(しれつ)な戦いを続けてきた。塹壕(ざんごう)を足掛かりにするその戦い方は、まるで第1次世界大戦のようだとも言われている。
ロシアにとっては、バフムートを奪えばウクライナの補給線を寸断することができる。加えて、クラマトルスクやストヴィアンスクなどウクライナが抑える東部の重要地点へ向かって、進軍ルートが開ける。
ロシアのバフムート攻略作戦を率いているのは、ロシアの雇い兵会社「ワグネル」の戦闘員だとブダノフ氏は述べた。「ワグネル」の創設者エフゲニー・プリゴジン氏は、ロシア政府内の権力争いで有利になるため、バフムートを自らの政治的な獲物にしたいと考えているのだと言われている。
戦場以外では、ロシア軍は10月半ば以来、徹底的な空からの攻撃を続けている。ミサイルやドローンを駆使してウクライナの重要インフラをたたいてきた。そのためウクライナでは数百万人が電気や暖房や水道が使えない状態にある。
ブダノフ氏は、ロシアのこうした攻撃は今後も続くだろうが、これまでの頻度でいつまでも維持することはできないだろうと指摘する。ロシアが持つミサイルの備蓄は減少しつつあるし、ロシアは自前でミサイルを製造して補うことができないからだと。
ロシアが使う攻撃用ドローンのほとんどはイランから提供されたものだが、イランはこれまでミサイル供給については断り続けてきたのだと、ブダノフ氏は指摘する。核開発を理由にただでさえ厳しい西側の制裁を受け続けるイラン政府は、ロシアにミサイルを提供しようものなら、西側の追加制裁を受けるのは必至だと承知しているからだ。
戦争は今は膠着しているかもしれない。しかし、究極的には、占領下にあるすべてのウクライナ領をいずれ絶対に奪還するのは確実だと、ブダノフ局長は強調する。回復するウクライナ領には、2014年にロシアが併合したクリミア半島も含まれるという。
ブダノフ局長は、ウクライナの国境はいずれ1991年の状態に戻ると予測する。つまり、ソヴィエト連邦の崩壊に伴い独立を宣言した時点の国土を、ウクライナは回復することになると。
(追加取材: ハナ・ツィバ、ロビー・ライト)
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