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Monday, June 6, 2022

米ノースカロライナ州、創造の文化が育んだ工芸を巡る旅 - ナショナル ジオグラフィック日本版

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米ノースカロライナ州に新設されたブルーリッジ・クラフト・トレイルズの見どころのひとつ、アシュビル北東の山中で1923年に開校したペンランド・スクール・オブ・クラフト。ギャラリーやアトリエ、学校を巡れば、アパラチア地域で育まれた工芸の伝統を垣間見ることができる。(PHOTOGRAPH BY HEATHER AHRENS, ALAMY STOCK PHOTO)

米ノースカロライナ州に新設されたブルーリッジ・クラフト・トレイルズの見どころのひとつ、アシュビル北東の山中で1923年に開校したペンランド・スクール・オブ・クラフト。ギャラリーやアトリエ、学校を巡れば、アパラチア地域で育まれた工芸の伝統を垣間見ることができる。(PHOTOGRAPH BY HEATHER AHRENS, ALAMY STOCK PHOTO)

 米ノースカロライナ州にあるアトリエで、メアリー・トンプソン氏はポケットナイフを器用に使い、近くに流れるオコナルフテー川で刈ったササの茎を細長く割いていく。その後、採集したクルミの樹皮とサンギナリアで染色し、ジグザグや円のモチーフが描かれたチェロキー族(米国先住民の1グループ)の伝統的なバスケットを編む。トンプソン氏は傷だらけの手を見せながら、「これが仕事です」と語る。トンプソン氏は東部チェロキー族の一員で、バスケット職人としては第2世代に当たる。(参考記事:「幻のセコイア州の歴史、米国先住民の権利ふたたび」

 チェロキーの街にあるクアラ・アーツ・アンド・クラフト・ギャラリーでトンプソン氏の1000ドル(約1300円)のバスケットを見ても、それがどれほどの時間と労力、文化的な遺産を結集して作られたかを想像するのは難しい。しかし、職人のアトリエを訪問すれば、いろいろなことが見えてくる。さらに、伝統技術の保存や経済的持続可能性の促進にもつながる。

ギャラリー:米ノースカロライナ州、創造の文化が育んだ工芸を巡る旅 写真10点(写真クリックでギャラリーページへ)

<span style="font-size:15px;font-weight:bold;">チェロキー族のバスケット</span><br>チェロキー族のバスケット職人メアリー・トンプソン氏が何カ月もかけて制作した伝統的なマットや器。ノースカロライナ州チェロキーの町にあるトンプソン氏のギャラリーで撮影した。(PHOTOGRAPH COURTESY BLUE RIDGE NATIONAL HERITAGE AREA)

チェロキー族のバスケット
チェロキー族のバスケット職人メアリー・トンプソン氏が何カ月もかけて制作した伝統的なマットや器。ノースカロライナ州チェロキーの町にあるトンプソン氏のギャラリーで撮影した。(PHOTOGRAPH COURTESY BLUE RIDGE NATIONAL HERITAGE AREA)

 これこそがブルーリッジ・クラフト・トレイルズ(ブルーリッジ工芸街道)の核心だ。NPO(非営利団体)のブルーリッジ・ナショナル・ヘリテージ・エリアが開発したこのクラフト・トレイルズは、ノースカロライナ州西部に300以上あるアトリエ(トンプソン氏のアトリエを含む)と学校、ギャラリーで構成されている。中心地はアシュビルで、数十のギャラリーやリバー・アーツ・ディストリクトが旅行者とアーティストをつないでいる。

 クラフト・トレイルズの目的は、文化観光を振興し、ドライブ旅行する気にさせること。旅行者にとっては、ガラス職人や陶芸家、織物職人、木工職人の仕事をじかに見る機会となっている。それでは、クラフト・トレイルズを巡る旅に出よう。

なぜ創造の文化が根付いているのか

「(ノースカロライナ州などが含まれる)南アパラチアでものづくりが生まれた理由は、孤立した地域だからというわけではありません。でも、ものづくりが続いたのは、ここが孤立した地域だからです」。ブルーリッジ・クラフト・トレイルズのキュレーターを務めるアナ・ファリエロ氏はこう説明する。ファリエロ氏は工芸の歴史を研究しており、著書がいくつもある。

 この地域がなぜ工芸を巡る旅にふさわしいのか――。このことを理解するには、力強い創造の文化が存在する理由を知るのが早道だ。

ノースカロライナ州に新設されたブルーリッジ・クラフト・トレイルズは、州北西部の山地に点在するアトリエやギャラリー、工芸学校にスポットライトを当てている。(PHOTOGRAPH BY ROBERT HARDING PICTURE LIBRARY, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

ノースカロライナ州に新設されたブルーリッジ・クラフト・トレイルズは、州北西部の山地に点在するアトリエやギャラリー、工芸学校にスポットライトを当てている。(PHOTOGRAPH BY ROBERT HARDING PICTURE LIBRARY, NAT GEO IMAGE COLLECTION)

 布や家具、調理用具などを作るか、物々交換するしかなかった時代、工芸は必要に迫られて生まれたのかもしれない。しかし、米国で工業化が進むと、こうした家内制手工業は廃れていった。南アパラチアのように、工業製品を手に入れにくい辺境を除いては。(参考記事:「異形の宗教集団のライフスタイルが米国で脚光を浴びる理由」

 20世紀になると、この地域最大の都市アシュビルは全米から注目を集め、名だたる富裕層を引き付けた。そうした富裕層の女性たちの一部が、この地域の主婦たちに豊かさをもたらしたいと考えた。

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