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Thursday, January 13, 2022

デロイト トーマツ発イントレプレナーに聞く、「ウェルビーイング」を起点にした社会課題解決とは - Business Insider Japan

kukuset.blogspot.com

集合写真

「人とひとの相互の共感と信頼に基づく『Well-being(ウェルビーイング)社会』」の構築を自らのAspirational Goal(目指すべき社会の姿)に掲げるデロイト トーマツ グループ(以下、デロイト トーマツ)。

その実現に向けた取り組みの起点となるのが、メンバー一人ひとりのウェルビーイングの追求だ。実際にデロイト トーマツでは、どのように自らの成長ややりがいを追求して、それを社会全体のウェルビーイング(より良い状態)に結びつけているのか。グループ内の新規事業公募制度「D-nnovator」2021年度ファイナリストの2人に、取り組みを通じた気づきや仕事の意義を聞いてみた。

「自分の手で事業をつくってみたい」

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伊藤正彦(いとう・まさひこ)氏/有限責任監査法人トーマツ リスクアドバイザリー事業本部 マネジャー。政府系シンクタンクに従事した後、英国大学院留学を経てトーマツ入社。国内外のFinTechやデジタル規制動向の調査を担当し、現在は金融機関のDX支援や新規事業開発に携わっている。

「ずっと自分でイノベーションを起こしてみたかった。今回は第一歩を踏み出す、良いきっかけになりました」(伊藤氏)

満面の笑みでそう語るのは、監査法人トーマツの伊藤正彦氏だ。伊藤氏は、デロイト トーマツの新規事業公募制度「D-nnovator」の2021年度最優秀賞受賞者。この制度は、シニアマネジャー以下なら組織や職種を問わず誰でも応募ができ、入賞すると同社のアセットを活かしながら事業化を進めることができるものだ。2回目にあたる2021年度もグループの垣根を超えて多数の応募があったが、最終的に最優秀賞1件、優秀賞2件が選ばれた。

伊藤氏が新規事業に関心を持ったのは、もともとそこから距離があるところで仕事をしていたことが大きい。

「大学卒業後、政府系のシンクタンクでマクロ経済分析を担当していました。やっているうちに、レポートを書いて外からビジネスを見ているだけでなく、実際の事業をもっと近くでサポートしたいという思いが湧いてきました。

そこで4年ほど前にデロイト トーマツにキャリアチェンジ。クライアントのみなさんと伴走して課題を解決できる仕事を通じて、刺激的で充実した毎日を送っています。ただ、お客様に事業の話をするのに、自分は実際に事業を通じたイノベーションを起こした経験がない。それが唯一ひっかかっていて……」(伊藤氏)

自ら事業をつくることに挑戦したい──。そのような思いを抱き始めていたときに知ったのが「D-nnovator」だった。

価格ソリューションで「値上げ下手」に立ち向かう

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Shutterstock / PR Image Factory

問題は、どのようなプランで応募するか。伊藤氏はマクロ経済分析の経験から「日本のデフレマインドを解消したい」という問題意識を長年抱いており、これをどうミクロな事業に落とし込み、ビジネスとして成立させるかへの試行錯誤が始まった。

「まだ詳細は公開できないのですが、データの分析によって商品の最適な価格を算出するソリューションを企画しています。

日本では素晴らしいモノやサービスが提供されているにも関わらず、日本人の『値上げ下手』のせいで、その価値に見合う価格がつけられていないことが多々あります。

価格競争力がある業者もない業者も、それを購入する消費者も、そして地域や国全体としても、みんなが納得し、みんなにメリットのある形で価格を決められる社会的なメカニズムが必要だと考えたのです。

もちろん簡単なことではありませんが、『経済社会の変革のカタリスト』であるデロイト トーマツに相応しいチャレンジだと思いました」(伊藤氏)

伊藤氏2

伊藤氏は、これまで新規事業提案の経験はゼロ。応募時も「価格の適正化によって、限りある資源が最適に分配される世界をつくりたい」というアイデアがあるだけで、プランは粗いものだった。

しかし「D-nnovator」では応募者に必ずグループ内の新規事業のプロフェッショナルであるメンターがつく。伊藤氏のアイデアも、メンタリングを受ける中で磨かれていった。

「AIなどを活用した決済・価格関連の新規事業は金融イノベーションの中でもホットな分野で、実は私が提案したソリューション自体は非常にありふれたものです。しかし、それを実際に社会実装し、人々のマインドを変えていくところに大きな壁があると思います。

今回は、デロイト トーマツが注力するスマートシティ関連の施策や外部協力者の事業とも連携し、その壁を突破していきたいと考えています。

最初はアイデアだけで乗り込んだものの、メンタリングを通してビジネスモデルや外部協力者との座組みを磨き、社内の専門家やステークホルダーを巻き込んだ唯一無二の事業提案になりました」(伊藤氏)

ママ会計士が感じた、保育園の課題とは?

宍戸氏

宍戸純子(ししど・じゅんこ)氏/有限責任監査法人トーマツ 監査品質統括部 マネジャー。上場会社などの監査業務やIPO支援業務を経て、現在はテクニカルセンターでIFRS(国際財務報告基準)テクニカル業務に従事。

イノベーションへの思いが出発点だった伊藤氏に対して、常日頃から実感していた社会課題から「D-nnovator」に応募したのが監査法人トーマツの宍戸純子氏だ。

宍戸氏は二児の母。一人目の育休中に「保育士の仕事や保育原理を知りたい」と保育士資格を取得。復職して保育園を利用し始めると、保育の現場がさまざまな課題を抱えていることがわかった。

「毎日9時間近く預けているのだから、その間に子どもに多様な経験をさせてあげたいというのが保護者の率直な思いです。しかし、保育園は中小規模の法人による運営が多く、財政面に余裕がありません。それが保育士の低賃金にもつながっているのではないか、 保育園がもっと収益を上げられるようになれば、さまざまな問題が解決できるのではないかと思っていました」(宍戸氏)

そのような問題意識を抱きつつも「これまで新規事業提案の経験がなく、どのようにアプローチすべきかわからなかった」と宍戸氏。ある日「D-nnovator」の募集を見かけ、最初は軽い気持ちで保育園経営をサポートする事業を提案した。

「普段は監査の品質管理という、ある意味『守り』の仕事をしている私が、畑違いの新規事業提案をしていいのかと不安はありました。 でも、それを知った上司は快く応援してくれましたし、同期は企業内保育園を立ち上げたグループ内の専門家などを積極的に紹介してくれました。

提案のために動けるのは業務時間外で、時間との戦いにもなりながら提案を作り上げました。ただそれを負担に感じることはなく、むしろ社内人脈の豊富さや挑戦を後押ししてくれる環境であることを改めて実感するなど、新たな発見が多くありました」(宍戸氏)

挑戦は進行形。今が一番「楽しい」

対談風景

最優秀賞の伊藤氏の事業プランは、事業化に向けて実証実験を計画中だ。今回は最終選考で惜しくも漏れた宍戸氏も「保育に問題意識を持っている方々とつながりができた。別の形で進めたい」と諦めていない。

社会課題解決に向けた挑戦は2人とも現在進行形だが、今回の応募は自身のウェルビーイングにどのような影響を与えたのだろうか。

「これまで自分の中でぼんやりしていた課題感が、メンターのアドバイスなどによってクリアになっていく過程にワクワクしました。まだない価値を描くことって、こんなにも楽しかったのかと。

また提案過程を通じて、周囲への感謝の気持ちもより深く持つようになりました。デロイト トーマツはチャレンジに対してとても寛容で、自分が動けば必ず周囲が反応してくれる会社。働き心地を良くするのも悪くするのも自分次第だと実感しました。普段の仕事への取り組み方も、いい意味で変わりそうです」(宍戸氏)

「今回のアイデアが、日本のデフレマインドを変える小さなきっかけになったら嬉しいです。将来、『自分の事業が2020年代の日本のGDP成長率をほんの少し押し上げたんだ』と胸を張って言えたら素敵だと思いますし、『自らのイノベーションで社会と対話する』という自分の中に欠けていたピースがはまったことで、仕事の充実感は社会人になってから今が一番高いです。

現在は事業化に向けて走り出している最中。さまざまなプレイヤーを巻き込んで進める必要があるプロジェクトですが、自社のネットワークやソリューションの豊富さをフル活用して挑んでいきたいですね。プレッシャーも大きいですが、社会経済にインパクトを与えるような働きかけをしていきたいです」(伊藤氏)

社員の働き方や成長を支援し、個のウェルビーイングを大切にしているデロイト トーマツ。自らのやりがいと社会的意義の結合点を見つけながら、プロフェッショナルたちの挑戦は続いていく。


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