小学校教員からお笑い芸人・哲夫氏への「キャリア人生相談」
桜井雅人氏(以下、桜井):続いてお二人目の相談者は、30代女性のWさんになります。Wさんこんにちは。
質問者2:こんにちは。
桜井:よろしくお願いします。この度はご応募いただきましてありがとうございます。簡単に自己紹介お願いできますでしょうか。
質問者2:まず今日はたくさんの応募があった中で選んでいただき、本当にありがとうございます。うれしく思います。
私は今名古屋市の公立小学校で教員をしています。お笑いもすごく好きで、前のM-1で「鳥人」のネタを見て笑い飯さんを好きになりました。そんな哲夫さんと今回お話しできるのは本当に夢のようで、ドキドキしてます。よろしくお願いします。
笑い飯・哲夫氏(以下、哲夫):お願いします。
桜井:お願いします。さっそくですがご相談内容をお話しいただけますでしょうか。
質問者2:大きく2つありまして。1つめが、今、私教員をやってるんですけれども、今の公立という教員を続けていくべきか、他に自分のやりたい道に進むべきか迷っています。
哲夫さんは今でこそしっかりと安定した収入を得られていると思うんですけど、お笑い芸人という厳しい道を、どのように続けてこられたのかなということをお聞きしたいです。
2つめが、私は教育に関わっていて、哲夫さんも寺子屋こややという教育に携わっていると思うんですけれども。今激動の社会の中で、今後子どもたちにどのように育ってほしいのかなという2点を質問したいです。
説明書のないレゴブロックで養われた「想像力」
哲夫:ちょっとさっきの方のご質問でも言っちゃったんですけど、やっぱり「知恵と慈悲」がすごく大事になってきて。それを養うためには「想像力」なんですよ。
だから子どもたちには想像力を養うように育ってほしい。想像力の豊かな人材となって育っていってほしいなといつも思っている。想像力があるからこそ、「お陰さま」という人に感謝する気持ちが生まれて、慈悲が生まれていく。
想像力があるから、計算問題とか図形問題(がわかる)。それから理科や英語にしても、全体的にその「知恵」を養うには、やはり想像することがすごく大事だと思うんです。
なんで文科省の学習指導要領で「子どもたちには義務教育でこれをこれを」とやるかと言ったら、豊かな人材を作るためなんです。人材というものが豊かな国を育んで、それを大きい目で見ると、豊かな世界になっていく。「豊かな世界」を子孫たちに継承して行くのが大事なんです。
僕、想像力にはすごく自信があるんですよ。なんでかと言ったら、ちっちゃい時にうちのばあちゃんが、説明書のないレゴブロックを親戚からもらってきて、僕に与えてくれたんです。
説明書がないから何を作るのかようわからんけど、逆に言えばなんでも作れる。それでパパパって遊んでいたんです。
M-1に優勝した時に、お花とかがいっぱい家に届いたんです。そうしたらばあちゃんが「あんたらお返ししなさい」と言って。なのでお花を送ってくれた人を集めて、ちょっとした料亭でごちそうを振る舞ったんです。
その時にばあちゃんに言われたんです。「あんた、あれやんな。私がブロックさせてたから、だいぶ想像力ようなったやろ」って。「あんなよう汗かいて、暑い部屋でずっとなんやかんや作ってたもんな。電車やなんや言うて、作ってたもんな」と。
でもほんまにそうやった。それによって想像力が強くなった。だから想像できるぶん、スケベになったんですけど……。
桜井:(笑)。
子どもたちにも「想像力」を養ってもらいたい
哲夫:いろんな見えないところの「お陰さま」を想像できるようになったかなと思います。そういう子ども……。自分みたいになれっていうのはおこがましい、偉そうな話ですけど。想像力豊かにしつけてもらって、自分もよかったなって思えるんです。
ネタも思いつきとかも、めちゃめちゃ自信があります。
この前も「1回1000円するUFOキャッチャーがあって、ガラスのところに黒いカーテンがしてあって。何かつかんだと思ったら、ゴロゴロゴロって(雷の)音が鳴って、バーンって取り出し口のところに出てきたら、それが巨大なスイカやった......っていうやつをやりたいから、ちょっと臨場感出してくれへん?」というフリから始まるネタを考えたんですけど。
桜井:(笑)。
哲夫:頭異常やなって、自分でも思いますよね。なんで俺はこんなネタやろうとすんねやろうって思うんですけど。そういうことを思いつけるのは、想像力を養っていただいたおかげだなと。その恩返しで、子どもたちにも引き継いでいってもらいたい、譲っていきたいなと思っています。
以前エロ小説を出版したんですけれども、なぜかと言ったらちょうどスマホが日本でもはびこりだした時やったんです。中学生にもスマホを持たせる親御さんがたくさんいた。
これは危ないなぁと思ったんです。思春期という一番想像力を鍛えなあかん時期やのに、画像に頼ってしまうよなと思ったから。だから想像力を養う時期に、エロ小説を出すことによって、想像力のヒントとしてみなさん読んでねと思って出版した。ただ、男子中学生はエロ小説を買わないんですよ。しまったと思いました。
福沢諭吉が説いた「学問」と「国の豊かさ」
哲夫:想像力を養って、豊かな人材を育てたいなと思ってます。福沢諭吉先生は、『学問のすゝめ』によって、政府が学校を整えていきましょうと言いました。本にも書いてあるんですけど、「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らず」というのがすごい流行って。人間平等だからねという考えから始まったような言葉なんですけれども。
でも実はあれは「『人を造らず』と言えり」までが一文なんですよ。そして「言われているが、しかし」と続くんです。
(※天は人の上に人を造らず人の下に人を造らずといえへり。されども、今廣く此人間世界を見渡すに、かしこき人ありおろかなる人あり貧しきもあり冨めるもあり貴人もあり下人もありて其有様雲と坭との相違あるに似たるは何ぞや。)
人の上に人を造らない、人の下に人を造らないと言われているが、しかし。天上を見てください。贅沢な暮らしをしている人は、ものすごい贅沢です。豊かなお金がある。よう見てください。現状貧乏な人はものすごく貧乏な飯食うてますやん。そういう人がほとんどですやん。……ということを書き出してるんです。
だから貧乏人にこそ学問の機会を与えて、貧乏な人たちに裕福になってもらう。それが国の豊かさだということで、学問を説いたわけなんですよ。
そこから政府が『学問のすゝめ』を参考にして、学校を整えていったんですね。それが今までこうやって続いてくれている。
今まで続いてきた豊かな日本の象徴といったらお金です。お金の中でも金額が一番大きいのは何かといったら、1万円札。その1万円の象徴が福沢諭吉先生なのは間違いないですよ。豊かな国のきっかけだから。
考えるのは「今何ができるか」
哲夫:それが今度は渋沢栄一さんになる。結局は豊かな日本を作ってはる方々なんですけれどもね。我々の世代で断念せざるを得なくなることなんてなく、やっぱり未来永劫、それを継承したい。未来に継承していく一分子でありたいなと思うんですよ。
僕が中学校ぐらいの時に、大橋巨泉の『巨泉のこんなモノいらない!?』っていうテレビがありました。それを見ていた時、「『こんなモノいらない!?』、「今回の特集は温暖化」ってやっていたんです。
それまで温暖化なんて聞いたことなかったんですよ。僕は初めて地球温暖化を目の当たりにした。ものすごく怖い映像をいっぱい見せられた。干ばつが起きて、巨大台風が来て、温暖化はこんなに悪影響を及ぼしますよというのを見た。
その時から、二酸化炭素や温室効果ガスについてめっちゃ調べました。ほんま今も暑い暑いとかいうじゃないですか。今後生まれてくる子どもたちがそんな思いをせなあかんねやったら、いやいや、俺らでなんとかせなあかんねと思うわけなんですよ。
「今何ができるか」というのはめっちゃ考えます。とりあえずクーラーとかは、めっちゃ寒うしてたら、いつもこっそり28度に上げてるんです。そのわりに、RX-7っていうものすごく燃費悪い車に乗ってるんですけれども。
桜井:(笑)。
哲夫:一応極力乗らないようにして、地球に貢献しています。
仕事も趣味も1つに絞らなくていい
哲夫:質問は仕事を変えるかどうかということでしたけれども、僕は6足のわらじを履いてるんです。1つに絞る必要なんてないと思います。何かをしながら何かをするっていう、学校の先生やったら公務員やから副業が禁止かもしれないけども、趣味でも継続してたらいいと思う。
いろんなものを継続してたら、これが自分に一番おうてるなとわかってくるところがあるし。1つだけにかせなあかんなんてことはないです。全部つながってくるんですよね。
つながってきたら、また今まで見えなかったところが見えてきたりする。時間の使い方のプロになってもらえたら、ほんまいろんなことに手を出せると思います。
桜井:Wさん、いかがでしょうか。
質問者2:はい。ありがとうございました。
哲夫:的を射てます? 僕がひけらかしたいだけやったんですけど。大丈夫ですか。
質問者2:いえいえ(笑)。哲夫さんの話を聞いてて、やはり知識人でいろんなことを知ってらっしゃるけども、その反面、以前『相席食堂』の日間賀島のロケで林に10回くらい突っ込んでいた哲夫さんを思い出して、「誰も考えつかないようなことをやる」のが哲夫さんの想像力なのかなって思いました。
哲夫:引っ張るの大好きなんですよ。「もう何回それすんねん」っていうのが子どもの頃から大好きでした。
質問者2:めちゃめちゃおもしろかったです。これから自分たちで何かを作り出していく想像力がすごく大事だと思うので。私も子どもたちのそういうところを大事にしていきたいなというふうに思います。
学校の授業をサポートする「寺子屋」に込めた思い
哲夫:ありがとうございます。先生は小学校ですか。
質問者2:公立の小学校です。
哲夫:いっぱいいろんな科目を教えなあかんから大変ですよね。
質問者2:そうですね。普通の小学校の先生は、いろいろ教えてますね。
哲夫:何が得意なんですか。
質問者2:そうですね。1番は体育が好きですね。
哲夫:そうですか。体育も教えなあかんしね。ほんま学校の先生は大変やと思うんです。いろんなせなあかん、成績もつけなあかん。だから地域教育でサポートできへんかなって僕は思っていて。そういう意味でも「寺子屋」というのは、地域で学校の授業をサポートしています。あくまで学校の授業をメインで考えてるんですよね。
そのサポートをするのがご近所さんであるべきやと思っている。しつけの役割分担ですよね。親が躾けるんだけど、親が忙しいから学校の先生がしつける。でも学校の先生も忙しい。だったら近所の人でしつければいい。その近所の人になりたいなと思う。そんな思いで始めた施設です。
質問者2:もっと本当に地域とつながっていけるといいなと思います。
桜井:Wさん、今日はご相談いただきましてありがとうございました。
質問者2:ありがとうございました。
哲夫:ありがとうございます。
神社や寺は「想像力が鍛えられる場所」
桜井:哲夫さん。2名からの直接相談いただきましたが、いかがでしたでしょうか。
哲夫:ごめんなさい。ひけらかしてばっかりで。ひけらかしいなんですよ。
桜井:「ひけらかしい」って初めて聞きました(笑)。でも想像力は非常に大事だなって思いました。
哲夫:今の僕も想像力でお給料をいただいているなという感じです。
桜井:さっきのネタに直結する部分だったり、生き方に直結する部分とか、いわゆる信仰心とかも、ある種目に見えるかたちじゃないものを信仰しているじゃないですか。それも想像力があってこそだと思いました。
哲夫:そうですよね。お寺に行って秘仏とか厨子、お厨子から出てきはらへん仏さん。あれもやっぱり「お厨子の中でどんな状態でいてはるのかな」というのが想像力です。
桜井:確かに。
哲夫:神社行かしてもうたら、我々は拝殿まで入れますけど、本殿には入れへん時もある。拝殿の手前までとかいう時もあります。そこは拝むための建物で、その奥に本殿というのがあって、そこに基本的に神さまがあるんです。神さまの中は見させてもらえないんですよ。
でも、あの中にどういう状態で神さんがいてはんねやろというのも想像力なんです。だから神社とかお寺は、想像力が鍛えられる場所やと思うんです。
桜井:まさかそれがおばあちゃんからのレゴブロックから、というのも初めて知りました。何がきっかけになるかわからないので、みなさんもちょっとしたきっかけを大切にしてみてください。
<続きは近日公開>
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