Pages

Saturday, August 27, 2022

[あすへの考]【リーグの将来構想】バスケで地方を元気に…Bリーグチェアマン 島田慎二氏 51 - 読売新聞オンライン

kukuset.blogspot.com

 コロナ禍でプロスポーツ界に逆風が吹く中、存在感を増しているのが、2016年にスタートしたBリーグ(公益社団法人ジャパン・プロフェッショナル・バスケットボールリーグ)だ。9月29日に開幕する7年目の新シーズンは、1部にあたるB1リーグが北海道から沖縄までの計24クラブ、下部のB2は14クラブで構成される。

 クラブの社長として千葉ジェッツをBリーグ有数の人気チームに育て上げた実績を持つ島田慎二チェアマンは、コロナ感染が広がりつつあった20年に就任。2期目を迎えて、リーグのさらなる発展を企図した26年からの「将来構想」を推進するなど、バスケットボールによる地方創生を目指している。

(編集委員 川島健司)

 2021~22年シーズンはコロナの影響で約10%、115試合が開催できませんでした。コロナへの対応として各クラブへ支援金を出したことが大きく、リーグとしても厳しい経営状況にあります。一方で、会場に足を運べない分、試合のライブ配信をスマホで見ていただいたりとか、SNSのフォロワー数を増やすとか、コロナに影響を受けないところの数字を伸ばすべく努力をしてきたので、そこは一定の成果を収めたのも事実です。

 チャンピオンシップでは、昨年完成した沖縄アリーナ(沖縄市)が、8000人以上とほぼ満員となりました。声出し応援こそありませんでしたが、ホームクラブの琉球ゴールデンキングスは地元で愛されているし、空気感は最高、我々が目指す世界観を体現してくれました。

 Bリーグはバスケットボールで日本を元気にしたい。ホームアンドアウェー方式で試合をするので、アウェーのチームを応援するお客様にたくさん来ていただければ、飲食、宿泊を含めて経済効果があります。都市の周辺に観光資源があれば、さらにお金を落としてもらうことが期待できます。

 社会貢献という意味では、会場に足を運んで応援するという文化が根付いてくると、クラブがその地域に住んでいる方々の誇り、シティープライドになる。今、リタイアされた高齢のご夫婦による観戦も増えていますが、会場までの往復も会場の中も相当歩くし、試合で興奮することは、若返りにも非常に良いというデータがある。健康寿命に貢献できれば、社会保障費の減額につながります。

 さらに、沖縄アリーナのような施設があれば、豪雨や大地震などの際に、避難場所として地元の方々をある程度守ることもできます。

 また、コロナ禍にあっても、東京や名古屋、大阪といった大都市圏に人口が集中している状況にあまり変化はありません。どうしたら若い人に地方へ戻ってもらえるか考えたときに、仕事に就けるとか様々な要素があるでしょうが、地元に応援すべきスポーツクラブがあるというのも、彼らには非常に大きな理由になるんですね。

 30年前にサッカーのJリーグができた頃、地域密着ということが盛んに言われました。当時は新鮮でしたが、クラブ経営に限らず、まずは地域に根付かなければ、事業としては成り立ちません。

 そうした努力をやりきったうえで、クラブが地元の人に愛され、会場に足を運ぶとか、チームが強くなるということで盛り上がっていくと、今度はその市や県だけでなくて、少し遠方の方でも「あそこに住んでみたいな」と思う理由の一つに、クラブがなり得る。若い人が一人暮らしする際にコンビニのそばを条件にしたり、サーフィンをやりたい人が神奈川の湘南で家を探したりするようにです。

 各クラブが人々を吸引する力を持って、そういう普遍的な存在にまでなってくれれば、という思いを込めて、Bリーグでは地域密着ではなく、「地域愛着」という言葉を使って、目標にしています。

     ◇

 バスケットボールは、少子化が進む日本社会に強みを持っていると思います。多くの人数がいないとできないスポーツよりも、コンパクトにできます。競技自体にもスピード感があり、点数も非常にたくさん入る。盛り上がって興奮する場面が多いということです。

 SNSやインターネットが全盛の現代では、短いビデオクリップでかっこよいシーンをどれだけ拡散していけるかが大事、というような状況がある。バスケットではそういう場面をたくさんお見せしやすい。私自身はサッカーをやっていたので、なかなか点が入らない競技にもそれなりの良さはあると思いますが、今の若い人たちには、辛抱強くそれを見ているのは大変じゃないかとも思う。

 それと、バスケットボールはアリーナでやるものです。私は昔から、コンサートや演劇を積極的に見に行くようにしていますが、どんなに素晴らしい役者や選手が出ていても、普通の市民体育館で、何もショーアップされていなくて、お客様も大して入っていない中でうまいプレーをしても、そんなにテンションは上がらない。お客様に盛り上がり所がはっきり伝わらないようではダメなんです。

 ファンの皆様が没入していくような、見やすくてテンションが上がる、非日常にいざなわれるような状況は、体育館では実現しえない。照明や音響、映像装置による演出が可能な質の高いアリーナでレベルの高いゲーム、エンターテインメントを提供し、それに勘所を分かっているファンが熱狂する。こうした要素がフルハウスでそろえば、それが我々の目指す、最高の空間という商品になります。

 Bリーグは、26年に始まる新リーグという将来構想の実現に向けて動き出しています。新B1リーグ参入の条件は大まかに三つあり、クラブの入場者数平均が4000人、年間売上高が12億円、そして入場可能数が5000人以上でスイートルームがあり、試合日設定の自由もきくようなアリーナを確保することになります。

 最大18クラブでスタートしますが、翌シーズン以降も、条件を満たすクラブであれば上限数を設けずに新B1リーグに入れます。つまり、これまでのスポーツのリーグで基準であった競技力ではなく、事業力で評価されます。人口減など世の中に 閉塞へいそく 感がある中で、全国に数多くのクラブがあって、地域の皆様を魅了し、ファンになっていただいて、それに対してファンサービスすることで支え、支えられている。その関係をもっと強固にして、地域における存在感を高めていかないといけない。

 優勝するのは1クラブだけで、上位争いをしていないクラブはなかなか盛り上がりづらいというのは、この世界にいて感じてきたところです。そうなると、クラブは昇格したい、降格はしたくないということで、どうしても選手に投資して結果を出そうという方向に走ってしまって、地域に根付くための活動の部分が弱くなる。

 ふだんそうした活動が足りていないと、地域が感情移入しづらい、そんなクラブが増えてしまう構造に対する危機感があって、ビジネス現場も投資が受けられるシステムにしたかった。社員という人的資源への投資も必要です。

 アリーナ建設にしても、巨額になるので、降格したときのことを考えると、自治体の投資判断が難しくなる。そこで、競技成績に関係なく、地域にちゃんと貢献しているクラブであればトップカテゴリーに入れることにして、全国にアリーナを造っていきたいというのも将来構想の理由です。既に完成した沖縄以外にも、こうしたアリーナ建設の動きは現在、全国7か所で進んでいます。難しい条件ではありますが、新B1リーグに参入するクラブ数は何とか10に届く、届かせたいと思っています。

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( [あすへの考]【リーグの将来構想】バスケで地方を元気に…Bリーグチェアマン 島田慎二氏 51 - 読売新聞オンライン )
https://ift.tt/i4QIlRn

No comments:

Post a Comment