衣類のタグに付いている「洗濯表示」。2016年12月に、それ以前のJIS規格に基づく表示から、現在の国際標準のマークに変更された。それからずいぶん経っているが、実はあまりよく知らない、わかっていないという人も多いのではないだろうか。
“衣類の取り扱い説明書”ともいえる洗濯表示だが、よく確認せずに、間違った洗い方をしてお気に入りや高価な服を台無しにしてしまった経験のある人もいるはず。
今回は、ライオン株式会社で「お洗濯マイスター」として活動している大貫和泉さんに、タグに付いた洗濯表示の見方から、毎日の洗濯で留意すべきポイントやちょっとしたコツなど、お洗濯の基本について解説してもらった。
洗濯表示の見方と洗剤選び
まずはお洗濯の一般的な考え方として「洗濯表示の確認は基本」とのこと。「その衣類が家庭用の洗濯機で洗えるか否かや、洗い方はすべて洗濯表示を見ればわかります」と説明する。
そこで押さえておきたいのは、5つの基本記号だ。「『家庭洗濯』マークと『クリーニング』マークの両方に×が記されていなければ、家庭でもクリーニングでもOKという意味になります」と大貫さん。
「家庭洗濯」マークの下にあるバーの数は洗濯力の強さを表している。「下にバーが増えるほど弱い洗濯力で洗って下さいという意味で、縦型洗濯機もドラム式洗濯機も関係なく洗うことができます」という。
洗濯コースの名称はメーカーや機種によって異なるが、「バーが1本までなら標準コース、バーが2本だったらおしゃれ着コースがおすすめ。手洗いマークの場合は、手洗いが推奨ですが、洗濯機の中には『おしゃれ着洗い』などの弱水量のコースで洗うことができる製品もあるので、洗濯機の取扱い説明書で確認を」とのこと。
洗濯表示に合わせて、おすすめの洗剤もある。「オールマイティな汚れに対応できる製品が多いのが粉末洗剤で、液体は特定の汚れに特化しているものが多いです。液体洗剤は、汚れに直接塗布した上で洗濯できる点がメリットですね」と大貫さんは話す。
「弱水流コース」や「手洗い」コースの場合には、おしゃれ着用の洗剤の使用が推奨される。「蛍光漂白剤が使用されておらず、色褪せや型崩れ、毛玉防止といった、一般の衣類用洗剤にはない成分が入っています。おしゃれ着洗いのコースは、弱い機械力で優しく洗うぶん、汚れ落ちの力も弱いと思われるかもしれませんが、それを補ってしっかり洗えるような成分が含まれています」(大貫さん)。
ちなみにライオンでは「アクロンの『これ洗える?』」アプリを無料で提供している。洗濯表示の確認や、洗い方の手順などを紹介してくれるので参考にするといいだろう。
もう1つ、洗濯表示のタグで注目したいのが四角の中に丸が描かれた「タンブル(タンブラー)乾燥」のマークだ。ドラム式洗濯機を導入してタンブル乾燥の手軽さを実感している人も多いことだろう。
しかし、タグを実際に確認してみると、多くの衣類が×の付いた「タンブル乾燥不可」と表示されているように感じる。手洗いマークのように、例えばネットを活用したりなど工夫次第で洗濯機の乾燥機能を使用可能なのだろうか。素朴なギモンに大貫さんは次のように答えてくれた。
「洗濯表示通りにしないと、縮んでしまうなど型崩れする可能性があります。特にTシャツにプリントが施されているものは剥がれてしまったりということもあります。洗濯機の乾燥機能は、洗濯槽内のすべての衣類が乾くまで運転を続けます。例えば(厚手で乾きにくい)バスタオルがあると、それが乾くまで乾燥を続けてしまうので、繊維の種類によっては長すぎて衣類傷みの原因になることもあります。洗濯運転が終わった後に、タンブル乾燥機能NGのものを取り出すことを忘れないように、NGのものだけを洗濯ネットに入れておき、乾燥する前に取り出すというのも有効です」。
大貫さんによると、乾燥機能の可否というのは、一概に素材の違いではないという。「綿だからOKというわけではなく、例えば綿のシャツでも襟に芯地が入っているような、型崩れしやすい衣類などに、タンブル乾燥NGのマークが付いたりしています」。
昨今は、機能性繊維が普及して、スーツや制服でも手洗いマークのものが増えている。「先ほど話したとおり、手洗いマークでも弱水流コースで洗える洗濯機があります。手洗いマークOKのコースなら、機械力を弱くして、絞りを弱く、脱水時間を短く設定して洗うので、中性洗剤を使えば問題なく洗濯機でも洗うことができます」とのこと。
ただし、ウールマークの素材には注意したい。家庭洗濯OKのマークがついていたら家で洗えるが、「家庭用洗濯がNGでクリーニングOKの場合は、必ずクリーニング店へ依頼を。クリーニングマークの丸の中のアルファベットは使用できる溶剤の種類で、クリーニング店の人はこれを参考にして洗濯をしてくれます。反対に、クリーニングNGのマークのものもあります。例えば溶剤を使うことによって衣類にダメージを与えるおそれもあるため、それはドライクリーニング厳禁です」と続けた。
それ以外にも、四角いマークの中に「丸」ではなく「棒」が記されている場合には、干し方が示されている。縦の棒は吊り干し、横棒は平干し、左肩の斜めの線は日陰干しを表している。
靴下は裏返しのままがいい? 汚れをしっかり落とすコツ
大貫さんによると、昨今の洗濯を取り巻く環境は汚れ落ちが厳しい状況にあるという。1つ目の理由が繊維の変化だ。「(保温や冷感、吸湿などの)機能性インナーに代表されるように、綿100%からPEや混紡が多くなりました」。
これに加えて、洗濯機は大型化と節水化の傾向にあり、共働きや単身・2人世帯が増え、「週末のまとめ洗いなどで詰め洗いをする家庭が増え、衣類汚れが洗濯機で落ちにくい環境になってきている」とのこと。
こうした状況に対して、汚れ落ちをアップさせるテクニックの1つとして、「靴下や肌着は肌に接する皮脂汚れが内側に付きやすいので裏返した方が汚れ落ちがアップします」とアドバイス。ただし、「子供の靴下など汚れが表に多い場合は表に、ブラトップなどの型崩れしやすいものは表にしてください」と補足した。
前述のとおり、液体洗剤のメリットは、ピンポイントで汚れに塗布できること。「前処理してあげるだけで汚れ落ちの効果がアップしますよ」と大貫さん。
ただし、泥汚れに関しては注意が必要だという。「繊維の中に泥が入り込んでしまうため、最初に水洗いするのはNGです。まず液体洗剤を塗ってから水洗いするか、ユニフォームなどスポーツ用の練習着の場合は、洗剤液を溶かした水の中で予洗いしてから洗ってください」とのこと。
一方、家庭用洗濯マークの中に記されている温度表示については、誤解をしている人が多いかもしれない。これは「家庭洗濯での選択液の上限温度」を示している。「洗濯液の温度は、高いほど洗浄力は上がる反面、色落ちがしやすくなったり、ウールは繊維同士が絡みやすくなったりするので必ず守ってほしいですね」と注意を促している。
血液汚れに関してもお湯洗いに注意が必要だ。「血液の成分はたんぱく質なので、40℃を超えると固まってしまって取れにくくなってしまいます。必ず40℃より低い温度の水ですすいでから洗ってください」と話した。
他にも洗濯物の容量を満杯にしないことも汚れ落ちをよくするための秘訣だ。「ドラム式でも縦型でも、7~8割程度なら上から詰め込んでもどこに入れようが洗浄力は変わりません。しかし10割にしてしまうと、洗濯液の中で衣類が十分かくはんされず、一番上に入れた衣類の汚れ落ち度合いは、7割の場合の約1/3ぐらいまで低下してしまいます」と大貫さん。「容量7~8割」は、縦型洗濯機の場合、洗濯槽の銀色の部分が5cm程度見える量が目安だ。
一般的に洗濯はすぐにした方が汚れが落ちるというのは知られているが、すぐにできない場合は“プレ洗剤”を利用するのがおすすめ。ライオンには「ブライトSTRONG 衣類の爽快シャワー」という製品があり、「明後日とか明日しかお洗濯ができないという時は、汚れや菌・ウイルスの気になる部分に『ブライトSTRONG 衣類の爽快シャワー』をかけておくと1週間ほどまでは大丈夫ですよ」(大貫さん)。
洗濯にお風呂の残り湯を利用すると、毎日行なった場合は、1年間でお風呂108回分、トイレ4,320回分に相当する2万1,600Lの節水効果があるという(毎回60Lの残り湯を洗濯に利用するとして、1カ月分の節水量を60L×30日、1年分を60L×30日×12カ月で算出)。ただし、風呂水を洗濯に再利用する際には、できるだけキレイな状態で残しておきたい。
「身体を洗ってから浴槽に入る、湯船にタオルを入れない、お湯の中に浮いた髪の毛ゴミを取り除いておくなど。あとは洗いの工程でのみにして、すすぎは水道水を使うことをおすすめします。菌が気にならない場合はすすぎに使っても。酸素系漂白剤を一緒に使うのも有効ですね」(大貫さん)。
部屋干しする前に気をつけたいこと
花粉や黄砂、PM2.5などの飛散量拡大により、近年は部屋干しをする人も増えているが“部屋干し臭”が気になるところ。主たる原因は、洗濯で落としきれなかった汚れと菌だ。そこで、予防策としては「汚れをしっかりと落とす」という大前提に加えて、雑菌の増殖を阻止するために、「速く乾かす」こともポイント。「5時間以内に乾かすと嫌な臭いがしにくいというデータがあります。除湿機やサーキュレーターといった家電を利用するなど早く乾かすための工夫を。扇風機を使うことで乾燥時間を1/2程度短縮できます」とのこと。
大貫さんによると、室内干しのハンガーをカーテンレールに掛けて行なうのはおすすめできないとのこと。「風が通りにくく、角ハンガーが傾きやすい。そもそもカーテンが汚れているという場合もあります」というのが理由だ。
「室内干しは、風通しのよいところにふりさばいてから干すこと。角ハンガーに干す際には、長いものが外側になるようにした“アーチ干し”がおすすめ。逆にした“V字干し”や長さをバラバラに干した場合に比べると30分ほど乾燥時間を短縮できます。厚手のものは外側に、乾きやすいものを真ん中に干すというのも鉄則。ただし、浴室乾燥機の場合には、温風のあたる場所に厚手のものを、端には乾きやすいものと逆の干し方がよいです」(大貫さん)。
他にも、「シャツやブラウスは襟を立てて、ボタンはしない」「パンツはウエスト部分を筒状に」「靴下は、ゴムの部分の濡れている時間が長いほど劣化していくので、ゴムのほうを上側にして干す」「バスタオルは裾を揃えて干さずに少しずらしたり、囲み干しや蛇腹干しがおすすめ」といった室内干しのコツを紹介してくれた。
ドラム式洗濯機で注意すること
縦型からドラム型洗濯機へ買い替える人も増えているが、その際に注意したいのは「おしゃれ着用洗剤の使用量」。というのも、ドラム式洗濯機の場合「手洗い」「ドライ」「おしゃれ着コース」などの弱水流コースを使用する場合は、スタートボタンを押しても、洗剤量が表示されない場合がある。洗剤量については、機種ごとに決まっている場合が多いが、「同じおしゃれ着用洗剤でも、ある洗濯機ではキャップ1杯、別の洗濯機は0.5杯など、機種によってまちまちです。洗濯機の画面に洗剤量が表示されない機種も多いので、使う時には取扱説明書を確認してください」と教えてくれた。
もちろん、標準コースの場合にも洗剤の使用量を守ることは必須だ。というのも、「古い機種では、すすぎ工程で水がキレイになるまで注水を続けてしまうものもあります。洗剤の量が多ければ、使用水量も多くなってしまいます」とのことで、「適量を守ることが大切です。最近では洗剤を自動で計量して投入してくれる機能のある洗濯機もあります」と大貫さん。
ドラム式では、洗濯槽内で衣類が偏りやすく、衣類1枚で洗ってしまうと脱水運転中などに自動で停止するエラーが起きやすい。そこで、「全自動の場合には見落としがちですが、手動設定も併用して上手にお洗濯を」とのこと。
また、ドラム式では糸くずフィルターが洗濯槽内ではなく、外側の本体下部に設けられているため、お手入れを忘れがちなのも要注意。「糸くずフィルターにホコリが溜まって水が外に漏れ出してしまい、修理を依頼しなければならないというトラブルも多々あります。乾燥フィルターと合わせて、小まめなお手入れを忘れずに」とアドバイスしてくれた。
からの記事と詳細 ( 洗濯の前に「タグ」見てますか? ライオンのお洗濯マイスターに聞いた基本とNG項目 - 家電 Watch )
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