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Thursday, May 26, 2022

71歳の元厚労相、政界引退後に里親へ 塩崎恭久さん「子ども守りたい」【政界Web】:時事ドットコム - 時事通信ニュース

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 官房長官や厚生労働相を歴任し、昨年10月に政界を引退した元衆議院議員の塩崎恭久さん(71)。今年2月、妻の千枝子さん(70)とともに里親登録し、地元・松山市で里子を迎える日を待っている。

 里親とは、虐待などさまざまな事情で家族と暮らせない子どもたちを、家庭環境の下で養育する制度。厚労省によると、児童養護施設などに預けられている子どもは2020年度末時点で3万3810人に上るが、里親委託率は22.8%にとどまっている。

 塩崎さんは「子どもは特定の大人と愛着形成することが最も大事だ」と指摘。厚労相として、児童福祉法に子どもの権利や家庭養育優先の原則を明記するなど、制度の抜本改正に取り組んだ。今度は制度を使う立場として、その背景や課題について話を聞いた。(時事通信政治部 栗原ゆり)

厚労相時代に理念を大転換

 ―児童養護問題に関心を持ったのは。

 1998年に、社会保障制度に関心が強い自民党の根本匠元厚労相、安倍晋三元首相、石原伸晃元幹事長と私の頭文字を取って、派閥横断グループ「NAIS(ナイス)の会」を結成した。グループで全国児童養護施設協議会の会長らに話を聞く機会があり、入所する子どもたちの半数以上が家庭で虐待を受けている事実を知った。その後も機会を見て全国の施設に足を運んだ。

 あるとき、児童養護に詳しい人から「施設の子どもたちは、朝、出勤してくる職員を『おはようございます』と迎え入れ、夕方にその背中を見て送り出しているんです」という話を聞き、目からうろこが落ちた。家庭で暮らす子どもたちとは全く逆で、「ぬくもりの連続性」のない生活をしているのが施設の子どもたちだと分かった。

 それまで施設を営む側の目線で物事を見ていたことに気付いた。子どもの視点に立って、特定の大人と愛着を育む環境をいかに整備するかという認識に立つきっかけになった。

 ―児童福祉法の改正を手掛けた。

 14~17年に厚労相を務めた。改正前は、家庭の事情で親による養育が難しい場合、児童養護施設や乳児院に預けることが優先されてきた。そこで、まず同法の1条を「全て児童は、その生活を保障されること、愛され、保護されること、その他の福祉を保障される権利を有する」に変え、子どもが権利の主体であることを明確にした。

 そして3条の2に、国と地方公共団体に対し、親元で暮らすことのできない子どもたちが、施設ではなく里親など家庭で優先的に養育されるように、必要な措置を取ることを義務付けることを盛り込んだ。

 策定過程では抵抗する人たちが大勢いたが、国会では全会一致で成立した。理念が大転換された瞬間だった。

「年齢制限なし」で決断

 ―里親になるきっかけは。

 国会議員を辞めたら、子どものために何かできないかと考えていた。児童発達の理論では、特定の大人との愛着形成が大事で、それが健全な心の育成を保障すると示されている。そこで、里親の包括的な支援を行う「フォスタリング機関」を松山市につくる手伝いをしたいと思い立った。

 その後、たまたま児童相談所の職員と話す機会があり、里親に年齢制限があるか尋ねたところ、「ない」と言われた。「私にもできますか」と聞いたら、「もちろんです」と。妻に相談したら「いいじゃない」と即答だったので、まず自らが里親になろうと決めた。

 昨年10月に、私の選挙区の後継候補となった長男の選挙を手伝いながら3回の研修を受けた。今年2月、愛媛県養育里親名簿に夫婦で正式に登録された。

課題山積、厳しい現実

 ―里親委託率は低迷している。

 国は里親委託率の目標として、3歳未満の子どもは24年度末までに75%以上、3歳以上で就学前の子どもは26年度末までに75%以上、それ以外は29年度末までに50%以上と掲げている。ただ、達成できそうな自治体は2割にとどまり、愛媛県を含め現状は厳しい。

 登録里親から「待てど暮らせどマッチングがない」という話を聞くことが多かった。背景には人員不足がある。例えば愛媛県内には児童相談所が三つあるが、松山市などを管轄する中央児童相談所は人口90万人以上を抱えているにもかかわらず、里親担当の職員は1人だ。広範囲にわたる区域を1人でカバーするのは不可能で、これではマッチングもなかなか進まない。自治体の事業の中でも、これまで要保護児童の福祉は優先順位が低く、人もカネも付いていなかったのが現実だ。

 ―制度自体も普及しない。

 宣伝も少な過ぎる。もっとバスや電車に広告を掲載したり、テレビのゴールデンタイムでCMを打ったりすべきだ。

 一方で、里親への手当は以前より拡充されている。一般的な養育里親の場合、児童1人当たり月9万円が里親手当として支給され、このほかに生活費、教育費、医療費、通院費も受け取れる。共働き家庭でも、実子がいてもいいし、週末だけの短期里親もある。そういうことが知られていないことが問題だ。

 議員時代に、同僚から「票にもカネにもならないのに、なんで熱心にやれるのか」と聞かれた。議員ですらこの程度の意識なんだと本当にがっかりした。

受け入れは「いつでも歓迎」

 ―迎え入れるための準備はどうか。

 いつでも歓迎だ。週末だけの預かりや夏休み中の一時保護など、受け入れ方はさまざまある。短期間でも役に立てればいい。親が平常心を取り戻すまで、2~3日だけレスパイト(休息)を得たいときでも預かる用意はある。何よりもネグレクト(育児放棄)を含め虐待を未然に防ぐことが大事だ。

 ―どんな里親、里子関係を目指すか。

 安心できる環境で、安定した心で育ち、自立できるように手伝えたらいい。虐待を受けているなら守ってあげたい。

(2022年5月27日掲載)

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