パチンコ店は営業自粛を求められているのにすべての店が休業しないのは「なぜ」?
NHKの人気番組『チコちゃんに叱られる』でのチコちゃんの「なぜ」ではないが、筆者が最近のニュースを見て疑問に感じた「なぜ」。それが冒頭の「なぜ」だ。
大阪府の吉村知事は4月24日(金)休業要請しても応じようとしないパチンコ店の名前の公表に踏み切った。
全国で初めての新型コロナウイルス対策特別措置法に基づくもものだった。
吉村知事の記者会見の様子は4月25日(土)のNHK『おはよう日本』など各番組で放送された。
大阪府の吉村知事がパチンコ店に休業を要請しているのに、応じようとしない店が今もある
知事が実名を公表しても、それでも要請に従わず営業を続けるパチンコ店が今もある
店名を公表されても営業を続ける業者がいる中で、パチンコ店への休業要請は東京都など他の自治体にも広がりつつある。
知事たちの要請が広がっているにもかかわらず、一部のパチンコ店は従わないのはなぜなのか?
『アエラ』の記事にパチンコ店の本音が垣間見える。
「休業すると経営的に大変だから?」
「休業しないで店名を公表された方がいい宣伝になるから?」
筆者が知りたいのは同調圧力が強い日本社会でなぜこれらのパチンコ店が堂々と営業を続けているのかだ。
店名を公表されても平気で知事の要請に従わない店がある理由は他にあるのではないか?
知事よりも怖いものがあるけれども、そこからは要請されていないとか?
新型コロナウイルスの拡大に歯止めがかからず、少しでもリスクを減らさなければならないときに、なぜパチンコ業界だけ、パチンコ業界の一部の店だけは他の業界とは違う道を歩んでも許容されるのか。
ネットなどで情報を集められないだろうか。
パチンコ業界の本音は?
パチンコ、パチスロ業界ニュース『遊技日本』というパチンコ業界向けのサイトがある。
パチンコ業をとりまく現状についての様々なニュースが掲載されているが、そこでは「パチンコの灯を消したくない」という本音が透けてみえる文章があった。
パチンコ業界の本音は「娯楽の殿堂の灯を消さない」だったらしい。
パチンコ業界は新型コロナウイルスにどのように対処しているのか?
パチンコ業界の経営者や従業員向けに発行されている雑誌がある。「PiDEA」(ピデア)という月刊の業界向け雑誌だ。
パチンコ・パチスロの業界である「遊技業界」で成功した経営者の「立志伝」や最新のパチンコの機種などを紹介する記事などが載っている。
最新号(Vol.164 2020年4月号)の特集が興味深い。
「新型コロナバンデミック~パチンコ業界に降りかかる災禍」
昨年12月、中国の武漢市で最初の症例が確認されて以来、急激に拡大。感染者は全世界で100万人を超え、国内では2600人超(4月3日時点)に上った。最悪のケース、死につながる見えない恐怖に世界中がおびえ、警戒と対策を強めている。当然、パチンコ業界にも深刻な影を落としている。
この特集の「パート1」の「新型コロナ感染者の来店で2週間休業の脅威」という記事では新型コロナウイルスにおびえているパチンコ業界の姿を見ることができる。この記事が書いているのは2月、3月なので現在のように飛躍的には感染が拡大しておらず、まだ感染者一人ひとりをある程度まで追跡できていた時期だ。業界の本音も透けて見える。以下、記事から抜粋する。
関西では2月に和歌山、3月には大阪で新型コロナウイルスの感染者がホール(筆者注=パチンコ店の店舗)へ来店する事態が発生した。これは感染の拡大とともに、いつどこのホールでも起こりうる問題だ。現場を預かる店長は、保健所からの連絡が来るのではないかと緊張の日々を送っている。
新型コロナウイルスの感染が拡大する中で2月17日、パチンコ業界に激震が走った。和歌山県湯浅町の済生会病院で陽性が判明した感染者の1人が和歌山県有田市の「123ライト有田店」へ立ち寄っていたことが分かった。同ホールにはホームページ上で経緯を公表するとともに、2月18日から臨時休業に入り、店内の消毒ならびに従業員のウイルス検査を実施した。2月22日には、従業員の検査結果がすべて陰性だと判明し、2月23日から営業を再開している。
記事にある通り、同店のホームページを探すと感染についての記述が見つかった。
『PiDEA』の記事はさらに続く。
一安心したのもつかの間、3月6日には大阪府堺市北区の「ザ・チャンス8新金岡」でも、保健所からの知らせで新型コロナウイルスの感染者がホールへ来店していたことが発覚した。同様に翌7日から臨時休業に入り、店内の消毒作業を行った。
感染者が来店した2月29日15時から21時までに出勤していた社員・アルバイト14名は自宅待機で経過観察に入った。早番と遅番が交代する時間帯だったこともあり、対象者が増えた。従業員は毎朝検温して保健所に報告することが義務付けられている。この間、体調不良を訴える者は1人も出てこなかった。感染者が来店した2月29日を起点に、2週間が経過した3月13日から営業を再開した。
新型コロナウイルス感染におけるパチンコ店側の苦境が記されている。
「いつ保健所から連絡が来るのか、というロシアンルーレット的な不安があります。知らない番号から着信があるとドキッとします。それでなくても、低貸しコーナーのお年寄りのお客さんが感染を警戒して来店しなくなり、売り上げは2割減です。ウチは中小ホールなので2週間も休業したら資金がショートしかねません」と話すのは大阪市内のホール店長だ。
全国のホールに先駆けて発覚した2例。現場の店長は毎日が緊張の連続だ。感染が拡大すれば、いつ、どのホールでも起こりうる。従業員の感染は毎日の健康チェックである程度防げるが、感染者の来店は防ぎようがない。
この記事では感染者がパチンコ店に立ち寄った事実は、クラスター感染の立ち寄り調査から発覚したという。
「123」の場合は済生会病院、「ザ・チャンス8」の場合は大阪市都島区のライブハウス「アーク」や大阪市北区天満の「ソープ・オペラ・クラシックス・ウメダ」でクラスター感染が起こり、足取り調査の結果、ホールへ立ち寄っていたことが判明した。
だが、こうした足取り調査にはどうしても限界があるという。
足取り調査は自己申告なので「覚えていない」と名前が挙がらなかったホールはセーフとなる。
この文章には新型コロナウイルスによる営業の自粛がパチンコ業界に大きな打撃を与えると再三にわたって記している。
「それでなくとも4月からの全面禁煙化で稼働が下がることが予想さるだけにコロナと禁煙のダブルパンチで頭が痛いです」(大阪府内のホール関係者)
「パチンコは営業自粛せよ」という世の中の空気感だけは避けたい。
もちろんビジネスをする側が少しでも店を稼働させて売り上げを残したいという気持ちは理解できる。
だが、現在は小売業も飲食業も少しでも感染リスクがある店などの場所は営業しないように行政が自粛を求めている段階だ。
休業させられたら経営的に苦しくなるのはどの業種も変わりない。
むしろ、現在のように自粛が広がっている状態でもパチンコ店の前に行列ができるからと確信犯的に営業を続けていくることは、パチンコ業界への不信感を増大させてしまうのではないか。国中で協力し合って、我慢すべきときにパチンコ業界だけが自分勝手な行動をとる。パチンコの依存症の人たちを搾取して利益をむさぼる“悪徳ビジネス”だと言わざる得ない。
依存症の問題については大阪の吉村知事もパチンコについてはカジノなどのIRと比べても、依存症対策が不十分だと問題視している。
吉村知事がパチンコの依存症の問題への取り組みで「国」を強調したのは象徴的だ。
緊急事態宣言を受けて各知事が休業要請などをしても、平気な顔をして従わないパチンコ店の存在。
その背景にパチンコに依存する人たちが大勢いるせいではないかという知事の見立ては正しいと思う。
だが、国も何もやっていないわけではない。国(警察庁)はパチンコ業界に対して、パチンコへの依存症を防止するための活動を進めるよう指導している。
パチンコ業界についての情報をまとめた「遊技通信Web」には警察庁の課長がパチンコの業界団体である日本遊技関連事業協会(日遊協)で講演した内容が記録されている。
警察庁の課長はその上で具体的に取り組むべき点についてパチンコ業界に説明している。
この点については警察側はかなり強い口調で要望している。
こうしたことを見ても、行政の中でも監督官庁である「警察庁」の指導に従って、パチンコ業界が事業を行っていることが分かる。
一方、緊急事態宣言の発令によって各都道府県知事はパチンコ店に対して、強制力はないものの「休業要請」ができるようになった。
それが大阪府を皮切りにして他の自治体にも広がりつつある。
そのことをパチンコ業界ニュースは次のように伝えている。
だが、吉村知事の休業要請は応じないパチンコ業者がいるということは、知事の要請には実効性がないということだ。
国の緊急事態宣言→都道府県知事による休業要請となっていて、一応、国のお墨付きを背景にした休業要請だったはずなのに。
なぜ言うことを聞かないのだろう?
先の『PiDEA』の記事にパチンコ業界の今後を心配する次の文章を見つけたとき、疑問が氷解した。
局面は刻一刻と変化している。パチンコ業界の不安はこの先、
警察庁からの営業自粛要請が来るのか
ということだろう。
警察庁だ。
警察庁からの「営業自粛要請」が来ることを怖がっている。
パチンコ業界は監督官庁である警察庁の言うことは素直に聞く。
それなのに今回は機能していない感じなのだ。
警察庁は実は積極的に休業要請に動いていないのではないか。
パチンコ業界には警察のOBも一定数が天下りしている。
OBが天下りしている先だから警察庁の姿勢が甘い、などという陰謀論に与するつもりはない。
しかし、はっきりしていることは警察庁がもっと本腰を入れればパチンコ業者も本気になって休業するはずではないのか。
吉村知事も小池知事も本気で感染拡大を防ぐためにパチンコ店を休業させたいと本気で考えているのなら、警察庁を動かすことを考えるべきだろう。
警察庁がまだ積極的に働いていないのではないか。
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April 26, 2020 at 03:32AM
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吉村・小池知事の休業要請でも「今日もパチンコ店が営業する」のは警察庁が動かないから?(水島宏明) - Yahoo!ニュース - Yahoo!ニュース
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