「第103回ザテレビジョン・ドラマアカデミー賞」で監督賞を受賞したのは、「グランメゾン東京」(TBS系)の塚原あゆ子(1、2、5、8、11話)、山室大輔(3、4、7、10話)、青山貴洋(6、9話)の3人。塚原監督と青山監督に、「木村拓哉はかっこよく、料理は美しく、すばらしいカメラワーク」と絶賛された同作の演出について、そして、主演男優賞を獲得した木村拓哉、助演男優賞の玉森裕太について語ってもらった。
ネット番組でドラマに登場したジビエカレーを振る舞った木村拓哉
■ 最初に考えたのは「どんな木村(拓哉)さんが見たいか」
――監督賞を受賞された感想を教えてください。
塚原「レストランに行くと、おいしい料理をいただくだけで終わってしまうけれど、それをどんなふうに作っているのかがわかれば、食べる側も作る側も変わるはず。そう思って作ったドラマなので、そんなメッセージが少しでも届けられたかなとうれしく思っています」
青山「日曜劇場の枠で料理をテーマにし、家族全員で楽しめるドラマを目指していたのでうれしいですね。実は先日、食事に行ったら、レストランの人が『これ、グランメゾン東京をまねしてみました』と言っていて、料理を出された家族連れのお客さんたちがとても喜んでいたんです。それを見て『テレビっていいな』と改めて思いました」
塚原「ミシュランの星もひとつの評価ですが、こうしたドラマの賞もそうですよね。このドラマでやろうとしたのは『人に認められるというのはどういうことか』ということで、ヒロインの倫子(鈴木京香)は最後に三つ星を取ったけれど、そこに至るまでの過程で、尾花(木村)をはじめとする仲間が集まった。評価そのものよりも、最後に残るのは仲間であり、努力の積み重ねであり、つまり自己評価じゃないかと思いました」
――そもそも、フレンチのシェフが仲間たちと共に三つ星を目指すという物語は、どうやって思いついたのでしょうか?
塚原「最初は、日曜劇場枠で木村拓哉さん主演でというところからスタートしましたね。『私たち、どんな木村さんが見たいだろう?』とディスカッションして、料理ものにしようというのが伊與田英徳プロデューサーから出てきた。それでミシュランの星を目指すということになり、そうなるとフランス料理かなぁと、後付けで考えていきました。展開としては、黒澤明監督の『七人の侍』(1954年)のように、何かを成し遂げるときに必要なスキルを持った人がひとりひとり集まってくるというのをイメージしていました。後半は映像でもみんなが集まった感じを出すと楽しいかなと」
青山「とにかくキャストが木村さん、鈴木さん、京野役の沢村一樹さんを始め、みなさん達者なので、演出するまでもなく自然と仲間感を出してくださっていました。それを裏切らない映像にしようと思っていました」
■ 料理は吹き替えなし 「レシピを見なくても、さっと一品作れてしまう」
――尾花役の木村拓哉さんが主演男優賞を獲得されました。現場で感じた木村さんの演技はどうでしたか?
塚原「木村さんは尾花の感情の流れだけでなく、作品全体のことも俯瞰で見えていらして、まさに一緒に作ってもらった感じです」
青山「すべてにおいて本気というか、料理も最初から最後まで全部、自分で作るので、すごいなぁと思いました」
塚原「レシピを見なくても、現場で料理監修の先生がアドバイスすれば、さっと一品作れてしまうから、びっくりしちゃうよね。手順を間違えない上、お肉の大きさなどアレンジとかもしちゃうんです。木村さんと先生でお店を開けるのでは?と思うぐらい。
ドライ(段取り確認)のときに普通に料理を作り始めるので、木村さんがすごいことをやっているのに、こちらの切り取りが甘かったり手元を差し替えた印象になっちゃったりで、残念!というときも…。とにかく、料理と木村さんの相性が抜群で、それがこのドラマがうまくいった大きな要因だと思います」
――木村さんの演技では、最終回、尾花がグランメゾン東京が三つ星を獲得した瞬間、廊下に座り込んで涙を流すシーンが印象的でした。
塚原「あの場面では木村さんが『(発表の瞬間は)廊下にいようかなぁ』とおっしゃったので、廊下にカメラを構えていたんですが、涙を流したときは私の想像を超えてくるものがありました。リアルにミシュランガイドの発表をしている会場で撮影させてもらったので、待ち時間も長かったんですが、さすがの集中力であの演技になり、カットの声をかけるのがつらいぐらいでした」
――助演男優賞を受賞した祥平役の玉森裕太さんはどうでしたか?
塚原「以前『リバース』(2017年TBS系)でもご一緒したんですが、そのときのキャストは同世代が多かったんですね。今回は、木村さん、鈴木さん、沢村さんと、まるで『アベンジャーズ』みたいな強者ぞろいで、玉森くんが入っていけるかな?という心配はあったんですが、じわ~っと入っていった感じでした」
青山「最初と最後では、表情もかなり違いましたよね。祥平は後半、丹後シェフ(尾上菊之助)のいる『gaku(がく)』に行って、その後、グランメゾンに来てと、大きな転機になるシーンが続いた。そこで、どんどん顔が変わっていきました。僕はスピンオフの『グラグラメゾン東京~平古祥平の揺れる思い~』(Paravi)も演出しましたが、こちらはコメディーなので、だいぶリラックスしている感じでしたね」
■ 美しい料理映像の秘密は、ミラーレス一眼を使った“発明”
――そして、料理の映像が美しいと評判でした。撮影法としてはどんな工夫をしたのでしょうか?
塚原「カメラマンチームから提案してもらって、ミラーレス一眼カメラを使いました。ビデオカメラに比べると小型なので手持ちにして、料理をしている人の手元まで寄せられる。それで早回しをして、料理が完成した瞬間など見せたいところだけは静止してという映像にしたのが、今回の発明でした。
料理の過程はキャストが演じるときだけでなく、その後、照明を組み立てて別撮りもしたので、料理監修の先生たちは一日に何度も何度も準備し料理してくださいました。もう、本当に頭が上がらないです。きっと先生たちも、『このドラマを見てくれた人の中から、ひとりでも多くの料理人が生まれるために』と頑張ってくださったのだと思います」
――それだけ料理シーンにこだわったのは、最初から目標を高く設定していたということでしょうか?
塚原「そうですね。料理のドラマというのはこれまでもあったけれど、作るなら少しでも新しいものにしたいじゃないですか。せっかく今の時代の映像技術があるわけなので…。例えば、調理で出る湯気もひと昔前はCGで作っていたのを、撮影で写し取れないかと工夫しました。そうして少しずつアップデートすれば、時代に取り残されない作品になると思うんです。
ただ、フランス料理は奥が深すぎて、映像では表現しきれないこともありましたね。例えばカタバミの酸っぱさは難しくて、なんとかその微妙な味わいを伝えようとしたけれど、最終的にはあきらめました(笑)」
――塚原さん、青山さんが特に気に入ったメニューは何ですか?
青山「『ナスのプレッセ』です。僕にとってはナスってただの黒い物体だったのになのに、こんなにおいしいとは!という驚きがありました」
塚原「キャストに評判がよかったのは、終盤に出てきた『ハタのロティ』。あのぽろぽろのソースが異常においしいんです。撮影でカットをかけても、みなさん『おいしい』と言って食べ続けていました」
■ 三角関係は「“大人の恋愛あるある”のつもりでした」
――ドラマソング賞を受賞した山下達郎さんの「RECIPE(レシピ)」についても教えてください。
塚原「実は、このドラマを始動したとき、企画書の段階で、山下さんにお会いしていたんです。だから、山下さんにとっての『グランメゾン東京』はこの曲なんですよね。それが物語と化学反応を起こしたと思います。ドラマ本編は内容を詰め込んだのでポンポンと速いテンポで進んでいくのですが、エンディングでこの曲がかかったことで、日曜の夜にふさわしい落ち着きが出ました」
青山「僕はもともと山下達郎ファンなんですよ。中学生のときに好きになって、アルバムも全部持っているんです。だからもう、うれしくて冷静に受け止められなかったんですが…。キャストの皆さんもこの主題歌が気に入って、『今回はこの場面で俺のセリフから流れるな』なんて予想していましたね(笑)」
――また中盤で展開した尾花、倫子、京野の三角関係も、アラフィフの恋という点で新鮮でした。
塚原「私は“大人の恋愛あるある”のつもりだったんですよ。40代ぐらいだと、勢いでとりあえずキスしちゃうとか好きだって言うとかあるよねと思っていたけれど、見た方たちはけっこう真面目に受け取ってくださったので『えっ』となりました(笑)。
京野は酔った勢いで告白するけれど、次の週にはなかったことになっていて、3人ともそれで関係が壊れるほどの子供じゃない。仕事の仲間というのが第一なわけで、“なんとなく好きかもしれない3人”という描写にトライしたつもりなんですが、解釈はみなさんにお任せします」
青山「僕もあまりロマンスとはとらえていなかったけれど、最終話、倫子が尾花に抱き着くシーンを現場で見ていたら、なんだか涙が出てきました。好きな気持ちを押し殺しているとも見えるし、逆に恋愛でなくても大人の男女の絆ってあるのかなと思いました」
塚原「演じている木村さん、鈴木さんには『尾花にとっての倫子』『倫子にとっての尾花とは』という考えが明確にあるはず。そこはもう完全にお任せしています」
――尾花があえてグランメゾン東京を去り、倫子の料理で勝負させるという結末は初めから決まっていたのですか?
塚原「そうですね。これは主人公が天下を取る話じゃなくて、みんなの努力の結果である料理が天下を取る話。尾花がリーダーのままではありえないと思っていました。『七人の侍』の侍も最後に村を去っていくじゃないですか。本当に助けてくれる人というのは、周囲の人に自活と成長を促すと思うんです。
最終回のあたりはもう、尾花は本当に木村さんだなと思いながら、編集作業をしていました。クランクアップのときは、木村さんと『さびしいなぁ』という話もしましたね。ここまで毎日、尾花のことを考えていたのに、明日から、それがなくなるというのがしょんぼり。寂しかったです」
(ザテレビジョン・取材・文=小田慶子)
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February 28, 2020 at 04:15PM
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監督賞は「グランメゾン東京」 吹き替えなしの料理シーン&最終回の涙の舞台裏も!【ドラマアカデミー賞】(ザテレビジョン) - Yahoo!ニュース
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