政治アナリスト・伊藤 惇夫
首相にとって、政権の維持とともに、あるいはそれ以上に大事なのが、実は「引き際」ではないか。
首相として、どれほど栄耀栄華(えいようえいが)を極めようが、やがては身を引く時がくる。その際、多くの首相は、自身から見て「意中の人」を後継者に据えようと考える。
◇余力を残す
政権運営の方向性や、自身の進めてきた政策の継続を求めることもあるが、それ以上に、引退後も影響力を維持したいという思いがあるからだ。
そのためには「余力」を残して辞める必要があるが、その「見極め」は難しい。余力がいつまで維持できるかは、それこそ「神のみぞ知る」から。
もしも、ギリギリまで粘った結果、ボロボロになってしまったら、後継者の指名は不可能になるし、辞任を早まれば、後悔が残る。
年明け以降、安倍首相の言動からは、「引き際」が頭をよぎり始めたのではないか、と思える節が垣間見られるようになった。
通常国会冒頭の施政方針演説で、新たな看板政策を掲げるのではなく、1億総活躍や地方創生といった過去の「古看板」を持ち出して、その成果を強調したことなどは、その証拠ではないか。
◇「レガシー」と言えるもの
それ以上に印象的だったのが、この演説の中で、なんと19回も「東京五輪」に触れたことだ。
確かに、安倍首相の悲願である憲法改正にも触れてはいたが、以前に比べると迫力不足の感は否めなかった。
外交面では、北朝鮮の拉致問題解決と北方領土返還という二つの課題が前進する兆しは見えない。
改憲に関しても、物理的な問題を含め、その実現がかなり不透明になってきた。最長政権の割に、「レガシー」と言えるようなものが見当たらないのが現状だろう。
となれば、残るは「五輪を成功に導いた首相」が浮上してくるのでは。
◇1億5000万円問題
自民党内では以前から、秘かに「五輪花道論」がささやかれてはいた。それが今、少しずつ顕在化し始めている。
理由は「桜を見る会」をめぐる一連の対応の不手際が、政権の体力低下を露呈させていることもあるが、それ以上に党内をザワつかせているのが、河井案里参院議員への1億5000万円問題だ。
これほど露骨な「えこひいき」に対し、党内の「一強」への反発は確実に高まっている。
安倍首相が求心力を保つための最大の課題は、党内の支持基盤の維持だ。それが揺らぎ始めれば、「余力」を残しての辞任も危うくなる。となれば、先手を打って「五輪」を花道に…。
(時事通信社「コメントライナー」2020年2月6日号より)
【筆者紹介】
伊藤 惇夫(いとう・あつお) 1948年生まれ。自民党本部の広報担当、新進党総務局企画室長、民主党結成・事務局長などを経て2001年より政治アナリスト。政界の裏事情に通じ、明快な語り口に人気が高い。テレビ・ラジオ出演のほか、「国家漂流」「政治の数字」「情報を見抜く思考法」「政党崩壊」など著書多数。
"それを見て" - Google ニュース
February 17, 2020 at 06:28AM
https://ift.tt/2Sw8zVK
安倍首相に「五輪花道論」〜続けるより難しい引き際〜【コメントライナー】 - 時事通信
"それを見て" - Google ニュース
https://ift.tt/380rBsi
Shoes Man Tutorial
Pos News Update
Meme Update
Korean Entertainment News
Japan News Update
No comments:
Post a Comment