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Monday, June 6, 2022

雷公(中国) [亀井澄夫の妖精・妖怪世界の旅] - 大阪日日新聞 - 日本海新聞

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亀井澄夫の妖精・妖怪世界の旅

2022年6月6日

この姿の雷公は、右手のツチで翼を打ち雷鳴をとどろかす(イラスト(C)合間太郎)

 中国で雷公(らいこう)は男のカミナリ、女はイナズマで雷母(でんぼ)と呼ぶ。彼らにはおもしろいエピソードがたくさんある。まず『西遊記』は一般に知られる人気の小説だが、『北遊記』というのもある(ちなみに『南遊記』や『東遊記』もあるよ)。そこでの雷公たちは2人の娘の私生活をのぞき見しようと、「俺が俺が」と争って、ぴかぴかゴロゴロやらかすから「うるさいわい!」と、もっと位の高い雷神にそれこそカミナリを落とされた。笑えるよね。

 また蘇州で1892年6月12日に暴風雨が起こり、雷も鳴りだした。そこである女性が「雷公にワイロをあげたら収まるかもしれない」と思い、紙銭(しせん)を少し焼いた。すると間もなく雨雲は消え、雷は静まった。それを見た近所の人が「雷公がワイロをもらった」と大騒ぎ。その女性はお礼にと思ったのか、もう少し紙銭を焼いた。ところが彼女は死んでしまった。たぶんワイロをもらったことが発覚して、雷公も彼女をかばいきれなくなったのだろう。当時の中国では、ワイロを取らない役人はいないので、神々の世界でも通用すると思ったのだ。

 親不孝な息子が自分の母を殺そうと毒薬を購入したら、雷雨が激しくなってきた。これは雷公の怒りに違いないと道の真ん中で白状したら、雷が彼をつらぬいて殺してしまった。当時の中国は親不孝が最大の罪なのである。天の神がそれを知ったら、ただちに雷公に命じて撃殺するというから恐ろしい。他に、人間が雷公に化けて男を殺し、ちゃっかりその妻と再婚する話や、化けたはいいが、飼い犬にかみつかれて退散する話もある。

 中国の雷は、日常的にやってくる身近な神様(化け物)なので、こんな変な話がたくさん残っている。中国の人間社会を反映しているものが多く、日本と違いすぎておもしろい。

(日本妖怪研究所所長)

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