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Tuesday, January 25, 2022

若侍が混み合った渡し舟に乗り込んでくる。傍若無人な振る舞い… - 東京新聞

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 若侍が混み合った渡し舟に乗り込んでくる。傍若無人な振る舞いにも誰も文句を言えない。その若侍、たばこを吸っていたが、うっかり、煙管(きせる)のがん首を川の中に落っことしてしまう。落語の「岸柳島」である▼それを見た、くず屋さん。残った吸い口を払い下げてもらえぬかと頼み込むが、侍は激怒し、斬ると大騒ぎに。見かねた老侍がいさめるも耳を貸さず、ついには、決闘ということになる。舟が岸に着き、若侍が下船したのを見計らい、老侍、「船頭さん、馬鹿(ばか)者はあそこに置いて舟を出してしまえ」。若侍は置いてきぼりに▼こんな話ならよかったのに。JR宇都宮線の車内で男の喫煙を注意した高校生が暴行を受け、顔の骨を折るなどの重傷を負った事件である▼高校生を助ける老侍は残念ながら現れなかったが、それを責める気にもなれぬ。怖い。かかわりたくない。その気持ちも分からぬでもない▼年を取ると正義感が強くなるのか、ウチの兄がそうで不届き者を見かけるたびに注意をしようとするが、見ていてハラハラする。町で野生のクマと出くわしてもそのクマには言葉が通じぬかもしれぬ▼義を見てせざるは勇無きなり。くやしいが、正しい行動が正しい結果につながらぬほど、世の中にはたくさんのクマがのしのしと歩いているのも事実だろう。男をクマ扱いせず、正しい行いをした高校生の回復を祈る。

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