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Sunday, September 5, 2021

もはやピクセルアートアニメーション 期待の新作『Eastward』プレイレポート【BitSummit THE 8th BIT】 - IGN Japan

kukuset.blogspot.com

Eastwardは、上海に拠点を置くチーム、Pixpilによって開発されているアドベンチャーゲームだ。今回のBitSummitで展示されていたプレイアブルデモでは、プロローグ「頭上の世界」を中程まで試遊することができた。お恥ずかしながら筆者はこのタイトルをまったく知らなかったのだが、ゲームを動かしてみて、すぐにその魅力のとりこになってしまった。設定については、Steamのストアページの紹介文を引用するのがいいだろう。

「遠くない未来。大陸中に広がった“タタリ”と呼ばれる瘴気によって世界が崩壊し始めたことで多くの人々は命を落とし、それまで築き上げたものはすべて壊滅してしまった。

そして、タタリから逃れた人々は地下に村を作り、今は新たな生活を送っている。しかし、外には美しい世界が広がっているかもしれないと、炭鉱で働く真面目な男「ジョン」と神秘的な力を持つ少女「珊(サン)」は希望に惹かれて外の世界へ歩みだすのだった…。」

しかし、展示されていたデモで上記の設定が明かされるのは、炭鉱の街と「ジョン」、それから「珊(サン)」の関係くらいだ。ゲームはプレイヤーに設定を押しつけようとはせず、炭鉱のなかに発声したなめくじを退治するという暫時的な目的を達したところで、デモは終わる。

プロローグではおもに、髪で目元が隠れた中年の男である「ジョン」を操作するのだが、この無骨なプレイヤーキャラクターがいったいどんなふうになめくじを退治するのかというと、フライパンを武器として用いた、SFC時代の「ゼルダの伝説」シリーズ的なアクションである。爆弾を用いてひびの入った壁を割ったり、送電網を切り替えて炭鉱のドアを開閉したりするグラフィカルな謎解きも、かなり意識的にゼルダライクである。

 
約束事をきっちりとこなす、頼もしいおじさん。

この戦闘パートを無骨なおじさんが無口なままこなしていくという絵面はじつに奇妙だが、そのリアリティを完璧に支えている要素は、子細に描きこまれたピクセルアートと、そのアニメーションである。ピクセルアート自体も、止め絵で眺めているだけで十分に優れていることがわかるが、白眉なのはアニメーションである。

正直なところ、この作品に比肩するピクセルアートのアニメーションを持っているべつの作品を挙げろと言われても、ちょっと思いつかない。すべてのキャラクターに十枚程度のアニメーションが用意されていて、しかもすべてが活き活きとしている。ストーリーの要所では、その出来事に専用の、たった一瞬の専用のアニメーションがふんだんに用意されていて、キャラクターの個性をプレイヤーに伝えてくれる。

 
ハヤオ・ミヤザキ……じゃなかった、ミルク・ミヤザキも登場。止め絵でも似ているが、ふだん煙草を吸っているところなんかは完全にそっくりで、話しかける前からあのひとだとわかる。

たとえば、炭鉱のいちばん奥で自分のことを医者だと名乗るキャラクターを見つけるのだが、そのキャラクターのシャツには大きな穴がいくつも空いている。そういうキャラデザインなのかなと思っていたら、会話のパートのあるところで、そのキャラクターはシャツのなかに自分の手をつっこみ、内側から穴に手を通して、それを寂しそうに見つめる。

こういうアニメーションがあるだけで、このキャラクターの人となりが伝わってくるし、そもそも16bit風の少ない情報量で、「自分が着ているシャツに開いた大きな穴に内側から手を通し、それを見て寂しそうにしている人」という表現を完璧にやりきっているのは、正直なところ、ほかで見たことがない。

 

ストーリーのほうは、炭鉱に発生したなめくじを退治したはいいものの、そのせいで誰ひとり1日のノルマをこなせず、抑圧的な「村長」があらわれて炭鉱夫たちを叱りつけるところで終わる。これが最終的に炭鉱の街を出て、タイトルにあるような「東方への旅」をはじめるためのきっかけになるかどうかまでは、デモ版ではわからなかった。

とはいえ、すてきなアニメーションの力によって、すべての些細なシーンが美しいものに高められているから、もはや物語による動機付けが存在せずとも十分楽しめるデモになっていた。これだけ余裕をもった語りができるのは、自信の表れとみてまちがいない。ピクセルアートのアニメーターたちによる心のこもった作品は、2021年9月16日、PC(Steam)Nintendo Switchで発売される。

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