・パートやアルバイトの募集時における平均時給の最新値となる2020年3月分は1082円。
・販売やサービス系では2020年3月分は1063円。
・介護スタッフでは2020年3月分は1111円。
雇用市場における需給関係の変化はパート・アルバイトで顕著なものとなり、賃金状況が話題となることもしばしばある。その実情をリクルートグループが展開している求人情報メディア「TOWNWORK」「TOWNWORK社員」「fromA navi」に掲載された求人情報をベースとして、同社が2007年以降毎月の状況を公開しているデータ(※)から精査する。
まずは全体的なパート・アルバイトの募集時における平均時給の推移。
最低額は意外にも金融危機ぼっ発前の2007年4月における928円。以降900円台後半にまで上昇し、しばらくはほぼ一定額のボックス圏内で推移する。なお毎年特定の時期に大きく跳ねるようすが見られるが、これは繁忙期の年末(12月)における求人で、相場が上昇するのが表れている。
金融危機やリーマンショック(2008年9月)の影響もほとんど受けておらず、意外に思う人も多いだろう。ただしよく見ると、リーマンショックよりはむしろその後の震災、極度の円高による不況の影響をいくぶん受けているようだ。また2013年以降は年末のピークの後の下げ方も限定的なものとなり、2014年に限れば夏以降高止まりしているのが分かる。そして2015年は踊り場から上昇再開の動き。
2015年までは最高額は同年12月における986円だった。毎年12月は繁忙期の真っただ中で高い値をつける傾向があるため、一段と大きな額ではあった。ところが2016年に入って同年6月には、その額すら超えた988円を示し、記録の限りでは過去最高額を更新する形となった。そして同年12月には当時で過去最高額の1006円を示す。その後も上下を繰り返しながらも全般的には上昇を続け、今回月はこれまでの最高額だった2019年12月の1089円は下回る1082円。前年同月は1044円なので38円のプラス、3.6%の上昇。
続いて販売・サービス系。
最低額を示した時期が金融危機ぼっ発前であることは全体額動向と変わりは無し。またリーマンショックの影響を大きく受けていることもよくわかる。一方で2014年までは最高額は震災発生の2011年の年末につけており、それ以降はむしろ安定の流れにあった。毎年12月がピークとなる動きも変わり無し。ただしリーマンショック後の数年はそのパターンが崩れた流れとなり、いかに不況がアルバイト市場に大きな打撃を与えていたのかを知ることができる形となっている。
だが2015年に入ってからは毎年ピークになる12月に向けて上昇の動きが加速し、2017年では11月から12月にかけてそれまでの最高額となる1012円に。その後も上下を繰り返しながら上昇傾向は継続し、今回月は2019年12月に記録したこれまでの最高額の1072円を下回る1063円。前年同月は1036円なので、プラス27円、2.6%の上昇となる。
続いてフード系。景気動向に連動する形で、もっとも典型的な動きを示している。
最低額を示したのは震災直後の2011年4月で893円。それ以前は金融危機ぼっ発後もあまり変わらず、リーマンショック以降じりじりと下げている。そして震災以降は一様に上昇、にも見えるがよく精査し直すと2012年夏から2013年夏ぐらいまではほぼ横ばい、それ以降は再び上昇カーブを強めながら推移している。
今回月は過去最高額を示した2019年11月の1043円よりは低い1035円。前年同月の1006円からは29円のプラス、2.9%の上昇となる。
最後は介護スタッフ。今項目は2012年7月から調査対象として採用されたため、グラフの作成期間もそれに従っている。
ややばらつきが大きいものの、2014年末まではほぼ960円から980円のボックス圏で推移している。それが2015年に入ってから大きな上昇を見せ始め、2015年5月には初めて1000円の大台を突破した。その後少々値を落として再び3ケタ台に戻してしまったが、2015年11月ではこれまで最高額だった同年9月の1016円をさらに超え、最高額の1023円。その後はしばらく値を落とし、再び上昇に。
今回月は過去最高額となる2019年11月の1107円を上回る1111円。前年同月は1079円だったため、プラス32円、3.0%の上昇となる。
全体的にパートやアルバイトの時給は少しずつ上昇する傾向にある。需給の関係から考察すれば、求職者以上に求人が増え、賃金を引き上げることで不足人員を充足させようとする動きの中にあると見てよいだろう。非正規雇用の就業者が増加している実態と併せて考えると、少なくともパートやアルバイトの雇用市場では、就業する立場にある人から見て、情勢は改善していると判断して問題はあるまい。
ただし昨今では一部業種で天井感の気配も見られる。これが現状の労働市場における単なる時給の上限なのか、雇用する側の出し渋りによるものか、あるいは雇用形態においてより正社員への雇用が促進されたため、相対的に非正規雇用の需給に変化が生じてきたのか、多方面からの精査が求められよう。さらに今回月以降は新型コロナウイルスの流行が労働市場に与えている影響も生じてくるだけに、大いに留意が必要となろう。
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※公開しているデータ
発表元はリクルートジョブズ。業種別は大分類で販売・サービス系、フード系、製造・物流・清掃系、事務系、営業系、専門職系に区分されている。また地域別では主要エリア別、三大都市圏(首都圏・東海・関西)、全国の平均額などが確認できる。今記事では長期時系列のデータ取得が容易な三大都市圏の分について、全体額、さらには日常生活で見聞きすることが多くしばしば話題にも上る販売・サービス系(例:レジ、販売、コンビニスタッフ、チラシやパンフ配布など)とフード系(飲食店のホールスタッフ、ファストフードなど)、そして専門職系のうち介護スタッフに焦点を絞り、値を抽出している。
(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。
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