ついに3月1日から、NHKの地上放送テレビ番組を、インターネットで放送と同時に視聴できる新サービス「NHKプラス」がスタートした。正確には、正式サービスは4月1日から、3月1日時点は“試行的スタート”だが、実際には正式サービスと同様に使用できる。さっそくスマホにアプリをインストールし、利用登録や使い勝手を体験してみた。
サービスの詳細など、詳しい話は既に事前の体験記事や、西田宗千佳氏の連載で紹介した通りなのでそちらを参照して欲しい。ここでは具体的な利用までの流れをレポートする。
まず最初に、NHKプラスが現時点で利用できる端末は、PCまたはスマートフォンのWebブラウザ、そしてiPhone/Android向けアプリだ。ブラウザはInternet Explorerは非対応。今回はAndroid版アプリをインストールしてみた。
アプリを起動すると、ローディング画面が表示される。ここで、「放送から30秒程度遅れて配信されるので、時刻表示や時報、緊急地震速報も遅れて表示されますよ」という注意書きが出る。サイマル配信とはいえ、この点は仕方がない部分だろう。
驚くのは、起動するとすぐに放送されているNHK総合の番組がアプリに表示されるところだ。「まずはIDやメアドを登録して……」と身構えていると、いきなり番組が視聴できてしまう。何かの動画をユーザーが選択しなくても、いきなり再生がスタートするのはテレビ的な感覚で、AbemaTVアプリと同じ印象を受ける。
ただ、この状態では画面の右下に、「受信契約の状況を確認させていただきます」という趣旨のメッセージが表示される。テレビを買った時に、BS放送を表示すると「受信機設置のご連絡のお願い」というメッセージが表示されるが、あれと同じような感覚だ。正直、消さなくても番組の内容はわかるし、音声も聞けるが、やはりしばらく番組を見ていると気になって番組に集中できなくなる。素直に受信契約状況の確認をしてしまおう。
また、後述する「見逃し配信」も、受信契約状況の確認をしてログインしなければ利用できない。
確認のボタンをタップすると、アプリ内のブラウザで「NHKプラスをはじめよう!」というページにジャンプする。ここで、サービスの概要や注意事項が確認できる。
既報の通りこのサービスは、テレビ放送の補完として実施するもので、受信契約者と生計を同一にする人は、追加負担なく利用できる。1アカウントで最大5つの同時ストリーミングが可能だ。例えばお父さんが受信契約をしていたら、お父さん本人に加え、奥さん、子供、おじいちゃん、おばあちゃんも全員同時に使えるというわけだ。
登録完了までのステップは、「メールアドレスの入力」、「受信契約情報の入力」、「確認コードの入力」の三段階。ただし、最後の「確認コードの入力」はNHKからハガキが届いてから。二段階目が終われば、すぐにメッセージ無しの画面でサービスが利用できる。スマホやPCの操作になれている人であれば、10分とかからずに完了できてしまうだろう。
まず、規約を読んで同意してからメールアドレスを入力すると、NHKからメールが届く。そのメールに書かれているアドレスにジャンプして、登録作業を継続する。なお、開始初日の1日午後には、登録依頼殺到のためか、申込みが一時中断される一幕もあった。
メールのURLからジャンプした先での入力必須項目は「NHKプラスのID」と「パスワード」、そしてパスワードを忘れた時用の「秘密の質問と答え」だ。
さらに、「受信契約者氏名」、「住所」、「電話番号(任意)」、「お客様番号(任意)」の入力項目が並ぶ。この中で必須なのは「受信契約者氏名」と「住所」だけ。お客様番号を入力する部分もあるが必須ではなく、「すぐに受信契約ナンバーがわからない」、「なんだっけ?」という場合も、入力せずに登録できるので問題はない。
これらの情報を入力すると、すぐにサービスが正式に利用できるようになり、先程の画面上のメッセージが消える。使用開始までのハードルはかなり低い印象だ。
なお、前述の通り1~3週間後にNHKからハガキが届く。その案内に沿ってマイページ内の入力画面に入り、「確認コード」を入力すると、全ての作業が完了となる。期限内に確認コードを入力しないと、画面にまたメッセージが表示され、見逃し番組は視聴できなくなるというカタチだ。
画質は十分、見逃し番組配信も快適
端末はPixel 3 XLを使用したが、アプリの動作はサクサクでストレス無く利用できる。映像のクオリティは、回線速度に合わせて自動で調整してくれるが、設定メニューから手動で指定することもできる。
解像度は11.5Mbpsの場合は960×540ドット、768kbps時は640×360ドット、384kbps時は448×252ドット、192kbps時は416×232ドット。配信側で生成されたファイルが、回線品質に合わせて適切に切り替えて再生されるアダプティブストリーミング方式で、ファイル形式はHLS(HTTP Live Streaming)とMPEG-DASHだ。
画質の面では、スマホの画面で見る限り非常にキレイだ。フレームレートも十分なので、ワンセグ放送のようにカクカクしたり、「サッカーや野球のボールがどこに飛んでいったのか見えない」といった問題もない。PCのWebブラウザで表示し、PCディスプレイに全画面表示すると、さすがに人間の輪郭などに圧縮に起因するノイズがチラチラ見えるが、視聴時に不快と感じるほどではなく、十分見ていられる。
音声は2ch(二か国語、解説放送など)、字幕も配信。字幕は画面にオーバーレイするか、枠外に表示するかを設定できる。
基本的な話だが、NHKプラスで配信される番組は、地上2波の総合テレビと教育テレビ。サービス開始時は、南関東エリア(埼玉県・千葉県・東京都・神奈川県)に向けた放送を全国に、放送と同時に配信している。
なお、権利的な問題などでネットに配信できない番組は「現在放送中の番組は配信しておりません」というメッセージを、どーもくんの動きと共に表示する。
同時配信だけでなく、既に放送してしまった番組の“見逃し番組配信”もやってくれるのが嬉しいところ。放送終了時刻から起算して7日間配信される。例えば大河ドラマの場合、前回の話数が視聴できるのは、次回分の放送(最新話の同時配信)が終了するまでの時間だ。
同時配信の場合は画面右下の「LIVE」アイコンが赤に、見逃し視聴時は白で表示されるので、「これって見逃し配信だっけ?」とわからなくなる事はない。視聴中は30秒送り/10秒戻しが可能で、シークバーで任意の場所を指定して観ることも可能。使ってみると、ブルーレイレコーダーで録画した番組を再生するより、タッチで好きな場所にすぐジャンプできるので使い勝手は楽だ。
番組の検索方法は、日付から番組を探す「配信カレンダー」と、番組名や出演者から探せる「キーワード」検索、さらにNHKがカテゴリやトピックごとにまとめた「プレイリスト」を用意している。
「プレイリスト」はジャンル検索に近いものだが、「ドラマ」、「ニュース」、「ドキュメンタリー」といったジャンルに加え、「新型コロナウイルス」や連続テレビ小説の「スカーレット」など、世間の話題や、特定の番組に関するコンテンツをまとめたプレイリストも用意されている。
ネット配信ならではの機能としては、視聴している番組や、そのポイントへのリンクを、TwitterなどのSNSで投稿する機能も備えている。利用者同士ならば、「この番組の、ここが面白いから見てみて」と投稿し、それを見た人がクリックすれば、同じ場面が楽しめるというわけだ。
NHKのコンテンツの豊富さを再確認させてくれるアプリ
1日に利用できるようになってから、半日ほど使ってみたが、結論としては非常に便利だ。タイムラグはあるものの、ニュース番組をほぼリアルタイムでスマホやPCでサッと視聴できるだけでなく、見逃し配信を使えば、いつでもニュースが見られる。
そのままスマホのアプリを立ち上げっぱなしにして机の上に置いて、PC作業のかたわら、ポータブルテレビのように使ってみたが、美しい形式の旅番組や、面白い動物番組などが流れてきて、ついつい見てしまう。
興味が湧いて、他の動物番組をプレイリストで探したりしていると、東京の巨大インフラの大規模修復工事に挑む人達のドキュメンタリーなども発見。リアルタイムの放送から、見逃し番組配信へとスムーズに移動しつつ、ついつい様々な番組を見てしまった。
もともとNHKのドキュメンタリーや動物番組は好きで、興味があるものをレコーダーに録画などしていたが、最近ではYouTubeやSNSなどに割く時間が増加。テレビの視聴は時間はガクッと減り、「ネット上で話題になっている番組を後から見てみる」というパターンも増えている。
NHKプラスの登場により、スマホやタブレット、PCのディスプレイの中に、NHKの放送を表示しやすくなる。これにより、テレビから離れていた人も、NHKのコンテンツの面白さを再確認する機会になるだろう。SNSなどとの親和性を高めるためにも、アプリに対しては、放送画面を小画面表示し、SNSやWebブラウザと同時に表示できる機能も追加して欲しいところだ。
いずれにせよ、NHKプラスのスタートは、テレビ史における大きな転換点だ。民放もTVerなど、見逃し配信を強化しているが、サイマル配信も盛り込んだNHKプラスと同様のサービスをぜひスタートして欲しい。放送と配信、経路の種類を意識せず、コンテツの面白さだけで競い合う時代が見えてきた。
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March 02, 2020 at 05:30AM
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