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Wednesday, April 27, 2022

Cross talk: 山中拓也×SKY-HI ―個人のやりたいことを表現する時代の中でー - EYESCREAM

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THE ORAL CIGARETTESが4月27日にFeaturing EP『Bullets Into The Pipe』をリリースする。本作は各楽曲にアーティストがフィーチャーされており、バンドを取り巻く関係性も可視化できる内容になっているのだが、人気曲「カンタンナコト」にSKY-HIが参加。このコラボレーションは2019年9月にTHE ORAL CIGARETTESが開催した野外イベント「PARASITE DEJAVU」で初披露されており、そのライブ映像が現在進行形で人気を博している。今回は、このフィーチャリングを巡って、2人の関係性や表現に対する現在の姿勢について話し合ってもらう。
 

ライブで披露した「カンタンナコト」をよりカッコよく楽しいものに

ーSKY-HIさんが参加されている「カンタンナコト」は2019年9月にTHE ORAL CIGARETTESが主催した野外イベント「PARASITE DEJAVU」のステージで披露されたものですね。どのように制作を進めたんですか?

 
山中拓也(以下、拓也):あのとき、ライブでやろうとなったときは、完全に(SKY-HIに)投げっぱなしだったんですよ。なので、当時どうだったのか話してもらっていいですか?
 
SKY-HI:はい、お任せください。あのとき、拓也とも「なんか一緒にやろうよ」って話をしていたんだよね。それで、やるならオーラルの既存曲に乗っかる形がいいなと思っていて「カンタンナコト」が合いそうだなって。本当に、それぐらいライトなノリでコミュニケーションを取りながら、「PARASITE DEJAVU」のリハをやっているオーラルのところに行ってラップを乗っけたよね。せっかくだから、平メロのところも掛け合いを入れようよ、なんて話をしてね。それが<「うざったい。」>のパートで……。いや、待って。あれは「PARASITE DEJAVU」の本番で、いきなりやったんだっけ?
 

 
拓也:あれは本番でやな。
 
SKY-HI:そっか! あそこは普通に歌う予定だったんだけど、拓也に急に振られたからだ。
 
拓也:アドリブで振ったからな~(笑)。合わせたのもそのリハ1回で、「カッコいいからいいんじゃね?」って感じだったよね。
 
SKY-HI:うん、当初は演奏自体は変更しない予定だったんだけど、2回目の間奏に合わせたラップパート終わりで演奏も揃えようとか。そんな感じで約1時間くらい楽しくやり取りしながら出来たんだよね。わりとセッション感があった記憶がある。
 
拓也:最初にSKY-HIのラップを聴いたときに、もう充分カッコいいから、このままやれるなって思った。ただサービス精神がすごいというか。ここまでしっかりとやってくれるなんて思ってなかったし、自分の曲のリリックからの引用も絶妙に入れてくれたでしょ?  オーラルとSKY-HIの融合感もしっかり出せていて、すごく面白いと思った。「カンタンナコト」にラップがどうハマるんだろうって不安が一気に安心に変わった瞬間がリハの1発目だったし、そうしてくれたSKY-HIはすごいなって。
 

ーSKY-HIさんの曲からの引用というのは?

 
SKY-HI:「カンタンナコト」と近い時期に同じようなコンセプトを持った楽曲をリリースしていたんですよ。BPM、内容、フロー、すべてがハマりそうだったから入れていったらやっぱり噛み合ったという感じです。リリックって書いている時代のムードに左右されていくものじゃないですか。だからこそ、そういうことが実現できたんだと思います。既存のものを掛け合わせたんじゃなくて共通するバイヴスがあったからハマったんでしょうね。あと、やっていて思ったのは「カンタンナコト」の2番目のバースなんて、もともと掛け合いに向いているように作られていたから実は拓也が作曲しているときに掛け合いを想定していたんじゃないかな? なんて。深層心理ではそうだったんじゃない?
 
拓也:そうだったら未来見え過ぎやろ(笑)。
 
SKY-HI:いやぁ、見えてたなー未来。
 
拓也:だって、まだ仲良くなる前だよ?
 
SKY-HI:まだ、拓也がオレに敬語を使ってた時期だよな。「日高さんお話したいです~」ってDMくれて。
 
拓也:やめろや~(照)。恥ずいわ、その話。
 

ーその話を深く聞きたいところですが、このタイミングでコラボの「カンタンナコト」を作品にしようと思ったのは、なぜなんですか?

 
拓也:「PARASITE DEJAVU」でのライブムービーをアップした後、ずっと再生回数が伸び続けているんですけど、それって珍しいことだと思うんです。それだけ待っていて求めている人たちがいるわけだし、時が経つにつれて、そういう人たちが増えているってことなんだろうってすごく感じていたんですよ。だから、今作のレコーディングでは、期待を超えるカッコいいものにしようって気持ちで臨んだし、2人で新しいアイディアも話し合いながら、さらにカッコいい新しいものにしようって。そんな話をSKY-HIとしながら、改めて曲として構築していったんです。もちろん、ライブで披露したバージョンを大切にしながらですけどね。
 

自由に色んな形の音楽が生まれる時代

ー今回の「カンタンナコト feat.SKY-HI」はジャンルで考えるとロックとHIPHOPがクロスオーバーされた楽曲です。こういったアプローチは80年代後半から00年代初頭にかけて頻繁に見受けられましたが、ロックバンド×ラップと聞いて、2人がパッと思い出すアーティストは誰ですか?

 
拓也:オレは完全にドラゴン(Dragon Ash)、つまりKJさんですね。あの世代のミクスチャーロックは自分がキッズだった頃に繰り返し聴いていた音楽でもあるんですけど、今もリスペクトしているし、自分の中に色濃く残っているんですよ。あとは、やっぱりLINKIN PARKが出てきたときの衝撃は忘れられないです。もうカッコ良過ぎて、絶対に勝てないだろって思ったのを覚えています。ロックとHIPHOP、この2つの音楽のクロスオーバーは長い時間で見れば、何周もしているものでしょうけど、今の自分なら、どう現代流儀にアップデートさせることができるだろうっていうことを考えるのはすごく大切なことだと思うんです。
 
SKY-HI:そうだよね。まぁ、オレに関して言えば、ジャンルのクロスオーバー感については、あんまり気にならなくて。というのも、中学生の頃からバンドやってラップやってダンスやってって感じだったし、仲が良かった友達もジャンルで音楽を捉えるような人が少なかったからね。当時、LINKIN PARKもそうだし、Limp BizkitやRage Against the Machineだとか、当たり前にラップがロックに乗っていてさ。Sum 41もそうだったでしょ? HIPHOPも黎明期にロックがネタになってるものは少なくなかったし。Beastie Boys然り、Public Enemy然り。Run-D.M.C.もだよね。ロックもブラックミュージックの1つだし。そういえば大学の頃はブラックミュージック研究会っていう団体に所属してたりもしたから。
 
拓也:何それ。名前からしてやばい会だね。
 
SKY-HI:そのサークルの先輩にはRHYMESTERもいるんだよ。
 
拓也:えぇー! 名前通りやばい会じゃん(笑)。
 
SKY-HI:そこで、もとを辿ればロック、ソウル、ファンク、全部繋がってるんだなって18、19歳の頃には思うようになっていたし、ロック×HIPHOPだから注目するというものではないんだなって、すごく思ったんだよね。この間も拓也と話したけどさ、オレが1番好きで聴いていたのってPharrell Williamsだし、じゃあN.E.R.D(ファレルが在籍しているHIPHOPグループ)を今、聴いてもジャンルって何? ってなるよね。
 
拓也:パンクも入ってるし、みたいな?
 
SKY-HI:そうそう。N.E.R.Dはサマソニにもフジにも観に行ったけど、ロックと言えばロックだしーーーっていうね。そういう考え方だから、わりとロック×HIPHOPってところにナチュラルなわけですよ。自分がライブやるときに、演奏を極力バンド形式でやりたいっていうのも思うしね。
 

ーなるほど。確かに今のユース世代が表現している音楽を見ても、ごく自然にジャンルを意識せずバンドとラッパーが共作し合っている現状がありますよね。その辺り、若いアーティストが音楽をフレキシブルに表現しているということに共感する部分はありますか?

 
SKY-HI:ありますよ。KMくん(ビートメイカー)に関しては同い年ですからね。同世代でSum 41やGreen Dayのライブでモッシュに巻き込まれていたような人間が作るトラックはすごく共感するものがある。LEXとか(sic)boyも超フラットに音楽を捉えていますしね。それを見ていて純粋にいいなーと思うし、オレはこういうことをやれていなかったからやってみようとも思う。パンクをサンプリングしたトラックでラップしているヤツもいて、そういうのを聴くと悔しさも感じる。U.S.の面白そうなプレイリストを聴けば、上音はディストーションがかかったギターでドラムはHIPHOPを通過した音でっていうのも、めっちゃ増えてるじゃないですか。トレンドの1つになっている。もう、とにかく色んなところに色んな形の音楽が有機的に生まれている気がして楽しいですよ。
 
拓也:ロックシーン的なところで見るとどうなんだろう。若いアーティストはオレらの世代よりも海外の影響を強く受けているようなイメージはありますね。たくさんの音楽を手軽に聴ける時代だし、昔よりもカンタンに自分でトラックを作れるわけじゃないですか。だから、よりそういう部分への探究心みたいなものが、下の世代のバンドの子と話していても感じる。そういう海外の潮流をバンドに取り入れて、うまくオーバーグラウンドで活動できているバンドって、オレらの世代には少ないんです。SKY-HIの視点とは異なるシーンの話だけど、ロック×HIPHOPって実は周りにあんまりいないなって。
 

「カンタンナコト feat.SKY-HI」はロック×HIPHOPの新たな形ではない

 
SKY-HI:GENちゃん(04 Limited SazabysのVo&Ba)があっこゴリラの曲でラップしているっていうのはあったよね。あ、でもバンドじゃないか。

※あっこゴリラの楽曲「GOOD VIBRATIONS」GENとの共作。2018年リリース

 
拓也:そうだね。ただ、そうなったのってオレらの環境も影響していると思うんですよね。数年前にギターロックが多くのリスナーに受け入れられて、フェスでもそういうバンドが数多く出演している時代の中で、ロックはマスな存在になっていって。そうやって大衆性が増していったことで、HIPHOP勢から、ロックバンドはちょっとダサいと思われてるんじゃないかっていう劣等感みたいなものを、オレも正直感じていた部分があって。
 
SKY-HI:ああ、変な被害者意識みたいな?
 
拓也:そうそう。HIPHOPのアーティストには認めてもらえないでしょっていうのは何となく感じていて。ロックに大衆性があることが原因なのかなって考えてたんだけど、結局コロナ禍になってシーンというよりも個人で向き合うことが重視される世の中になったじゃない。
 
SKY-HI:そうだね。ロックはロック、HIPHOPはHIPHOPでっていうのがなくなったんだよね。
 
拓也:その瞬間に、やっぱり根本は一緒じゃない? ってなったよね。やっぱりロックやパンクはカッコいいよなとか。オレらもHIPHOPが持つカッコ良さに改めて気づけたりとか。まるで学生時代に戻ったように、「この音楽めっちゃカッコよくない?」ってロックとHIPHOPの話を自然に並列的にできるようになったのが、オレ的にはめちゃめちゃデカかったんだよね。「ENEMY feat.Kamui」もそうなんだけど、カッコいいと思っているものが一緒なら手を組んで一緒にやっちゃおうってことが出来ているっていう。その大衆性を帯びたか帯びていないかってめちゃめちゃ大事な気がしていて、色んな物事がコロナ禍の中でフラットになった感覚があった。


 
SKY-HI:その感覚はあるよね。大衆性って意味でいくと、日本ではHIPHOPは世間的な認知を得ることに成功したい時代が10年以上あって。オレはその時期に日本のHIPHOPを聴きまくっていたんだけど、どうもシーンを盛り上げようとか、シーンって言葉が枕詞のように出てくるときって、時には危うい、良いものにならないことが多い気がしたんだ。それよりも、各々が好きなように頑張って好きなようにカッコいいことをやって、好きなことをやる中でリンクしていって、という循環が出来た方が、結果的にシーンに還元されていくというか。シーンが活性化することありきで音楽をやるのは、逆にカルチャー的じゃないように感じる。そもそもサウスブロンクスでブロックパーティをやっていたヤツらがHIPHOPを広めようというスローガンが前提でやっていたら、今こういう状況になっていなかったと思うしね。本当に内輪ノリで自分たちが最高にカッコいいと思うことを友達と好き勝手やって表現していくっていうのはなくしてはいけない気がする。それを突き詰めると個対個なんだろうなと。
 

ー最後に。今後一緒にやってみたいことはありますか?

 
拓也:うーん。SKY-HIは、近くで見ていると、『この人はこういうことをどんどんやって、自分で作り上げていくものがあるんだろうな』っていうのが肌で感じられるんだよね。こうして一緒にいれるのも、お互いの感性が重なり合う部分があるからだろうし、縁があるってことだろうし。お互いに自分が作りたい道を作っていって、「おっ、気づけばここまで来たな」って笑いながら言い合えている未来を作れるのが1番理想的だと思う。オレは、今周囲にいて理解し合えている人と、より色濃く関わって行って、人生をどう歩んでいくのかを考えるのが重要だと思っているんだよね。4月27日にデジタルリリースするEP『Bullets Into The Pipe』は、そう思っている人に参加してもらっているし。聴いてくれる人にも、そういう思いがあることが伝わればいいなって考えているし、SKY-HIとも、これから一緒にやりたいことを見つけていければいいなって。そういう作業をこれから自分はやっていくんだと思う。
 
SKY-HI:その通りだね。やりたいことっていうよりも、やれることを増やす方が正しいのかなって気がする。たまたまツアー先が被ったから、ちょっとライブに出してもらいました、みたいな形の方が良い気がするよね。この対談を経て、メディア的には、ロック×HIPHOPの新しいカルチャーを……ってことを書きたいと思うんですけど、それは正しくないかな。
 
拓也:そういうこと言っちゃうの?(笑)。
 
SKY-HI:だって、ロック×HIPHOPでやっているっていうよりかは、オーラルの拓也×オレで、やれることの最大公倍数を追究していった方が楽しい気がするから。お互いにやりたいことをやっていたら、被ってくる部分も出てくるし、そのときにイーブンな立場で協力し合うって関係が良いと思う。もちろん「PARASITE DEJAVU」を見ていると、あれを実現できるのはすごいと思うし、それを受けて、自分だったら何をするかなって考えるし。やったら楽しそうなことをいっぱい実現化してったら、自ずと一緒に何かをやってるパターンが増えていくんじゃないかな。だから、拓也は拓也で勝手に楽しいことをやって、オレはオレで勝手に楽しいことをやって。面白そうな場所でお互い行き来できるようになれば、もっともっと楽しくてカッコいいことが実現できるようになるよ。
 

ー2人とも、まさに個人としての発信にフォーカスしながら純粋に表現していく、と。

 
SKY-HI:Yes, Personality!
 
拓也:あはは! それで対談をしめるんや(笑)。

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