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Tuesday, April 5, 2022

<ぱらぱらじっくり 教育に新聞を>切り抜きコンクール 受賞作から(5)デジタル新聞も賢く活用 - 東京新聞

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 紙の新聞のスクラップでつくられ続けてきた新聞切り抜き作品のコンクールで今回初めて、デジタル新聞(東京新聞電子版)の記事を部分的に使った作品が高校生の部の優秀賞に選ばれた。紙とデジタルの双方の長所がうまく生かされている。コンクールを運営する東京新聞読者部は、2022年度の第19回コンクールでは「紙の切り抜きを主とした上で東京新聞電子版を補完的に使うのならOK」と応募ルールを変更する。

 電子版を一部に使ったのは香蘭(こうらん)女学校高等科二年=応募当時、現在は三年=の酒井杜子(とうこ)さん(18)。ミャンマーで起きた国軍のクーデターで民主主義がもろくも損なわれていったことに心を痛め「気づいている? 自由という宝物〜ミャンマーからのメッセージ」という力作にまとめた。

一部に電子版から取り出した記事が使われた酒井さんの作品

一部に電子版から取り出した記事が使われた酒井さんの作品

 作品全体では二十五点の切り抜きを使ったが、このうち十点が電子版から取り出した記事。プリンターで印刷したものを貼り付けた。

 酒井さんは、最初から電子版を使うと決めていたわけではなかった。中田奈穂美教諭の指導で切り抜きを始めたのが二年生の春。地道に新聞を読むよう心がけ、記事スクラップをため続けた。

 ところが冬休み。作品をまとめようと記事を読み込んでみて「ミャンマーでクーデターが起こった(二〇二一年)二月の記事がない」と気づいた。切り抜きを始めた春の時点で、クーデターの発生当初のさまざまな記事はすでに掲載された後だった。

 どうしたら二月の記事を集められるか調べてみると、電子版が役立つとわかった。自宅でもともと東京新聞を購読していたため、月にプラス二百円で電子版が読める「Wプラン」を申し込んだ。過去記事検索機能を使って二、三月の記事を取り出したほか、気になっていた中国関係の記事も簡単に見つかった。こうして思い通りの切り抜き作品を完成させることができた。

 デジタル新聞を使えば、短時間で欲しいテーマの関連記事を入手できる。しかし酒井さんは、実際に使ってみて違和感も覚えたという。

検索すれば探したい記事を素早く見つけることができる。しかし重要な記事がどれかは、タイトルだけでは判断がつきにくい

検索すれば探したい記事を素早く見つけることができる。しかし重要な記事がどれかは、タイトルだけでは判断がつきにくい

 「キーワード検索すると記事のタイトルがたくさん出てくる。それを見ても、ちゃんと新聞を毎日読んでミャンマーの情勢の流れを追っていなければ、どの記事が重要かはわからない。結局、電子版のキーワード検索だけで切り抜き作品をつくろうと思っても逆に不便なのでは?」

 そう振り返ったうえで酒井さんはこう指摘する。

 「このコンクールに取り組んで私が得られた、意味があったなって思ったのは、新聞ってこれまで全然読んでなかったんですけど、読んでみたら、ミャンマーの記事を探す中で、記事の内容だけじゃなくて『一面に載っている』だとか『記事の大きさ』とか、『掲載される頻度』とか、それらを毎日見ていることで文字ではないメッセージみたいな、そういうものも学んでいた。それも作品づくりに生かせると思うんです。紙の新聞で記事を毎日読むことのメリットは、そこなんじゃないかなって思いました」

 新聞を習慣として読むことを基本にして、ニュースをリアルタイムで把握する。さらにこんな記事が必要というときには電子版が使えると便利。それが酒井さんがたどり着いた「結論」だという。  

◆「紙」を補うものとして

 新聞切り抜き作品コンクールは、子どもたちが新聞に接して成長してくれることを願って開催してきました。

 「新聞を読む習慣」を身につけることは、主権者意識を養うことにもつながる。社会のさまざまな問題を、自分事(じぶんごと)として見つめる学びであってほしいとも考えています。

 これまで紙の新聞の記事スクラップを素材としてきた切り抜き作品の一部に今回、デジタル新聞から取り出した切り抜きが使われました。教育分野の専門家が加わった厳正な審査を経て、その作品が優秀賞に選ばれました。

 教育の情報通信技術(ICT)化が急激に進む中で、コンクールにも変化が求められているのかもしれない。そう考えさせられた現象です。

 酒井杜子さんの作品が優秀賞に選ばれたのは、デジタル新聞を使った点が評価されたからではありません。

 毎日届く新聞にできるだけ目を通すように努める。自分が大切だと思った視点で記事を幅広く読み、さらに考えを発展させていく。酒井さんの作品には、民主主義のもろさや自由の大切さについての強い問題意識があり、それが審査員の心に響いたのです。

 作品のまとめで酒井さんは「私たちにできることはまず『知ること』、そして『行動すること』だ」と、丁寧な手書き文字で記しています。

 二〇二二年度の第十九回コンクールでは、デジタル新聞の利用についてルールを変更=図参照=します。

 酒井さんは昨年二月のミャンマーでのクーデター発生の記事をあとから電子版で探しました。同じように二二年度は、今年二月に始まったロシアのウクライナ侵攻の発生時の記事を、子どもたちがあとから電子版で記事検索して読むのかもしれないと思います。 (読者部)

◆第19回コンクール ルールの変更点

 タブレットなどで読めるデジタル新聞は「東京新聞電子版」に限り、以下の注意点を踏まえ、今回は使ってもよい。

(1)紙の新聞の切り抜きを多く使ったうえで、一部を電子版の記事で補っていること。

(2)電子版から取り出した記事の切り抜きは、紙の新聞の記事本文の文字の大きさに合わせて印刷されていること。

(3)電子版は検索機能があり有利なので、紙の新聞の切り抜きだけで作られた作品のほうが審査段階では高めに評価される。

          ◇

 デジタル新聞を教育に生かす取り組みの相談や情報提供は、メールで読者部NIE担当(nie@tokyo-np.co.jp)へ。

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