中国から見た米中関係の歴史をひもとく(写真:DSom/PIXTA)
米中貿易戦争により幕を開けた、国家が地政学的な目的のために経済を手段として使う「地経学」の時代。
独立したグローバルなシンクタンク「アジア・パシフィック・イニシアティブ(API)」の専門家が、コロナウイルス後の国際政治と世界経済の新たな潮流の兆しをいち早く見つけ、その地政学的かつ地経学的重要性を考察し、日本の国益と戦略にとっての意味合いを、順次配信していく。
中国がアメリカに求めてきた「新型大国関係」
50年前の1972年2月、米中上海コミュニケが結ばれた前後から、アメリカは、中国が経済発展しつつも既存の世界秩序の一部となり、また民主主義国家となることを期待し、「関与政策」を継続してきた。そのキッシンジャー路線は目下大きく変更された。他方、1970年代初頭の「米中和解」を1つの背景として生じた、1972年9月の日中国交正常化から今年で50年。米中関係の変容に伴い、新たな日中関係が創出されるのだろうか。
中国の習近平政権は、アメリカに新型大国関係を求めてきた。これは、世界の諸問題について協調しつつ、核心的利益については相互尊重すべきだというものだ。アメリカだけでなく、ロシア、EU、あるいは日本をもその対象にしていた。中国は、オバマ政権がこの新型大国関係を「受け入れた」ものの、トランプ政権がそれを破棄し、バイデン政権で復活することを期待したが、拒否されたと見ているのだろう。歴史決議を含む2021年に習近平が発したさまざまな文書には「新型大国関係」という言葉は見られなかった。
では、中国の新型大国関係はいかに生起し、中国側はどのように米中関係を認識していたのか。
(1) 対米新型大国関係の生起とその背景
新型大国関係とは?
目下、中国は、世界におけるアメリカ一極集中が多極化に向かい、それが次第に米中二極へと進み、現在こそ「100年に一度の変動期」にあると認識している。2017年の第19回中国共産党全国代表大会(党大会)において習近平は2049年にアメリカに追いつくと述べたが、中国自身、それには30年以上を要すると見なしたように、この目標達成は決して容易な道でなく、だからこそアメリカなど大国との無意味な衝突を避け、自らが世界に躍り出るために、新型大国関係を必要とした。
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