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困難を乗り越えこの日のために頑張ってきたアスリートに贈られるメダル。表彰セレモニーは、パラリンピックでもっとも感動する場面だ。世界中から集まるフォトグラファーたちは、自国の選手が金メダルを獲得しようものなら目つきを変える。何としてでもビクトリーセレモニーで感動が伝わる瞬間の表情を撮影したい。選手が涙を流そうものなら激しくシャッター音が鳴り響く。ただこのコロナ下のご時世、選手は競技中以外は全員マスク姿だ。1日、ボッチャ個人（脳性まひBC2）決勝が行われ、杉村英孝がタイのワッチャラポンを下し、金メダルに輝いた。 ボッチャ個人で、日本選手が金メダルを獲得するのは初めて。この場に立ち会った私も杉村選手がマスクを外した瞬間、シャッターを切りまくった。それにしてもなぜ選手らはタイミングよくマスクを外すのか。 表彰式ではご存じの通り、メダルを受け取る順番が決まっている。最初に銅、銀、最後に金の順番でメダルの贈呈があり、この贈呈のあと「パラリンピックメダリストです」のアナウンスが流れる。このタイミングで選手はマスクを外す。実は、このときにスタッフがプラカードを掲げている。プラカードには「MASK OFF（マスクを外す）」。マスクを外したイラストも描かれていて分かりやすい。フォトグラファーがシャッターを切ると、その後、スタッフはプラカードをひっくり返す。そこには「MAKSK ON（マスクをつける）」。それを見て選手は再びマスクをつける。報道陣に配慮した仕掛けが垣間見える。 マスクのON/OFFを描いたイラストはメインプレスセンターや各競技会場でも見る。メインプレスセンターには医務室があり、その案内ポスターにはマスク姿の看護師と見られる人物が描かれている。ありがたいことに「早く受診が必要でしたら・・・」と、受診が必要な場合に連絡する電話番号が記されている。QRコードも表示され、スマホですぐ予約もできるのだ。ちなみに私はまだ一度もお世話になっていない。東京パラリンピックも残りわずかどうかお世話にならないよう祈るばかりだ。また、車いすラグビーの競技会場「国立代々木競技場」では、プレスセンターへの入口に「ウエルカム」と書かれたボードがある。かわいらしい折り紙で作られたお花や桜の触角と超能力を持つと言われるクールなパラリンピック公式キャラクター「ソメイティ」のイラストがお出迎えしてくれる。ただよく見てみると「PCR」の文字...。そこはPCR検査と検体の提出場所なのだ。 いつも1日の取材を終えると、日付が変わる頃に東京都中央区にある日本橋のホテルへ帰る。その道中、よく自転車とすれ違う。信号待ちをするその自転車には「Uber Eats」の文字が記されている。大きめのカバンを背負った若者は息を切らしながら信号待ちをしていた。東京都内で新型コロナウィルスの感染拡大で外食自粛が目立ち利用者は急増しているようだ。MASK ON、PCR、Uber Eats、これまで聞き慣れない横文字が当たり前の世の中になってきた。
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