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Saturday, June 5, 2021

生きづらさの悩み、助けたい 他人気にせず、思うままに 坂口恭平さん「躁鬱大学」刊行 | 熊本日日新聞社 - 熊本日日新聞

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 在熊作家の坂口恭平さん(43)が、自身が抱えてきた躁鬱[そううつ]病(双極性障害)の経験を通して見つけた気分の浮き沈みと上手に付き合うコツをつづった新著「躁鬱大学」を刊行した。悩みや生きづらさを抱える多くの人の心にも届く言葉が詰まっており、坂口さんは「悩んでいるのはあなただけではない」と希望の光を照らす。(魚住有佳)

 新著は、坂口さんがインターネット上で“開校”した「躁鬱大学」の学長として、気分の波が激しい「躁鬱人」(躁鬱気質の人)が健やかに生きる「技」を講義形式で書いている。

 テキストの柱になるのは、坂口さんが鬱の時に救われたという精神科医・神田橋條治さんの言葉だ。

 <躁鬱病は病気というよりも、一種の体質です>

 <人の顔色を見て気を使うといった平和指向型なので、他者との敵対関係には長くは耐えられません>

 こうした神田橋語録を基に、「苦手なことはせず、克服という概念を捨てる」「孤独を保ち、いろんな人と適当に付き合う」という、坂口さん流の健やかに生きる指針が次々と伝授されていく。「躁鬱人の躁鬱人による躁鬱人のための文章」とあるが、多くの人に通じる生き方の“指南書”でもある。

 コロナ禍の今、坂口さんが10年前に始めた死にたいと訴える人からの相談を受ける「いのっちの電話」は、多い日で100件を超える。その中で気付いたのは、「人からどう見られているかだけを悩んでいる」多くの人の姿。「人の目を気にして悩むのは人類の特性であり、生理現象。それをはき出すトイレが必要」と力説する。「躁鬱という自然界の波にのまれながら対処してきた僕の所作を教え、多くの仲間を助けたい」と、本著の執筆理由を語る。

 「躁鬱人」の特徴は「1人の時間を充実させられず、常に評価の基準が他人で、自分がない。最良の薬は人から褒められること」だと語る。それは、SNS上での承認欲求にとらわれてしまう現代人の姿とも重なり、「ある意味、この本はインターネット時代を生き抜くハウツー本でもある」という。

 世間の枠に収まることなく、常に拡張を続ける坂口さんの生き様には、国内外から耳目が集まり、出版や個展の依頼が相次ぐ。「僕の一番の関心は多くの人が苦しむ、おかしな社会が変わること。今はそのために新しいシステムを本気でつくりたい」と坂口さん。現在は苦しむ人たちの居場所として『坂口恭平美術館』を作る構想も進めている。

 躁鬱人は自己中心的で、すべて自分のために行動する側面があると坂口さんは言う。だが、「その自己中心的な特性を恥じず、思うままに生きて自分の要望をかなえてあげてください。きっと満足したあかつきには、人に向かって愛を与え始めるから」と肯定する。

 坂口さんにとって、小学生からの特技である人助けも「自分が生き延びる力。これまでもこれからも財産」なのだ。新著によると、本当の学問というものは、「どうやって生きのびていくのか?」を具体的かつ実践的に知り、自ら行動する一連の行為そのもの。

 「いつも自分に『今、何やりたい?』と聞いて、やりたいことをすぐ実践してみて。それがあなたの健康につながります」。坂口さんは何度も呼び掛け続ける。

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