アイルランドはダブリン出身のバンド、My Bloody Valentine(以下、マイブラ)がDomino Recordingとの電撃契約を発表し、3月よりストリーミング配信およびダウンロード販売が解禁。5月21日には新装盤CD / LPをリイシューすることが決定した。
1988年のファーストアルバム『Isn't Anything』でシューゲイザーと呼ばれるサウンドの雛形をつくりあげ、続く1991年のセカンド『loveless』でロックシーンの金字塔を打ち立てたマイブラ。それから22年の歳月を経てリリースした2013年のサード『m b v』でも、これまでと同様に革新的なサウンドスケープを展開し新たなファンを獲得するなど、ほかに類を見ない存在感を放ち続けている。
ギターミュージックの可能性を押し広げ、1990年代以降に登場したほぼすべてのギターバンドに計り知れない影響を与えたマイブラのすごさとは、いったいどういうものなのだろうか。
今回Kompassでは、PELICAN FANCLUBのエンドウアンリ、Luby SparksのNatsukiとTamio、そしてモデルでデザイナーの菅野結以という、マイブラの魅力に取り憑かれた4人による座談会を実施。その奥深い魅力について、存分に語り尽くしてもらった。
ノイズに包まれているのになぜか安心するという「胎内回帰」のような感覚を、小6にして覚えたんですよね(菅野)
―まずは、みなさんとマイブラとの出会いから教えてもらえますか?
エンドウ:ぼくが高校生の頃、ディスクユニオンが「1991年特集」みたいな小冊子をフリーで配布していたんですよ(「90年代ディスクガイド『R-90』」#001号のこと)。そこにはCurveの『Doppelgänger』や、Lushの『Spooky』などが紹介されていて。
PELICAN FANCLUB(ペリカンファンクラブ)
エンドウアンリ(Vo,G)、カミヤマリョウタツ(B)、シミズヒロフミ(Dr)からなるロックバンド。エンドウアンリによる「透き通るほど〈純度の高い声〉」の存在感と、散文詩のように描かれる「音のように響く歌詞」の世界―――。シューゲイザー・ドリームポップ・ポストパンクといった海外の音楽シーンとリンクしながら、確実に日本語ロックの系譜にも繋がる、洋・邦ハイブリットな感性を持つスリーピースバンド。ライブでは独自のスタイルで唯一無二の空間を創り出す、ロックシーンにおける「異端」の存在。最新曲“ディザイア”(TVアニメ『炎炎ノ消防隊 弐ノ章』第2クールエンディング主題歌)が配信中。
―ぼくもそれ、持っていました。Nirvanaの『Nevermind』やDinosaur Jr.の『Green Mind』、マシュー・スウィートの『Girlfriend』なども掲載されてましたよね。
エンドウ:そうですそうです! マイブラの『loveless』も当然ながら掲載されていて。それで初めて彼らの存在を知ってYouTubeで検索したら、おそらく非公式だと思うのですが“cigarette in your bed”の動画がアップされていて。それを見たときにとにかく衝撃を受けました。後半、メロディーは変わらないままリズムが倍になる瞬間がたまらなく好きなんです。なんでこんなに気持ちいいんだろう、誰がどんな顔して歌っているんだろう、どういう演奏方法なんだろうとか、いろんなことが気になりすぎて、気がついたら沼にはまっている状態だったんですよね。
My Bloody Valentine“cigarette in your bed”を聴く(Spotifyを開く)
Tamio:ぼくがマイブラに出会ったのは中2の頃。同級生のお父さんがPaint in watercolourというバンドをやっていた人で、家にたくさんCDがあったんですよ。The Stone Rosesなど、当時のUKインディーをいろいろ聴かせてもらってたんですけど、あるときマイブラの『loveless』を渡されて。それまで聴いたことのないサウンドだったのでびっくりしたのを覚えています。
Luby Sparks(ルビースパークス)
Natsuki(Vo,Ba)、Erika(Vo)、Sunao(Gt)、Tamio(Gt)、Shin(Dr)の5人組。2016年3月結成。2017年7月には『Indietracks Festival 2017』(英国ダービーシャー)に日本のバンドとして唯一出演。2018年1月、マックス・ブルーム(Yuck)と全編ロンドンで制作したデビューアルバム『Luby Sparks』を発売。2018年11月、4曲入りのEP『(I’m) Lost in Sadness』をリリースしている。2019年1月には、Say Sue Me(韓国)を招き、初の自主企画ライブ『Thursday I don’t care about you』を成功させ、10月15日にはjan and naomiをゲストに迎えたTAWINGSと共同企画『Dreamtopia』を渋谷WWWで、10月25日には、Yuckを来日させ、自主企画第二弾『Yuck X Luby Sparks 2019』をLOOPで開催。これまでにThe Vaccines、The Pains of Being Pure at Heart、TOPS、NOTHINGなど、海外アーティストの来日公演のフロントアクトも数多く務めている。
Tamio:それまで父親がオルタナ系の音楽とかあんまり聴かせてくれなくて、Led Zeppelinとか聴いていたんですよ。「ギターを練習したかったらこういう古典的なロックを聴いて、ちゃんと耳コピしろ」みたいな。なので、NirvanaやSonic Youth、マイブラはこっそり聴いていましたね。
一同:(笑)
Tamio:子どもの頃って、親に対する反抗心ってあるじゃないですか。だからマイブラを聴くことが「親への反抗」みたいな(笑)。そういう象徴として刷り込まれるかたちで好きになったところはあるかもしれない。
―マイブラは「不良のアイテム」だったんですね。
Tamio:サウンドのすごさに気づいたのは、大学生になってからじゃないですかね。ちゃんとバンドを組んで、音づくりしようと思ったらあの音になかなかならなくて。それでケヴィンの足下を写した写真を見て諦めたんですよね、あまりのエフェクターの数の多さに。でも、そこがマイブラのすごいところでもあるし、好きなところでもあります。
Natsuki:ぼくは高校生の頃は、とにかく洋楽に詳しくなりたい一心で。特にバンドとかもやっていなかったし、誰にマウントを取ろうとしているのかよくわからなかったんですけど(笑)、とにかく自分のためのインプットとしてひたすらインディーロックのCDをTSUTAYAで大量にレンタルして、容量のでかいiPodに音楽が溜まっていくのが楽しい、みたいなことをしていました。TSUTAYAの洋楽コーナーに行くと、絶対に飾ってあるのが『loveless』のピンクのジャケットだったので、おそらく自然と手に取ったのだと思います。
最初に聴いたときは、じつはあまりピンとこなかったんですよ。でも高校3年生になって、タワーレコード渋谷店の洋楽フロアで働き始めて、そこで一番仲良くなった先輩から「絶対シューゲイザーとか好きなはずだよ」と言われて。「シューゲイザーってなんすか?」みたいな感じだったんですけど、それで調べて「そっか、あれ(『loveless』)はシューゲイザーだったんだ」と。それでようやく理解できるようになりました。
菅野:私は小学校6年生のときに、姉に連れられて観に行ったよく知らないバンドのSEでマイブラの“Only Shallow”が流れていて。そこで雷に打たれたような衝撃を受けたんです。ノイズに包まれているのになぜか安心するという、小6にして「胎内回帰」のような感覚を覚えたんですよね。
菅野結以(かんのゆい)
雑誌『LARME』『with』などで活躍するファッションモデル。10代の頃から『Popteen』『PopSister』の専属モデルを務め、カリスマモデルと称される。2010年8月に初の著書『(C)かんの』を出版し、その後、最新スタイルブック『yuitopia』まで6冊の書籍を発売。アパレルブランド「Crayme,」、コスメブランド「baby+A」のプロデュースおよびディレクションを行っているほか、TOKYO FM『RADIO DRAGON -NEXT- 』、@FM『LiveFans』では豊富な音楽知識を生かしてパーソナリティーを担当している。SNSの総フォロワー数は約100万人に及ぶ。
菅野:それに、自分がいままで好きだったものが、そこで全部つながったような感覚もあったんです。「こういうことだったんだ!」って。でも誰の曲なのかもわからなかったし、当時はShazamとかもないから(笑)、一生懸命その「音」を覚えて、ライブが終わったらいろんなCD屋さんへ行って、いろんなCDを聴いて「正解」を探しに行って。「これだ!」となったのが『loveless』だったんですよね。
からの記事と詳細 ( 祝サブスク解禁、マイブラの魅力をアーティストが語り尽くす - CINRA.NET(シンラドットネット) )
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