日本学術会議の新会員候補6人が菅義偉首相から任命されなかった問題は、学術会議のあり方そのものにまで論点が拡大しつつある。9月まで会員だった本田由紀・東京大教授(教育社会学)は「菅首相は任命拒否の問題から学術会議のあり方に国民の目をそらそうとしているのではないか」と批判する。【木許はるみ/統合デジタル取材センター】
――本田さんは2014年9月に学術会議の会員になり、20年9月に6年の任期を満了しました。任命拒否の問題を発端に、政府は行政改革の視点で会議のあり方を検討しようとしています。
◆そもそも今回の問題は、学術会議で完結するはずの会員の選考に政治が介入してきた手続き上の問題です。それにもかかわらず、学術会議の活動そのものに議論がすり替えられています。仮に会議のあり方に問題があったとしても、まったく切り離して考える必要があります。
――本田さんも会員の推薦に関わっていますが、任命拒否をどう感じましたか。
◆候補者は長い選考過程を経て推薦されています。政権はそれを覆しました。学術的基準に基づいた推薦を、学術に携わったこともない政権が勝手に判断するのは、明らかに不当です。理由を説明できていません。6人が任命されていれば、学術会議で果たせた役割があったはずです。政権は6人からその権利を奪うとともに、国民がその方々の活動から得られていたはずのメリットも奪いました。
――菅首相は「総合的、俯瞰(ふかん)的な活動を確保する観点から判断した」と言っています。
◆「総合的・俯瞰的」は、03年の政府の総合科学技術会議の資料にある表現です。学術会議のあり方を検討した資料に「総合的、俯瞰的な観点から活動することが求められている」と書かれています。また、「日本学術会議の新たな展望を考える有識者会議」が15年3月に出した提言に「自らの専門分野の枠にとらわれない俯瞰的な視点をもって向き合うことのできる人材が望ましい」とあることも根拠とされているようです。
しかし、6人が「総合的・俯瞰的」に抵触する理由は説明されていません。なぜ6人が他の人と切り離されて任命されなかったのか。菅さんの「前例を踏襲していいのか」というインタビューでの言葉は、新鮮味があるように聞こえますが、法律を踏まえてこれまで受け継がれてきたやり方に反することをするなら、しっかりとした説明が必要です。
――菅首相は学術会議の選考方法の課題や予算にも触れていました。
◆菅さんは「現在の会員が自分の後任を指名することも可能な仕組み」と言っていました。とても誤解を招く発言だと思います。実際には、会員が自分の分野から優れた研究者を推薦します。大量の候補者が推薦されるので、私の所属した分野では投票で候補者に優先順位をつけていました。そ…
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