芸能界屈指の競馬好きとして知られるお笑い芸人・麒麟の川島 明さんと同じくお笑い芸人・千鳥のノブさんに、“おうち競馬”の楽しみ方を指南していただく短期集中連載。今回は、トークエンジンもすっかり温まってきたところで、川島さんとノブさんの競馬にハマった“原体験”や“泣けるMBR(マイ・ベスト・レース)”について湿度たっぷりに語っていただきます。 海外ドラマもマンガも競馬も! おうちで楽しむエンタメ一覧
今回のテーマ/競馬は大河より壮大なドラマ!
編集部:お2人は、そもそもどんなきっかけで競馬にハマったんでしょうか? 川島:そこきましたね。では私からいかせていただきます。そもそも実家が京都競馬場から原付で15分の距離にありまして、親類に競馬好きな人が多かったので昔から身近なところにはあったんですけど、いちばん大きな出来事は1993年の暮れのことです。大掃除している横でテレビから「有馬記念」(※1)が流れてきたから「なんやろうな~」と何気なく見ていたら、怪我を克服して1年ぶりにレースに出場した「トウカイテイオー」(※2)という馬が11番人気から優勝しまして。すると騎乗していた田原成貴ジョッキーが号泣しながら「本当にこの馬には感謝しかないです」とインタビューに答えたんですよ。 (※1 毎年12月末に中山競馬場で開催され、シーズンを締めくくる国民的G1レース。人気投票で出走馬が決まる) (※2 1991年のJRA年度代表馬。G1は同年の皐月賞と日本ダービー、92年ジャパンカップ、93年有馬記念を制覇) 編集部:競馬史に残るあの“トウカイテイオー奇跡の復活”ですね! 川島:いやあ、あのシーンを目の当たりにしてですね、「競馬って人がこんなに泣くくらい、そしてこんなに大歓声が起きるくらいすごいスポーツなんや!」と思ったんです。それまで競馬にはちょっと怖いイメージもあったんですけど全部吹き飛びましたね。そこからです、兄と一緒に競馬中継を頻繁に見始めたのは。 ノブ:さすが、歴史ありですねえ。 川島:麒麟・川島、14歳の頃です。で、その次の年に「ナリタブライアン」(※1)というこれまたとてつもない三冠馬が出てきたことによってさらにハマりまして、「一回どうしても競馬を生で観たいねん」と親戚のおっちゃんにお願いして京都競馬場に初めて連れて行ってもらったんです。そこで目にしたのが「エリザベス女王杯」(※2)を制した「ヒシアマゾン」(※3)。もう一目惚れでしたね。それ以来、同級生が広末涼子さんとかのポスター貼ってる中で僕の部屋はヒシアマゾンだらけになりましたから。 (※1 1993年から94年にかけて怪物的な強さでG1、5連勝を達成し、時代の寵児に。94年JRA年度代表馬。臆病な性格であったためシャドーロール〈下方の視界を遮るための矯正馬具〉を装着し始めてから一気に才能が開花。“シャドーロール”の怪物という愛称で親しまれた。同じく現役最強馬と言われるアーモンドアイもシャドーロールを装着している、) (※2 唯一3歳馬と古馬が集う牝馬限定G1はその年の女王決定戦の様相を呈す。今年は11/15に京都競馬場で開催) (※3 アメリカ生まれの逆輸入牝馬として94年に大ブレイク。牡馬顔負けの勇ましい走りはまさに“女傑”そのもの) ノブ:それは同級生と話が合わんわ~!(笑) 川島:うん、全く。なんならいまだに机の上に“彼女”のブロマイド飾ってあります(笑)。ヒシアマゾンこそ僕の初恋の女性ですから。ノブはどんな感じ? ノブ:僕は川島さんとほぼほぼ同年代で、それこそ若手の頃に当時大阪にあった「baseよしもと」という劇場で川島さんと麒麟の田村さんが「今日『ディープインパクト』(※)が走るで」とかって話しているのを聞いていたりもしたんですけど、そのときはまだ競馬に全然興味がなくて、おじさんがするものっていうイメージでした。で、ある土曜日に「うめだ花月」で出番を待っていたときに先輩芸人である「へびいちご」の島川さんが…… (※ デビューから引退まで武豊との名コンビで知られ、2006年に日本調教馬初の世界ランキング1位に輝いた2000年代屈指のスーパースター。G1通算7勝、全戦績も14戦12勝〈1着を外したのはハーツクライに敗れ2着となった2005年の有馬記念、失格となった2006年の凱旋門賞の2戦のみ!〉。その功績を称え、ディープインパクトが重賞初勝利を収めた弥生賞が2020年、弥生賞ディープインパクト記念と改称された。) 川島:ちょっとノブさん、バイラでへびいちご(※)さんはなかなか渋いです。 (※ 大阪NSC9期生。過去には同期のナインティナインらと吉本印天然素材としても活動していた) ノブ:すみません(笑)。でもそのへびいちごの島川さんがですね、11万円くらい競馬で勝ったからというので僕と大悟とそこにいたもう1人に1万円ずつお小遣いをくださったんですよ。それでせっかく競馬でいただいたお金だから競馬に使ってみようと思って、次の日、学園祭に出演する前に「WINS」(※)に寄って、何の予想もせずにメインレースで自分が好きな5つの番号を組み合わせて5頭のボックス買いをしたらドンピシャできて。なんと1万円が29万円になったんですよ。もう自分でも「えーっ!!」って。だから僕も学園祭の楽屋に一緒にいた大悟やノンスタイルに1万円ずつあげました。それ以来、毎週馬券を買うようになりましたね。だからへびいちごの島川さんのおかげです。 (※ JRAの場外勝馬投票券発売所の略称。銀座、後楽園、渋谷、新宿など都内中心部をはじめ全国各地に41箇所。新型コロナウイルス感染拡大防止のため、6月28日(日曜)まではWINSも閉鎖。) 川島:へびいちご様々やん! ノブ:そうなんですよ!まあそこからいろいろと勉強するようになって、近年ようやく川島さんと競馬のことをしゃべれるようになった感じです。なので僕は超遅入りです。 編集部:ちなみに川島さんが競馬にハマり出した頃は年齢的に馬券が買えなかったと思いますけど、どういう風に楽しんでいたんですか? 川島:高校の頃なんかは馬券が買えない代わりに勝手に競馬新聞を作って7部ほど発行してました。当時「ダビスタ」(ダービースタリオン)というファミコンソフトが流行っていたこともあって同学年に競馬好きが7人ほどいたので彼らに配る用に。予想やコラムを買いて、ローソンに行ってコピーしてっていう。お金を賭けなくても夢中で楽しんでましたよ。で、20歳を超えてからはすぐ芸人になって一気にお金がなくなったんで、そこからは週に1000円くらいだけ買うようになっていった感じですね。 ノブ:そうなんですよね。今もし馬券を買えなくなっても、競馬新聞とか雑誌を読み漁りながら馬のヒストリーとかを掘り下げるだけでも最高に楽しいんですよ。 川島:そうそう。ドラマ好きな人はハマれると思います。例えばあのアーモンドアイだっておそらく来年あたりには子供を産むわけですから、馬の歴史が大河ドラマのようにずっと繋がっているんですよね。だから競馬はギャンブルである前にロマンなんですよ。 ノブ:ロマンがなかったらここまでハマってないですよね、きっと。漫画で言うとドラゴンボールに近いものもあるというか。 川島:孫悟飯の娘のパンが出てきた! みたいなね。競馬こそ、いつ何話から見ても面白いドラマやと思います。だから僕は浮気ができない。競馬以外は一切ギャンブルやりませんし、熊本に行っても馬刺しを食べられなかったですから(笑) 編集部:ちなみにお2人の競馬歴で最も印象に残っている“ドラマな競馬”を1つ上げるとしたら? 川島:それはありすぎて悩ましい! ノブ:いやあ、これは難しいですねえ。 川島:う~ん、1つに絞るんやったら……僕は2013年の「日本ダービー」(※1)の「キズナ」(※2)で! 競馬を知らない人でも武豊さんという天才ジョッキーの名前はきっとご存知ですよね。「オグリキャップ」(※3)から「ディープインパクト」まで歴代の伝説的な名馬たちと一緒にタイトルを取りまくってきた武さんですが、決して周りがイメージするほど順風満帆ではなくて、落馬して怪我したりスランプがあったりというのを経て当時は「もう年齢的にも昔のような騎乗はできないんじゃないか」と言われていた時期で、そんなときにキズナという馬と出会ってもう一回のし上がっていくんです。あの日本ダービーの勝利はその集大成的なレースやと思っています。今でも酔っ払うたびにそのレース動画を見て涙しますね。毎回「あかん、これは(先頭に)届かんのちゃうか!」ってドキドキしながら。まあ絶対に届くんですけどね(笑) (※1 正式名は「東京優駿」。1932年創設の日本最古のG1で皐月賞、菊花賞とともに牡馬クラシック三冠と呼ばれる) (※2 父がディープインパクト。同馬にも騎乗していた武豊騎手は史上初めて日本ダービー“親仔制覇”を実現。川島さんのマイ・ベスト・レースである2013年の日本ダービーをキズナで勝利した際には、東京競馬場に詰め掛けた約14万人による「ユタカ」コールが。競馬史に残る、名シーンとなった。) (※3 1987年~90年にかけて圧倒的な存在感で第二次競馬ブームを牽引した競馬史のトップレジェンド。強さはもちろん、芦毛〈灰色のような毛色で、歳を重ねるにつれ白っぽく変化していく〉の馬体や、地方競馬から中央競馬への転入など、レース以外にもキャラクターやストーリーなど魅せる要素が詰まった名馬であった。) ノブ:その“絆”的な流れに乗ると、僕は川島さんと一緒に中山競馬場に観に行った2013年の有馬記念ですかね!「オルフェーヴル」(※)というめちゃくちゃ強かった牡馬の引退レースだったんですけど、彼はとにかくじゃじゃうまで、その日もパドックから出走直前までずっと暴れまくってて。そんなオルフェをなだめようと池添謙一ジョッキーが本当に優しいタッチでポンポンポンと身体をたたくんですよ。それを見て「そりゃあ馬だって人間と同じで腹立つこともあるよなあ」って思いましたし、そんなオルフェを温かく包み込む池添さんの振る舞いにもうグッときちゃいました。そして最後は勝ってしまうというね。「これが人馬一体というやつか!」と。やっぱり競走馬と騎手の絆は特別なものがありますよね~。 (※ 2011年に牡馬クラシック三冠を制し、有馬記念は2度制覇。フランスの由緒ある凱旋門賞でも2度、2着に。) 編集部:まさに、女性の萌えポイントですね! 取材・文/徳原 海 企画/倉田明恵<BAILA>
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June 28, 2020 at 10:14AM
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