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Monday, June 8, 2020

アパレル販売員の新しい働き方、“フリーランス販売員”mikaiさんの仕事術 - WWD JAPAN.com

 ショップスタッフのマッチングサービスとして、2019年1月からサービスをスタートさせた「メッシュウェル(MESHWell)」。昨年末の時点で登録者数は500人を超え、19年12月の月間マッチング数は300件、年間では1200回以上になった。約4300時間の勤務時間を提供し、中には月収50万円を稼ぐ販売員も現れている。国内で販売職といえばメーカーや小売店、あるいは派遣会社に所属して働くのが一般的で、いまだにフリーで販売職をしている人は一握りといっていいだろう。ちなみに海外では優秀な販売員はフリーランスで働くという実例もある。今回はメッシュウェルで活躍しているフリーランス販売員にインタビューし、まだ謎が多いフリーランス販売員の働き方や接客術などを聞いた。

―新型コロナで自粛期間中はどんなことをされてましたか?

mikaiさん(以下、mikai):それまで忙しかったメッシュウェルのスケジュールがほとんどなくなったので、自宅でイラストを描く仕事や以前から興味のあった動画配信の準備をしていました。先々の不安もありましたが、自分を見つめるいい機会になりました。

―通常の働き方を教えてください。

mikaiさん:勤務しているのはセレクトショップが多いです。一日を時系列で追うと、午前中に新宿にあるセレクトショップに入り、お昼ごろに上がって移動して、14時からは六本木の別のセレクトで勤務する、というような感じです。エリアでは新宿、銀座、六本木が多いですね。まれに同じ日に新宿で別の店舗で勤務することもあって、そのときには1店舗目で接客したお客さまが2店舗目にも来店されて「何でいるんですか?」と驚かれました(笑)。

―給与は?

Mikai:基本的にはメッシュウェルのサイトに自分の働きたい時間帯と時給を出しています。それを見てショップから依頼が入るという流れなので、働いた分だけ稼げるという方式です。複数店舗で勤務するときは移動距離に応じて、勤務時間帯を少しだけずらしていただけるように相談しています。多いときには朝昼晩で3店舗で働くこともあり、銀座と六本木を往復したこともありました。同じメッシュウェルを通じて働いている方でも、私のように3店舗を周る方もいれば、隙間時間で働く方もいて、皆さん違う働き方をしています。

―1日に違う店舗で3回も勤務となると体力も必要ですね。それに新宿で出会ったお客さまはさぞかし驚いたでしょうね(笑)。そうすると服装とかはどうされるのですか?

mikai:同じものでも問題なさそうなショップの場合はそのままですが、テイストが違うときは持っていくこともあります。制服が用意されている店舗もありますし、あとはアクセサリーやシューズ、メイクを変えています。基本的にはどの店舗に立っても違和感がないようなスタイルを心がけています。

―ということは、その日のスケジュールはある程度ご自身で調整されるのですか?

mikai:そうですね。場合によっては前日に決まることもありますが、基本的にはその月の頭にはスケジュールが決まっています。特に繁忙期は1カ月前にはスケジュールがほぼ埋まってしまいます。

―では店頭ではどんな仕事されていますか?

mikai:基本的には接客以外の業務はしないことになっていて、接客だけに向き合って仕事をしています。

―そうなんですね。さまざまなエリア、ブランド、ショップで働けるのは楽しいですか?

mikai:そうですね。地域によってもブランドによっても客層は変わるので、それを肌でダイレクトに感じられるのは企業に所属する販売員ではできない体験だと思います。学生時代にアルバイトで販売をしていたのですが、その時点で企業に所属して販売の仕事をすることが性格的に合わないと自分でも感じていたので、その後グラフィックの仕事やECの仕事、オンラインスタイリングなど、いろいろやってきたことを生かしながらこういう形で仕事ができるのはうれしいです。少ない時間ですが店頭に立ち、接客して、お客さまに喜んでいただけて、ショップからも評価していただけることで、自分を肯定的に捉えられるようになりました。

―フリーランスで販売をするまでの経緯は?

mikai:大学時代に販売のアルバイトをしていた頃はどちらかというと接客よりも服そのものに興味があり、接客業は向いていないと思っていたんです。

―過去の取材でも服が好きでこの仕事をしているタイプの方がいました。

mikai:例えばOL層に人気のファッションビルでは、単純に服が好きで買いに来たというお客さまより、用途があって探しに来た方や何となく服が欲しいという方の方が主流で、接客しても話が合わないなと思うこともありました。それでも服が好きな方が来ることがあって、そのときは盛り上がってましたね。今は自分に似合うものを探しに来ているお客さまを接客することにも面白さを見出すことができるようになっていますが。

―その後、大学卒業してからは?

mikai:いろんな仕事をしていたのですが、今につながるのはECサイトの商品撮影の仕事です。スタイリングから撮影までを任されたのですが、そこで服を自分以外の誰かにスタイリングすることの楽しさに気が付いたんです。とはいっても、スタイリストになるのは違うと思って、次に始めた仕事が大手通販サイトのオンラインスタイリングでした。

―もしかして、あの1年で終了したサービスですか?

mikai:そうです。でも、そこでの経験が今でも一番役に立っています。特に自分がなぜこのアイテムを選んだのか、お客さまからのオーダーを踏まえて伝わるように言語化しなくてはいけません。さらには、そのアイテムをどうやって着て欲しいのかも言葉で伝えるので、だいぶ鍛えられました。お客さまに分かりやすく伝えるために、パーソナルカラーや骨格診断とか、そういった資格の知識も勉強しました。

―顔が見えない分、説得力のある知識と文章力を要する仕事だったのですね。

mikai:オンラインは文字だけのやり取りなので、顔が見えない分、お客さまも要望をズバッと書いてこられます。任意ですが返品理由も書いてこられるので、私たちはそれも確認して、次に送る商品を考えていました。その後にパーソナルスタイリストやショッピング同行の仕事も始めて、さらに接客に対する見方が変わってきたんです。

―それはどんなところでしょう?

mikai:私は服のことならずっと話していられることが分かりました。パーソナルスタイリストもショッピング同行も、基本はお客さまが似合うものが欲しいから依頼してくるものなので、これなら似合うのではと考えながら会話することに楽しさを見出したのです。ちょうどオンラインスタイリングの仕事が終了するタイミングでメッシュウェルのサービスが始まったので登録して、これを機にフリーランス販売員としてどれくらい働けるのか試すような感じでした。すると思った以上に依頼もたくさんいただけ、ショップからも良い評価をいただけたのでモチベーションが上がりました。

―メッシュウェルは接客以外の業務はしない分、接客販売のプロとして割り切って仕事ができるのですね。とはいっても、毎日売り上げを作るのも難しいかと思いますが…。

mikai:始めた頃は売れなくて申し訳ない気持ちにもなりましたが、今は基本的に売り上げは考えないようにしています。今はオンラインストアがあるので、店で試着してオンラインで買おうと思っている方がたくさんいらっしゃいます。接客していて「荷物になるからオンラインで買うわ」と言われたこともあります。店頭になければ基本オンラインで買うのではないでしょうか?だからこそ、接客ではショップやブランドを好きになってくれる人を増やすようにしています。

―例えば店からの帰り道で、「今日、あの店員さんに良いアドバイスもらったから、家に帰ったらポチろう!」というポジティブな後押しをするような……。

mikai:私のような立場のショップスタッフから見ても、店頭での売り上げだけを重視する考え方は、業界的に変えていった方がいいと思います。

―本当にその通りです。ところで接客のスキルアップはどうされているのですか?

mikai:依頼先の接客力がある販売員の仕事ぶりを見たり、私自身、服を買いに行くのが好きなのでいろんなショップで接客を受けて勉強したりしています。自分の接客を反省することもあります。

―販売職は企業に所属してする仕事と思っていましたが、フリーランスでも成り立つということが分かりました。

mikai:私の場合、会社勤めが本当に苦手で、過去には当たり前のことができなくて「なんでそんなことできないの」と怒られてきました(苦笑)。注意力散漫と言われる反面、想像力が豊かだと褒められることもありました。フリーランス販売員の場合、自分の経験や得意分野であるスタイリング技術を生かして働くことができます。お客さまに似合うものを探したいという気持ちに集中して接客することもできますし。

―その一つの道に長けたところ、そしてそれ以外のことがからっきしダメな感じは、まるで職人のようですね。

mikai: そうですね。以前、職人みたいだと言われたことがあります(笑)。

苫米地香織:服が作れて、グラフィックデザインができて、写真が撮れるファッションビジネスライター。高校でインテリア、専門学校で服飾を学び、販売員として働き始める。その後、アパレル企画会社へ転職し、商品企画、デザイン、マーケティング、業界誌への執筆などに携わる。自他ともに認める“日本で一番アパレル販売員を取材しているライター”

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