新型コロナウイルスの感染拡大防止のため外食自粛の動きが広がるなか、サラダ専門のチェーン「クリスプ・サラダワークス」が店内飲食を中止し、テークアウトのみの営業に切り替えた。さらに医療従事者と病院勤務者にサラダを無償提供するという支援プロジェクトも立ち上げた。
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クリスプ・サラダワークスは2014年に1号店を開業。数種類のトッピングやドレッシングを組み合わせて自分好みの味がつくれる「カスタムサラダ」が人気を集め、20~40代の都心で働く男女を中心に顧客を増やしてきた。現在は麻布十番、恵比寿、丸の内、六本木ヒルズなどに14店舗を展開している。
同店がテークアウト専門に切り替えたのは20年3月31日。その前週の3月25日には、小池百合子都知事が新型コロナウイルスに関する記者会見を行い、感染拡大防止のために密閉、密集、密接を避ける「3密」を訴えたばかりだった。
「行列に並ぶことに不安を覚える人もいるだろう。感染リスクを減らすこと、そしてユーザーや従業員の不安を減らすこと。この2つの目的で一時的に業態を切り替えることにした」と同店を運営するクリスプ(東京・渋谷)の宮野浩史社長は話す。小池都知事の会見が行われた2日後の3月27日に業態転換について具体的に考え始め、路面店は3月28日から業態転換。「商業施設に入居している店舗は施設側との調整が必要だった。それでも3月31日には全店をテークアウト専門店に切り替えた」(宮野社長)。
●「デジタル注文」が約6割というメリットを生かす
発案から実行まで、かなりのスピード感だ。同社の規模がさほど大きくないこと、スタートアップとして、以前から「アイデアを思い付いたら即実行する」という文化があったことも理由の一つ。そもそもアプリや店頭セルフレジ、ウーバーイーツなどのデリバリーサービスを含めた非対面での販売が全体の約6割を占めていたのも大きかっただろう。
クリスプでは17年7月からオーダー専用アプリを導入している。「ランチタイムには30~40分待ちの行列ができることも多かったので、アプリで事前注文してもらうことでユーザーの手間を省ける」と宮野社長は話す。
だが、目的はそれだけではなかった。「創業時から『顧客との結びつきを強くして熱狂的なファンをつくりたい』という思いがあった。そこでアプリを通してユーザーをカルテ化しようと考えた」(宮野社長)。アプリを使うことで来店回数もカウントできる。100回以上来店している人を「アンバサダー」と呼ぶなど、従業員とのコミュニケーションが生まれやすくした。20年4月現在、アプリ登録ユーザーは約4万7000人。同社では90日以上来店がなかった人を離脱と定義しているが、その割合は全体の8%だ。テークアウトへの業態転換もアプリ経由で通知したため、ユーザーへの認知もスムーズに進んだという。
●「医療従事者向けの施策」でファンが増えた
同社は20年3月25日から、医療従事者や病院のスタッフを対象にサラダの無償提供も開始している。新型コロナウイルスの治療の最前線にいる人たちをサポートしたいという考えの下、開始から6日間で2296食を提供したという。病院関係者から感謝の声が上がる一方、「忙しくて注文したり取りに行ったりする時間がない」という意見もあった。さらに同社のこの取り組みがSNSなどで注目されたことで、「自分も協力したい」という一般の人からの申し出も集まった。そこで20年3月31日にプロジェクト「クリスプ コネクト」を立ち上げ、病院へのデリバリーに協力してくれるボランティアや寄付を募ることにした。
「新型コロナウイルス関連の施策を始める前は、「宣伝と取られてしまうかもしれない」という懸念はあった。だが、実際は応援してくれる人がほとんどだった。これまでは『サラダのおいしい店』として来店してくれていた人に、こんなことを考えている会社だったのかと理解してもらえたような気がする。ファンとの結びつきがより強くなったと実感している」(宮野社長)。
新型コロナウイルスの感染状況は日々変化する。同社は20年4月9日からクリスプ コネクトに注力するため、全店を臨時休業した。「今後もユーザーと従業員の安全を考えた上で、状況に合わせて対応していく」と宮野社長は話す。
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April 24, 2020 at 04:00AM
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