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Thursday, April 30, 2020

タンザニア:スワヒリ語のメッセージがザンジバルを駆け抜ける - グローバル・ボイス日本語

「理由なんてない」(スワヒリ語で“Haina sababu”)ー青いバスの後ろに書かれたメッセージ。2019年10月、ザンジバルのストーンタウンにて。撮影はアマンダ・リー・リヒテンシュタイン、許可を得て使用。

ザンジバル島で交通渋滞に巻き込まれると、トラック、ダラダラ(訳注:公共バスやミニバンを現地ではこう呼ぶ)、そしてバイクの後ろに書かれた格言が目に飛び込んでくる。それを見て乗客は気分転換をしたり楽しめるだけでなく、学ぶこともできている。それぞれには文字通りの意味があるだけでなく、無限の解釈もできる。

「乗車を祝福しよう」や「安全な旅を」といったメッセージもあれば、スワヒリ社会で人々の心に響いてきた様々な感情も表現されている。歌の歌詞から街行く人の会話、そしてバザラ(訳注:ザンジバルのコミュニティ生活の中心であったベンチ)で繰り広げられた哲学、愛や幸運、富についての昔ながらの知恵などである。それらのおかげで会話が盛り上がったり、笑いが生まれたりもする。しかし、ドライバーは見た目の良さを優先させ、既製品のステッカーを好むようになっているため、こうした「芸術」は失われつつある。

インド洋に浮かぶザンジバル島は、タンザニア本土の東に位置し、貿易や交易の長い歴史を誇っている。スワヒリ語は数世紀にわたるアラブ系商人とバントゥー系商人の交易の中で形成された言語で、たとえやなぞかけ、韻が多くある。スワヒリ語話者は、日常会話の中に知恵のかけらを忍び込ませることに楽しみを見出している。そして有名なことわざはザンジバルだけでなくタンザニア本土やその周辺地域にわたり、至る所で見られる。

「かつてはどこにでもこういうメッセージがあったんだけどね。自転車でもダラダラの後ろ側でも。今は減ってしまったけど、それでも見ることはできるね。」そう話すのは、ザンジバルの中心地、ストーンタウンのビジネスマン、マスード・サリムだ。専門のアーティストによる手描きのメッセージが多かったが、後にドライバーは、地元の印刷屋で作られたカスタマイズされたステッカーを注文するようになった。今では手描きのものとステッカーの両方が見られるが、共にそれほど多くは無い。

こうしたメッセージはダラダラの後ろ側によく描かれている、と彼は言う。この最も安価な交通手段、ダラダラは、非難を浴びることが多い。ドライバーは、疲れた客を乱暴な言葉で急き立てて、ぎゅうぎゅうに乗せる一方で、とても危険なでこぼこ道を、小型車を追い越しながら猛スピードで疾走するからだ。

ダラダラのドライバーたちは、他のドライバーにクラクションを鳴らされたり文句を言われる前に「言い返す」方法として、車の後ろにこれらの格言を貼り付けている。

People here know that people will talk about you. Dala-dala drivers put those names on the backs of their vehicles because they know that people will comment on the condition of their vehicle, or the way they drive, or how they handle conflict, and they want to block you — they want you to laugh instead.

ここで車を運転していると、必ずいろいろ言う人がいるんだ。車のこととか、運転の仕方とか、路上でのもめごととかについてね。でも、そういうことをやめて笑ってほしくて、車の後ろに格言を貼っているんだ。

ハンナ・ギブソンは、エセックス大学でバントゥ語やスワヒリ語専門の言語学の講師を務めている。彼女は「世界中の人々は言葉遊びが大好きで、東アフリカも例外ではない」と指摘している。

The dala-dalas and bajajs become like moving canvases. In a world where people may struggle to be heard or seen, this is like having an audience of thousands as vehicles whizz around the city [and throughout the islands].

ダラダラやバイクは、まさに動くキャンバスなのです。人々の声が耳にも目にも届きにくい地域では、街中やザンジバル島全体をビュンビュンと走りまわるこれらの車が、同時に多くの観衆にもなっています。

これらのメッセージは、カンガ(訳注:東アフリカで衣類や風呂敷などとして広く利用される布)に書かれた詩のようなものである。カンガは、縁に格言がプリントされたカラフルな布で、2枚一組で売られている。カンガに書かれたメッセージ、すなわち「格言」には二重の意味が込められていることも多い。人々を喜ばせたり困らせたりする言葉遊びも施されている。

ここからは、2019年にザンジバルで目を引いたメッセージを紹介しよう。

「なめてもらったら困るよ」

ザンジバルの道路はガタガタなので、ドライバーは守りに入ろうとする。これは攻撃的なアプローチだ。

「なめてもらったら困るよ」(スワヒリ語で“Usinichezeshe”)ーミッチェンザニーアパートを通る青いバスのリアガラスに赤で書かれたメッセージ。2019年10月、ザンジバルのストーンタウンにて。撮影はアマンダ・リー・リヒテンシュタイン、許可を得て使用。

「いい知らせだ、あなたは勝つよ」

あなたが目指す場所に行くためにやる気を保つためのメッセージだ。

「いい知らせだ、あなたは勝つよ」(スワヒリ語で“Habari ndio hiyo ubingwe lazima,” )ーバイクに書かれたメッセージ。2019年10月、ダラジャニマーケットにて。撮影はアマンダ・リー・リヒテンシュタイン、許可を得て使用。

「気をひきしめて」

ちょっとの移動でも、注意が必要だ。

「気をひきしめて」(スワヒリ語で“Jipange”)ーバンのバックミラーに書かれたメッセージ。2019年10月、ザンジバルのストーンタウンにて。撮影はアマンダ・リー・リヒテンシュタイン、許可を得て使用。

「自分の人生のために戦え」

朝起きて出かけるというのは日々のつまらないルーティーンだ。ダラダラの席に座ろうと必死でいるときにこのメッセージを見ると、人生で何に対して戦っているのかを思い出させてくれる。

「自分の人生のために戦え」(スワヒリ語で“Pambana na hali yako”)ー駐車中のバンに書かれたメッセージ。2019年10月、ザンジバルのストーンタウンにて。撮影はアマンダ・リー・リヒテンシュタイン、許可を得て使用。

「考えるな」

道路では、ドライバーや歩行者など多くの方向に注意を払わなければいけない。うまくいかないだろうことに悩むよりも、何が正しいかに集中するのがベストなのかもしれない。

「考えるな」(スワヒリ語で“Usiwaze”)ー公共交通機関として使われるミニバンの後ろに書かれたメッセージ。2019年10月、ザンジバルのストーンタウンにて。撮影はアマンダ・リー・リヒテンシュタイン、許可を得て使用。

「時間、それが問題だ」

どんなに真剣に立ち向かっても、時間が足りないと感じることがよくある。これは少しペースをあげてもいいというサインかもしれない。

「時間、それが問題だ」(スワヒリ語で“Tatizo muda”)ーピックアップトラックの後ろに書かれたメッセージ。2019年10月、ザンジバルのストーンタウンにて。撮影はアマンダ・リー・リヒテンシュタイン、許可を得て使用。

「無事に帰ったら愛する人に会える」

道路上ではとんでもない集中力やリスクが必要だ。約束した愛が果たせるのは仕事が終わったあとだ。

「無事に帰ったら愛する人に会える」(スワヒリ語でMapenzi tukirudi)ーピックアップトラックの後ろに書かれたメッセージ。2019年10月、ザンジバルのブウェジュにて。撮影はアマンダ・リー・リヒテンシュタイン、許可を得て使用。

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