4月21日の湯崎英彦広島県知事の「十万円活用」発言が波紋を呼んだ。そもそも発言と報道がやや乖離している。例えば、テレビ朝日は「一律に給付される現金10万円をすべての県職員に寄付させ、それを新型コロナウイルス対策の財源にする」と発言した、と伝えているが本当だろうか。
県の広報担当部署たるブランド・コミュニケーション戦略チーム(以下戦略チーム)に「21日の会見発言の正確な文言を教えてほしい」と連絡してみると、「まだ記録していませんがYou Tubeで『ここからっ! TSS CHANNEL』の動画で会見が見られます。それを見てください」とのこと。
教えられた動画を再現してみる。30分ほどの記者会見の終了間際に、最後に質問した男性記者が「一律10万円の給付金も職員に公布されますが(中略)、例えば何らかの基金を作って還元させるとかですか」と尋ねると、湯崎知事は「そうですね。どういう形か検討するがイメージとしてはそうなると思います」とした。さらに「意義は?」と聞かれると「必要な事業で休業支援だけでなく感染防止とか、圧倒的に財源が足りない。今回の10万円も含めて聖域なく活用していきたい」と答えた。
基本的には給付金10万円も含めて活用したい、といった程度だがこれが「職員から強制的に集める」などのように伝えられた。
戦略チームによると、当初の会見が報じられると県庁には「公務員にも家族があって生活がある」「全員が生活に余裕があるわけではない」などと知事に批判的な声が多く寄せられた。「本当に困っている人にお金が行き渡るならいい政策」などの評価もあったが大半が批判だったという。SNSなどでも激しい反応が出た翌22日、湯崎知事は「『活用』は適当ではなかった。10万円は職員が受け取るもの」「給付金を強制的に提出するというのは、誤解。職員にも色々なお願いをしなければいけないと思っています。それは具体的に議論で決めていきたいということ」などと会見して修正した。会見前に職員幹部や県職労などに伝えていなかったことなども謝罪した。
ところが同チームによると、発言の修正後は逆に「なんで撤回するのか、公務員は失業しないし民間よりずっと恵まれてるじゃないか」といった意見が多くなったという。
中国新聞のベテラン記者は「知事が確固たる意志から言ったようにも思えないが、広島は二年前の水害でも財政がひっ迫していてそんな発言になったようだ。地元ではさほど強いバッシングがあるようでもないけど」と話す。戦略チームは「10万円のことばかり注目されましたが、知事の真意を伝えきれなかった。県職員への給付を強制的に財源に回すことは決定事項ではなく、県職員に協力をお願いすることも選択肢として検討したい、という趣旨。県職員の10万円を強制的に財源に回させるというイメージで伝わっていますが趣旨とは違います」などと「言葉足らず」の湯崎知事を必死でフォローしている。
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