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Sunday, March 15, 2020

葛西純自伝『狂猿』第6回 ボコボコにされて嬉し涙を流したデスマッチデビュー(リアルサウンド) - Yahoo!ニュース

 葛西純は、プロレスラーのなかでも、ごく一部の選手しか足を踏み入れないデスマッチの世界で「カリスマ」と呼ばれている選手だ。20年以上のキャリアのなかで、さまざまな形式のデスマッチを行い、数々の伝説を打ち立ててきた。その激闘の歴史は、観客の脳裏と「マット界で最も傷だらけ」といわれる背中に刻まれている。クレイジーモンキー【狂猿】の異名を持つ男はなぜ、自らの体に傷を刻み込みながら、闘い続けるのか。そのすべてが葛西純本人の口から語られる、衝撃的自伝ストーリー。

■どうしてもデスマッチがやりたかった

 俺っちが入門してデビューした頃、大日本プロレスのエースとして活躍していたミスター・ポーゴさんと中牧昭二さんが離脱した。そのあとに「デスマッチ新世代」と呼ばれた、本間朋晃、シャドウWX、山川竜司、ジ・ウインガーが台頭して、新たなスタイルのデスマッチを作りあげていた時代だった。

 俺っちは、大日本プロレスでデビューしたからには、いつかはデスマッチをやるものだと思っていた。そもそも、どんなタイプのお客さんにも有無を言わせない、痛みの伝わるような試合をしたいという想いがあったからね。その気持ちは、連日連夜セコンドについて、間近でデスマッチを見ても変わらなかった。デスマッチアイテムを作るのは下っ端の仕事で、よく伊東竜二と一緒に有刺鉄線ボードや蛍光灯ボードを作ったりしていたけど、それでも恐怖感は無かったし、「いつになったら俺もデスマッチやらせてもらえるんだろう」と思っていた。ただ、当時の自分はデビューはしたけど、第一試合に出ては負け続けてるだけ。そんな結果も何も残してない人間が「俺にもデスマッチやらせてください!」なんて、口が裂けても言えない雰囲気だった。

 本間さんや、シャドウWXさんにメシに連れて行ってもらったときに「葛西はデスマッチやりたいのか?」って聞かれることがあって、そこで「やりたいです!」と答えてはいた。たぶん、それがいつのまにか会社に伝わって、俺っちはようやくデスマッチデビューできることになった。逆に、伊東は「デスマッチはしない」とハッキリ言っていたと思う。時期は前後するけど、俺っちはそんな伊東のデビュー戦の相手を務めている。

 伊東は、気は利かないけど、仕事はすぐに覚えるし、練習でも教えられたことは何でもできるから、先輩たちから気に入られていた。俺っちと入門した時期も3カ月くらいしか変わらないし、ほぼ同期みたいなものなんだけど、真逆のタイプだなと思っていた。ただ、身長があるぶん、体が細かったから、山川さんから「こんなガリガリ、リングに上げるな!」って言われ続けてデビューが遅れていて、ようやく組まれた初試合の相手が俺っちだった。試合内容はあんまり覚えてないんだけど、こっちはいつもの第一試合みたいな感覚で、普通に勝ったと思う。伊東はデスマッチをやらないということもあって、俺っちとしてはライバルとも思ってなかったし、やがてコーナーの向こう側に立つ人間という認識すらなかった。

■デスマッチ・デビュー

 葛西純、待望のデスマッチデビューは、後楽園ホール大会の休憩前に組まれた、あまり注目もされてない試合だった。俺っちがジ・ウインガーと組んで、松永光弘・山川竜司組に挑むという図式だったんだけど、ハッキリ言って、このカードが発表されたときは、試合形式もハッキリしてないし、お客さんの誰一人として期待してなかったと思う。どうせ葛西っていう新人が普通にやられて負けるんでしょって、誰もが予想していた。でも俺っちは、せっかくデスマッチデビューするんだから、何か爪痕残してやろうと思ってワクワクしてたし、実際に試合開始まで楽しみでしょうがなかった。とはいえ、俺っちの武器は、若さと勢いしかない。ガムシャラに挑んだけど、すぐ返り討ちにあって、もうボッコボコにされた。松永さんと山川さんが相手だから、それは当たり前なんだけど、こんなにも差があるのか思うほど何にも通用しなくて、見事に半殺しにされた。でも、その俺っちのやられっぷりが良かったのか、後楽園ホールのお客さんがこの試合でドッカンドッカン沸いてくれたんだよ。

 試合には負けたけど、俺っちが1番インパクトを残したという手応えはあった。そのことが嬉しくて、試合後に思わず涙が出てきた。お客さんからみたら、あの葛西とかいう新人は、ボコボコにされて、血だるまになって、痛くて、悔しくて泣いてるんだろうっていう感じで受け止めたと思うけど、自分の中では「ようやく求めていた試合ができた」っていう嬉しさで泣いていた。あのときに感じた気持ちは、いまも忘れていない。

 この試合を境にして、会社の評価もちょっと変わってきた。それに、松永さんが俺っちのことをえらく気に入ってくれた。それまでは、まともに話したこともないというか、雲の上の存在だったけど、この頃から色々とアドバイスをくれるようになった。

■K-1のリングで流血

 いま考えても、なんでそんなことになったのかわからないんだけど、松永さんがK-1で試合することになった。相手はグレート草津さんで、会場はなんと横浜アリーナ。その練習をするため、松永さんは何度か鴨居の道場に来ていた。伊東がボクシングで国体出てるから、打撃の練習相手になると思ったみたいで、グローブを嵌めてリングでスパーリングしていた姿を覚えている。その試合に、なぜだか俺っちもセコンドで呼ばれた。あとセコンド陣には小鹿さんと、関本、伊東。

 試合はゴングと同時に松永さんがグレート草津さんにボコられて、30秒くらいで小鹿さんがタオルを投げてTKO負けになった。俺っちはセコンドだから、試合が終わったらすぐにリングに上がって駆け寄ったんだけど、松永さんは錯乱していて、「勝手に試合を止めるな!」って、なぜか俺っちが喰らわされた。タオル投げたの小鹿さんなんだけど……と思ったけど、気づいたら俺っちはK-1のリングで流血してたんだ。この一件で、俺っちと松永さんに因縁ができて、大日本プロレスのリングで連戦が組まれることになった。結果的にいえば、この一連の抗争が葛西純というレスラーが飛躍するキッカケにはなったんだけど、その最終決着戦がなんと「ファイヤーデスマッチ」で行われることになった。

 場所は「秋葉原 昭和口通り前広場」の特設リング。当時の秋葉原は再開発の真っ只中で、巨大な空き地がいくつもあったから、そのひとつを会場に仕立てたという訳だ。とはいえ、大日本プロレスとしてはかなりのビッグマッチ。しかも、何が起こるかわからないファイヤーデスマッチだ。ファイヤーデスマッチは、何度も経験があるけど、難しい試合形式なんだよ。状況によって、こっちが思ってる以上に火が燃え盛る場合もあるし、逆に全然火が点かないときもある。風に煽られたら火の動きは読めないし、受け身の取りようがない。それに、このときはファイヤーがどうこうっていうよりも、キャリアまだ1年ちょっとの自分が、松永さん相手に、しかもシングルマッチでメインを務めるっていうプレッシャーの方が凄かった。

 さすがに緊張して、試合前は何日も前から寝られなかった。見かねた本間さんが声をかけてくれて、なにかアドバイスでもくれるのかと思ったら、「そんなもん、やるしかねえだろ!」って一喝されたよ。とにかく、その「やるしかねぇ」って気持ちで試合に挑んだけど、結果は惨敗。だけど、お客さんがめちゃくちゃ入ったことが嬉しかったし、デスマッチの熱というものを肌で感じることができた。

 これでしばらくファイヤーデスマッチはやらないと思ってたけど、この3カ月後に、さらに熱く狂った炎の海を経験することになるとは……。

■CZW来襲

 ヤツらを初めて見たのは、画像の荒いビデオだった。

 大日本の道場に住んでる若手レスラーは、合同練習して、そのあとチャンコ食って、ちょっと昼寝するんだよ。その昼寝タイムにみんなでゴロゴロしてたら、事務所の人がきて「次のシリーズで『CZW』っていうアメリカの団体の選手が来るから、このプロモーションビデオを観ておいて」って言われた。どんな野郎が来るんだろうって、さっそくビデオをデッキに入れて、再生ボタンを押した。

 すると、道場にあった小さいテレビの画面に、いままでの日本のデスマッチの概念を覆すような映像が流れてきた。電動の草刈機で相手の腹をバチバチやる。巨大なステープラー(業務用ホチキス)で額にドル札をバッチンバッチン打ち付ける。カッターナイフで、腕や額を切り刻んでる映像もあった。血まみれのまま殴り合って、そのまま高い建物の屋根の上に登って真っ逆さまにダイブしたり…。

 とにかく、当時の俺たちからしてみても「え? こんなことやっちゃうの?」ってことを、バンバンやってるわけだよ。本間さんも一緒に見てたんだけど、「無理、無理! もうコイツらの相手は葛西に任せたから!」って顔をしかめていた。俺っちは、そのビデオを観ながら少なからずショックを受けていた。それは凶器の危なさとかヤバさに対してじゃなくて、自分がやりたいものにすごい近いなという衝撃だった。それまでの日本のデスマッチは、大仁田さんがやっているようなちょっとウェットなものだったり、松永さんやポーゴさんのような、オドロオドロしいイメージが主流だった。

 こう言っちゃなんだけど、洗練された感じがしなかったんだよ。でも、このCZWのレスラーたちはビジュアル的にもカッコいいし、バイオレンスなんだけど、どこかカラっとしてる。そこが新しかったし、パンクなものを感じた。それまでなんとなく考えていた、自分がやりたいスタイルに近いなって思ったんだ。数日後、実際にCZW勢が来日すると、最初は名古屋かどこかの体育館で試合が組まれた。俺っちと山川さんと本間さんで組んで、ニック・ゲージ、ジャスティス・ペイン、それと確かワイフビーターの6人タッグマッチ。リーダーのザンディグは、マネージャーとしての立場で、このときは試合はしなかった。

 初めて触れてみたCZWのレスラーたちの印象は……とにかく雑だった。俺っちもまだ新人だったし、それほど上手くもなかったけど、そんな自分からみても、奴らのプロレスはヘタクソだった。でも、その荒々しさが逆に新鮮だったし、お客さんにもウケていた。雑だけど、とにかく勢いはあったし、何をするかわからない所が魅力だった。

 そんなCZWのヤバさが発揮されたのが、2000年8月6日に決行されたファイヤーデスマッチだ。場所はまた秋葉原の空き地の特設リング。俺っちは松永さんとタッグを組んで、CZWのザンディグ&ニック・ゲージと対戦するというカードだった。

■灼熱の秋葉原ファイヤーデスマッチ

 先に入場したのが、ザンディグとニック・ゲージ。次は俺たちの番だと、松永さんと入場口で待機してたら、リング上が騒がしい。ザンディグたちが、キャンバス(マット)が剥がされて板張りになったリング上になにかの液体を撒き散らして、火を着けてるんだよ。

 会場となった空き地の周辺は、ビルの建築ラッシュで、そこら中で工事をしていた。CZWのやつらは、近くの工事現場から、勝手に塗料や有機溶剤が入った缶を持って来て、それをリングにブチまけてたんだ。リング上には火柱が立ってて、さらに黒い煙がもうもうと漂ってた。これはちょっと一筋縄ではいかん、ということで松永さんと相談して、当時、松永さんが実際に使っていたクルマで入場することにした。松永さんがハンドルを握って、俺っちはハコ乗り状態で、そのままリングまで乗り付けたんだよ。

 ゴングが鳴ったらもうメチャクチャ。まずザンディグをクルマで撥ね飛ばして、そのあとはロープでくくりつけてクルマで引きずり回した。俺っちはニック・ゲージと場外でひたすら殴りあってた。リングでは、ロープ44面が燃えてるんだけど、その勢いがすごくて、ほとんど火事だった。小鹿さんがそれを見てヤバいと思ったのか、試合中に消化器を持ち出して火を消し回ってた。そのガスで今度はリング上が真っ白になって、ほとんど何も見えない。

 混乱したリングの上から、俺っちは場外にエスケープしたニック・ゲージにトペ・スイシーダをかましてやろうと思った。さすがに火のついたロープに触れるのは危ないから、松永さんに四つん這いになってもらって、その背中を踏んでロープを飛び超えてやろうっていう算段だ。思い切りダッシュして、松永さんの背中に飛び乗ったんだけど、松永さんの体も火で囲まれてたから汗がすごくて、思いっきり滑って、俺っちは燃え盛るロープに腹からモロに突っ込んでしまった。めちゃめちゃ熱くて、のたうち回ったよ。

 そのあとも、トラックの上でザンディグにリフトアップされて、5メートルくらいの高さからから突き落とされたり、燃えたバットで殴られたり、と散々な目に遭った。この試合は、すごく話題になったけど、評価は真っ二つに分かれた。あんなもんプロレスじゃねえっていう声もあったし、すごい試合だったと、いまだに言われることも多い。俺っち的には、体はボロボロになったけど、「メチャクチャしてやったぞ!」という達成感が強かった。だって、最初から「メチャクチャやってやる」という気持ちだったしから、それは果たせたってことだから。

 この日の夜、俺っちはCS放送「サムライ」のゲストとして生出演することになっていた。あんな試合をしたあとで、なんでそんなスケジュールを組まれたのかわからないけど、頭から血を流しながら電車に乗って九段下まで行って、生放送に出たことを覚えてる。この頃は、こうしたテレビや雑誌でコメントを求められると「もっとキ◯ガイみたいな試合がしたい」と言うことが多かった。いままでのデスマッチのイメージを超えた、もっと突き抜けた試合をしたいっていう想いだった。

 いまは先輩やCZWにやられてばっかりだけど、勝敗に関しても、試合内容のインパクトにしても、全部超えていきたい。お客さんの想像を超えるデスマッチをしたい。そんな気持ちが「キ◯ガイ」というワードになったんだと思う。

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March 15, 2020 at 12:50PM
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