京王井の頭線の渋谷駅。改札を出て50メートルほどのところに、ちょっとユニークな自動販売機が登場した。その名は「サラダスタンド」。サラダは880〜1280円、コールドプレスジュース(素材を加熱せず、強い圧力をかけてつくる)は1200円で販売しているので、「た、高いなあ。誰がそんなモノを買うんだよ」などと思われたかもしれないが、いい感じに売れているのである。
設置したのは、2023年1月のこと。12月に累計1万食を突破したので、ざっと計算すると、1日当たり30食ほど売れていることになる。運営しているのは、会社に冷蔵庫を置いてサラダなどを届けている「KOMPEITO」(東京都品川区)という会社である。
冷蔵庫は8000カ所以上で設置しているので、「使ったことがあるよ」といった人もいると思うが、それにしてもなぜこの会社はサラダ自販機を運営することになったのか。事業を担当している新井伸朗さん(執行役員 CLO)に聞いたところ「サラダを届ける『OFFICE DE YASAI(オフィスで野菜)』というサービスが増えていく中で、オフィスの外にも展開できないかと考え、始めてみました」とのこと。
餅は餅屋、サラダはサラダ屋。新しい事業にチャレンジして「すぐにうまくいったのね」と思いきや、そうでもない。21年11月に、渋谷のとあるビルに設置したところ、売り上げが月に数千円のことも。OFFICE DE YASAIで販売している商品は、100円のモノが多い。企業が福利厚生の一環として負担していることもあって、この金額が実現しているわけだが、一方のサラダ自販機は1000円前後である。
売れていない原因は、価格にあるのかもしれない。いや、商品にあるのかもしれない。などと考えて、サラダ以外にもさまざまなモノを扱うことにした。例えば、丼(どんぶり)。会社のスタッフが試食したところ、全員が「おいしい、おいしい」と絶賛。「であれば売れるかも」と見込んで、販売することにした。
担当者は自宅から1時間ほどクルマを走らせて、商品を購入する。そして、渋谷に戻って来て、丼を自販機に詰めてみた。結果は、どうだったのか。残念ながら、これも苦戦した。売っても余る、売っても余る。他の商品を扱うものの、同じような状況が続いていたのである。
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