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Sunday, September 4, 2022

<コラム 筆洗>罰当たりな人間が乗った船を神が沈めた。罪もない大勢の人が巻… - 東京新聞

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 罰当たりな人間が乗った船を神が沈めた。罪もない大勢の人が巻き添えになった。それを見た男がこう嘆く。神の裁きは正しくない−。イソップにそんな話がある▼そのとき、男にアリの大群が向かってきた。一匹のアリが男にかみついたので男はそのアリを踏みつけたが、大勢の他のアリも一緒に踏んでしまった。神の一人、ヘルメスが現れて叱った。「おまえがアリにした方法で、神々がおまえたち人間を裁くことが許せないか」−▼不気味な濁流。水没した村。人びとの悲痛な顔。そんな映像にやはり、あの神は正しくないと嘆く。パキスタンの大洪水である▼雨期の六月以降、モンスーンの影響によって大雨が続き、各地で洪水を引き起こした。死者は千人を超え、国土の三分の一が水没したと伝わる。気候変動の影響による暖かく湿った空気がモンスーンを一層、凶暴にした可能性がある▼北部山岳地帯の氷河融解も洪水の原因という。これも気候変動の影響だろう。無情な神の方法を思った理由は気候変動の原因となる二酸化炭素を、同国は世界の1%以下しか排出していないことにある。その人たちは人をかんだアリではない。なのに理不尽な責めを負わされているように思えてならない▼日本を含め、大量排出国は気候変動対策の加速はもちろん「温暖禍」の巻き添えとなった国の窮地に、手を貸さなければなるまい。

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