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Tuesday, May 3, 2022

【レビュー】光に満ちた充実のコレクション ポーラ美術館の今までとこれからを見る 開館20周年記念展「モネから… - 読売新聞社

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2002年9月6日にオープンした箱根のポーラ美術館は、今年で20周年を迎えます。

©Ken KATO

それを記念し、2022年4月9日から「ポーラ美術館開館20周年記念展 モネからリヒターへ―新収蔵作品を中心に」がスタートしました。

ピエール・オーギュスト・ルノワール《レースの帽子の少女》1891年

ポーラ美術館の収蔵品は、ポーラ創業家二代目の鈴木常司が戦後約40年かけて収集したコレクションが基盤となっています。印象派やエコール・ド・パリ、それらに影響を受けた日本の洋画の数々は、まさにポーラ美術館の顔と言えるでしょう。

©Ken KATO 2017年に作られた現代美術を展示するスペース「アトリウム ギャラリー」も企画展の会場の一部に。ここでは、新聞紙や空き缶を素材に陶器のオブジェを制作する三島喜美代氏の作品が展示される

加えて近年は現代美術の収集にも力を入れており、2017年にはそれらを展示するスペースも設けられました。本展はそのようなポーラ美術館の20年間の歩みを通覧しながら、この先へ進む姿勢にも目を向ける内容となっています。

20のセクションを2部構成で体験

©Ken KATO

展覧会は20周年にちなんで、全20セクション、2部構成で作られています。
ポーラ美術館の収蔵品は、鈴木常司氏が収集したものと、常司氏没後に収集が開始されたものとの2つの時代に分けられますが、後者の収集方針は「従来のコレクションを拡充するためのもの」と、「従来のコレクションにはない、近代と現代をつなぐもの」といった2種に分類されます。

©Ken KATO

本展では常司氏のコレクションと、それを拡充するために新収蔵した作品を第1部に、従来のコレクションには含まれない近代と現代を結ぶ作家たちの作品を第2部に展開することで、同館の歴史を引き継ぐ新収蔵品の特徴を明示します。
また、第2部に登場する作品は、そのほとんどが初公開となっています。

ロビーから森の中に至るまで すべての空間を使って一挙公開

ケリス・ウィン・エヴァンス《照明用ガス…(眼科医の証人による)》 2015年

ポーラ美術館を訪れたことがある人は、同館の名前を聞いて、まずそのロケーションを思い浮かべるのではないでしょうか。
雄大な山を背にして森の中に建つ、光あふれる美術館。
「ここで観ることに意味がある」という強烈な鑑賞体験は、その存在を唯一無二のものにします。

左:ヴィルヘルム・ハマスホイ《陽光の中で読書する女性、ストランゲーゼ30番地》1899年。右:ゲルハルト・リヒター《グレイ・ハウス》1966年/通常コレクション展に使われる部屋も、企画展に開放されています

今回は従来のコレクションと新収蔵のコレクションをできるだけ多く公開するために、館内の5つの展示室と、現代美術を展示するアトリウム ギャラリー、アトリウム ロビー、そして森の遊歩道といったあらゆる空間を使って作品が展示されています。

改めて知るコレクションの重要性

ロニ・ホーン《鳥葬(箱根)》 2017-2018年

20の章で分けられたセクションは、ポーラ美術館開館記念展のタイトルでもあった「光のなかの女たち」から始まり、先月まで個展が開催されていたロニ・ホーンを扱う「ロニ・ホーン──光を宿して」の章で幕を閉じます。
この章タイトルからもわかる通り、本展は「光」にまつわる作品を軸にラインナップされているのですが、その組み合わせたるや、はっとするほど斬新で心地良いのです。

ポーラ美術館は多くの優品を擁するため、さまざまな展覧会で借用されることがあります。故に良く見かける作品も随所に登場するのですが、そこはさすが収蔵館。新旧コレクションの相乗効果を計りながら、「このテーマで、この絵とこの絵が並ぶんだ!」という新しい驚きとキュレーションの妙を鑑賞者に与える、まるで旋律のような構成をとっています。

左:ゲルハルト・リヒター《抽象絵画(649-2)》1987年。右:クロード・モネ《睡蓮の池》 1899年/展覧会タイトルにもなっている、モネとリヒターの並びは、新旧コレクションの幅を表しているだけでなく、今後の展示活動の方向性も投影させています

世界的に感染症が蔓延し、海外からの借用が難しくなった昨今。この状況に先んじて開催された「トライアローグ:横浜美術館・愛知県美術館・富山県美術館 20世紀西洋美術コレクション」(2020年より巡回)を経てコレクションの重要性について考えることが増えましたが、本展を見ていると、日ごろから確固たる方針を持って収集を行っている館はやはり強いなと改めて感じさせられます。

心ゆさぶる美術館は未来を照らす光になる

ポーラ美術館は30周年を迎える2032年に向け、「心をゆさぶる美術館」というビジョンを持って、さまざまな取り組みを進めていくとのこと。
その取り組みの一部として、コレクションの拡充や教育普及活動の推進、カフェ・レストランの充実などに加え、引き続き同館の運営母体であるポーラ美術振興財団による助成活動などを通じ、現代の作家の育成に力を入れていきたいということでした。

食事やカフェも楽しめる

レストラン アレイでお食事をされるなら、企画展にちなんだコースメニュー「リヒターへのオマージュ」がおすすめ。ゲルハルト・リヒターの絵画のイメージや出身地をテーマにしたコース料理です。

 リヒターの《抽象絵画(649-2)》を鑑賞した後なら、プレートの上の色彩をより楽しめるはず。デザートはリヒターの出身地・ドレスデンで愛されているアイアシェッケです。

展覧会にちなんだ期間限定メニューが作られるレストラン「アレイ」はもちろん、森をのぞむカフェ「チューン」も人気です。モネの《睡蓮》があしらわれたカップは気分を盛り上げてくれます

プレス説明会で語られた「大きな転換期を迎えている世の中で、未来を照らす光のような存在になれたら」という言葉。この中に、ポーラ美術館の決意と頼もしさが込められているように思えました。
本展は同館にどんなコレクションがあるのか、どういった方針を持つ美術館なのか、その全体像を知るまたとないチャンスです。夏に向けて緑が眩くなる季節、光降り注ぐ美術館へ出かけてみませんか。(ライター・虹)

ポーラ美術館開館20周年記念展 モネからリヒターへ ― 新収蔵作品を中心に
会場:ポーラ美術館 展示室 1~5、アトリウム ギャラリー、アトリウム ロビー、森の遊歩道(神奈川県箱根町仙石原小塚山1285)
会期:2022年4月9日(土)~ 9月6日(火)
開館時間:午前9時から午後5時まで(入館は午後4時30分まで)
休館日:会期中無休(展示替えのため臨時休館あり)
入館料:大人1,800円/シニア割引(65歳以上)1,600円/大学・高校生1,300円/中学生以下無料
詳しくは公式サイト

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