
トイレで過剰摂取するホームレス
灰色の仮設トイレに誰かが入るたび、ドーン・ウーデンバーグ(22)はその人が出てくるまでの時間を計る。 「3分か4分を過ぎたら要注意です」と、彼女は苦い経験から学んだ教訓として言う。 ウーデンバーグが「見張り番」をするその仮設トイレは、若者ホームレス向けシェルターの向かい側にある。周囲に散らばった注射針とメタンフェタミン(覚せい剤)の吸引パイプを片づけることも、時給9ドルで働く彼女の仕事だ。 トイレの中で薬物を過剰摂取する者は後を絶たない。先日、意識を失ってトイレから引きずり出した人物は、ウーデンバーグの仲のいい友人だった。 「彼女がトイレの中で吐いているのがわかりました。そして次の瞬間、ドンという音がしたんです」 ウーデンバーグは、プラスチック製のドアを思いっきり開けて、彼女を清掃用具が置いてある場所まで引きずっていった。「そこで彼女にCPR(心肺蘇生法)を始めました」 ウーデンバーグが仮設トイレの見張りの職に就いたのは1年半前だ。ホームレス状態から抜け出したい一心だった。 ホームレスの増加は、彼女が暮らすユタ州ソルトレイクシティだけでなく、アメリカ全体の問題となっている。米政府の2020年の推定によると、アメリカでは毎晩、シェルターや路上で夜を明かす人が60万人近く存在する。路上生活者を支援する団体の多くは、実態はそれよりはるかに多いと指摘する。 ウーデンバーグは以前、いま働いている仮設トイレの向かいにあるNPOボランティアズ・オブ・アメリカ(VOA)運営のシェルターで寝泊まりしていた。仕事を探したのは、公営住宅への入居資格が得られるからだ。彼女はどうしても住む家が欲しかった。 ホームレスだった1年半の間、彼女は70回以上も緊急番号911番に通報した。不安と鬱の症状があまりにもひどく、何度となく自殺願望を抱いたからだ。 いまは仕事とワンルームアパート、10歳の介助犬レッドの存在、心理療法が支えとなって、精神状態が安定したとウーデンバーグは話す。それでも、かつての自分と同じようなホームレスの人たちを目にすると、記憶が呼び起こされるという。 特につらかったのは、市当局が仮設トイレのある一帯からホームレスを一掃し、900サウスストリートに強制移動させたときだった。900サウス沿いには、次々と増えるホームレスのテントが連なり、間に合わせの調理場があり、段ボールが山と積まれている。 「持ち物がほとんどないと、どんな気持ちになるのかはわかっています」とウーデンバーグは言う。「そのごくわずかの持ち物すら取り上げられたときの気持ちも理解できます。当事者であるより、それを見ているほうが余計につらいんです」
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