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Saturday, February 22, 2020

カラフルな色を楽しむ 虹色サラダ - 読売新聞

「虹ってさ、何色?」
「え? 七色」
「いや、それはそうだけど、七色の中身は?」
「確か紫外線の紫色から始まって赤外線の赤色で終わるから……」
「へー、そうなの!? どうしてそんなこと知ってるの?」
「一応、美大出身なんで、光のプリズムを教わったの。あんまりちゃんと覚えてないけど」

そうか、美大出身か。僕は美大出身の女性に弱い。自分が学生時代に美大への憧れがあったから。

最近、肉ばかり食べているから、久しぶりにひよこ豆のサラダでも作ろうと思った。レシピを考えるにあたって何かお題が欲しい。虹色のサラダにしてみようと思いつき、たまたま一緒にいた友達に相談していたのだ。

ひよこ豆は黄色い。簡単に作るなら水煮缶だけど、おいしくするなら乾燥したひよこ豆を水でひと晩戻し、軟らかくなるまで黄色いターメリックで煮ればいい。そう、主役は黄色で、黄色は虹の真ん中あたりにありそうな色だ。

虹の七色を調べてみると、確かに紫色に始まり、赤色で終わっている。円の中心から外に向けて、「紫色、青色、水色、緑色、黄色、オレンジ色、赤色」の七色だった。ひとつずつ色に合わせた素材を決めていくことにした。

「紫色は、紫玉ねぎで決まりだね」
「そうね。青色は?」
「青色。いきなり難しい。青い食材ってないからなぁ」
「信号機って緑色でも青って言うから」
「そうか、じゃ、ちょっと苦しいけど、青唐辛子かな。水色がまた悩ましい。苦しいついでに海塩とかでいい?」
「あ、海は水色だから? 緑色はパクチーがいいわ」
「オッケー」

素材が次々と決まっていく。紫玉ねぎは1センチ角切り、青唐辛子はみじん切り、香菜はざく切りにして、塩と一緒に混ぜ合わせることにしよう。レモン汁で味を引き締めたいところだけれど、黄色はひよこ豆とターメリックで使ってしまっている。オレンジで代用することにした。赤はトマトで決まり。さて、役者はそろった。

材料を買いに行こうとして、ふとした疑問がよぎる。

「ねえ、虹って本当に七色なの?」
「そうだと思うけど」
「いったい誰が決めたの? 虹が七色だなんて」
「んんん、ちょっと調べてみるね」

正しい情報かどうかは別として、調べたところによれば、人によって(国や土地によって?)色の数は違うらしい。日本は7色、アフリカは8色、ヨーロッパは6色などなど。

「8色? 何色が加わるの?」
「黄緑色みたい」

彼女のスマホの画面に出たいくつかの虹の写真をのぞき込み、色の数を数えてみる。でも虹はきれいなグラデーションをなしているから、7色と言えば7色、8色と言えば8色に見えなくもない。結局どこで区切って名前をつけるかの問題なのだろう。

「黄緑色か。フェンネルシードだね」

せっかく8色の食材が揃ったのだから、虹を構成する順番に混ぜ合わせていくと出来上がるレシピにしてみよう。頭の中で八つの素材を並べてみる。


紫色……………紫玉ねぎ
青色……………青唐辛子
水色……………海塩
緑色……………香菜
黄緑色…………フェンネルシード
黄色……………ひよこ豆、ターメリック
オレンジ色……オレンジ果汁
赤色……………トマト

ボウルに紫玉ねぎ、青唐辛子、塩、香菜の順で加え、混ぜ合わせておく。スパイスは油と融合させたいから、フライパンに油を熱し、フェンネルシードをいためる。そこにひよこ豆とターメリックを煮てゆでこぼしたものを加えて炒め合わせる。オレンジ果汁を絡めて火を止める。粗熱が取れたら、ボウルに加え、最後にトマトを混ぜ合わせる。なんとうまい具合に虹色サラダの調理手順が決まったじゃないか。ひよこ豆のほくほくした味わいを引き立てるオレンジの酸味に野菜やスパイスたちの風味や辛味、香り。バランスもとてもいいじゃないか。やればできるものである。

「虹といえばさ、サニーデイ・サービスの曽我部恵一さんが書いた『虹を見たかい?』ってエッセイがあってね。あれが好きなんだよなぁ」
「そうなんだ。読んだことない」
「曽我部さんの書く文章がとにかくすてきなの。今度、プレゼントするよ」
「ありがとう! ま、どうせ、忘れると思うけどね」

確かにプレゼントの約束を覚えている自信はないけれど、このサラダを作るときのBGMは、サニーデイ・サービスにしようと決めた。

「サニーデイ・サービスといえばさ……」

たわいのない会話は延々と続く。僕はこういうどこへ向かうか自分でも想像がつかない会話が好きだ。スパイスを使ってサラダを作るのも同じ。だからきっと想像を超えた味に仕上がることだろう。

◆ひよこ豆の虹色サラダ
【材料】
紫玉ねぎ(1センチ角切り)  1/2個分
青唐辛子(みじん切り)    1本
塩              小さじ1/
香菜(ざく切り)       1枝
オリーブ油          大さじ1
フェンネルシード(なければクミンシード)  小さじ1/
ひよこ豆(水煮缶)      1カップ
ターメリックパウダー     小さじ1/
オレンジ果汁         1/2個分
トマト(1センチ角切り)   大1個
【作り方】
ボウルに紫玉ねぎ、青唐辛子、塩、香菜を混ぜ合わせる。フライパンに油を熱し、フェンネルシードを加えてさっと炒め、ひよこ豆とターメリックを加えて炒める。オレンジ果汁を混ぜ合わせ、粗熱が取れたらボウルに加える。トマトをボウルに加えてざっと全体を混ぜ合わせる。

【水野仁輔のスパイスレッスン】これまでの記事はこちら

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水野仁輔(みずの・じんすけ)
カレー&スパイス研究家

 1974年静岡県浜松市生まれ。99年に男性12人の出張料理集団「東京カリ~番長」を結成。各地で食のライブキッチンを開催するほか、世界のスパイス料理やカレーのルーツを探求中。著書は40冊を超え、近著に「水野仁輔 カレーの奥義」(NHK出版)、「スパイスカレー事典」(パイインターナショナル)、「いちばんやさしいスパイスの教科書」(パイインターナショナル)、「幻の黒船カレーを追え」(小学館)、「水野仁輔のスパイスレッスン」(中央公論新社)など。2016年にスパイスをレシピとともに届ける「AIR SPICE」を設立。

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